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ミャンマークーデターの真相

 

黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏

黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏

  • 作者:春日孝之
  • 発売日: 2020/10/13
  • メディア: 単行本
 

 黒魔術かどうかはわかりませんが、そろそろ真相が洩れてきています。

 「底流には国軍とスー・チー氏の確執もありそうだ。憲法は外国籍の親族を持つ人物の大統領資格を認めていない。2人の息子が外国籍のスー・チー氏は総選挙で圧勝した政党の党首でも大統領になれない。軍政が、スー・チー氏の権力掌握を阻止しようと狙い撃ちにした規制なのは明らかだ。

これに対しスー・チー氏は「自分は大統領を超える存在だ」と主張して国家顧問という肩書を創設し、事実上の政府トップとなった。2017年に起きたイスラム少数民族ロヒンギャの迫害問題では「兵士の行き過ぎた武力行使があった可能性は否定しない」と国際社会に向けて指摘し、「外国の干渉」を避けたい国軍をいらだたせた。

20年の総選挙でNLDは改選議席の83%を得たが、国軍が支援するUSDPは大きく議席を減らした。政策研究大学院大学の工藤年博教授は「国軍には現行憲法を定め民主化を進めたのは自分たちだという強い自負がある」と話す。スー・チー氏のもとで現行憲法の改正を求める民意が高まる事態を強く警戒したのは間違いない。」

ミャンマー軍、旧軍政から閣僚指名 実務重視アピールか: 日本経済新聞

直接的な動機はスーチー国家顧問の追い落としにあったのでしょう。しかし、それだけではないはず、せっかく民政に移行した体制を軍政に戻せばミャンマーが再び国際的に孤立することは明らかです。ですから、ミャンマーの軍が少なくとも中国の支持を確保してから実行したと言うのが本当のところではないでしょうか。

 実際、中国外相の王毅ミャンマー国防軍総司令官と今年の1月13日に会見しています。

王毅氏、ミャンマー国防軍総司令官と会見

 こんなタイミングで軍のトップと会見しているのですから、中国が今回のクーデターを全く知らなかったとは考えにくいのです。中国は軍政を支持するのでしょう。その理由はいくつか考えられますが、ミャンマーが重要な補給路であると言う側面があります。中国は原油の50%以上を中東に依存しています。もし米中戦争になったら、恐らくマラッカ海峡ロンボク海峡などは封鎖されるでしょう。すると中国に原油が入ってこなくなります。そのためにも、ミャンマーから中国の本土に繋がるパイプラインを何としても確保しなければ成りません。中国の言い分を丸呑みする軍政はもってこいなのです。

 もう一つ理由を挙げれば、中国・ミャンマー経済回廊(CMEC)があります。

「詳細は明らかになっていないが、関係者によると高速道路や鉄道、電力分野での協力が盛りこまれたとみられる。

最も重要なルートは、中国南西部の雲南省昆明から、ミャンマー西部のインド洋に面するチャオピューを結ぶもの。チャオピューは経済特区に指定され、中国国有の複合企業、中国中信集団(CITIC)を中心とする企業連合が大規模港湾と工業団地の開発権を握っている。中国向けの原油・ガスパイプラインの起点でもある。」

中国とミャンマー、経済回廊建設へ覚書署名: 日本経済新聞

鉄道に関しては

「中国国営企業の中国中鉄とミャンマー国鉄は1月10日、中国南部の都市昆明ミャンマーのチャオピューとを結ぶ鉄道の建設計画でフィージビリティスタディーを実施することで合意した。イラワジが11日報じた。チャオピューはインド洋に面しており、中国向けの原油・ガスパイプラインが敷設されるなど中国による権益化が進んでいる。鉄道が実現すれば、中国のインド洋での存在感が一層増しそうだ。」

中国国営企業、ミャンマー国鉄と鉄道計画の事業化調査で合意:日経ビジネス電子版

それ以外の原因としては、第一はミャンマーのエネルギー分野としては太陽光発電があります。土地を占有するコミュニティとの間で問題に直面することが多いので、援する可能性が高いが、可能性のある土地の紛争を管理するためには、ネイピドーとの政治的な対応が必要なのです。

第二のセクターは、小売・モバイル決済である。アリババグループは最大手のEコマースサイト「shop.com.mm」を買収し、小売・決済市場での展開を進めている。ミャンマー最大の小売銀行KBZもまた、中国の通信大手Huaweiと緊密に協力して、現在ミャンマーで最も利用されているモバイル・ウォレット・プラットフォームの1つであるKBZPayのモバイル決済システムを拡大しています。大きな競争相手がほとんどいない中で、Huawei社はクラウドサービスも急ピッチで拡大しています。

中国工業情報化部と中国建設銀行との間で中小企業向け金融サービスに関する戦略的協力協定が締結されたことで、北京は「二重循環」政策を拡大し、現地の中小企業を支援する計画だ。

3つ目は "安全な都市" 5G技術では早い段階にあるものの、中国はミャンマー市場ではあまり地歩を固めていない。エリクソンとの競争を考えると、ミャンマーが 5G ネットワークを展開した場合、華為技術は唯一無二のプレーヤーではないかもしれません。しかし、他の分野では依然としてHuaweiが優勢であり、すでにマンダレーとナイピドーの2つの主要な「安全都市」プロジェクトでセキュリティシステムを提供することに合意している。これらの都市には、顔認識技術を搭載した数百台のHuawei CCTVカメラが設置される予定であるHuaweiは、これら2つの主要プロジェクトの入札を成功させたが、競合他社がいなかったことから、将来的に地域や国のレベルでプロジェクトを確保するのに苦労しないことを示唆している。

このようにミャンマー中国経済の外延部として中国の属国となりつつあるというのが、今回のクーデターの背景にあったと考えられます。ですから、中国は今回のクーデターを批判することは絶対にないでしょう。中国はミャンマーの経済成長により本国での経済停滞を打破し、パイプラインを確保し、デジタル商圏を確保するという3倍おいしいクーデターであったと言えます。