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中国での「カラー革命の可能性」

HELLSING(5) (ヤングキングコミックス)

 「私は戦争が好きだ」というのは平野耕太の漫画の一説ですが、「私は革命が好きだ」といえば、永久革命論を唱えるトロツキーになるのでしょうか。

 「中国の警察・公安組織や治安維持を統括する国務委員(副首相級)兼公安相の趙克志が、建国70年を迎えた今年、最も注意すべき課題として挙げた中身が内外で波紋を広げている。
 「『カラー革命』を防ぎ、抑え込むことに重点を置き、政治的な安全を守るべく戦おう」
 最近、言及される機会がなかった「カラー革命」への警戒が、年初に公式報道でいきなり登場したのは驚きである。カラー革命とは、2000年ごろから旧ソ連・東欧や中東諸国で長期政権,独裁政権を倒した民主化の動きを指す。
 ウクライナの「オレンジ革命」(04~05年)、アラブの春の端緒となったチュニジアの「ジャスミン革命」(10~11年)など色や花に絡む名が多いため、そう呼ばれる。11年には中国でも一部でインターネットを通じたデモの呼びかけがあり、当局が厳戒態勢を敷いた。(中略)
 それでも共産党政権の危機感は強い。中国経済のトレンドを見ると1978年の「改革・開放」以来の40年、一貫して成長してきた。波はあっても右肩上がりで豊かになる。その満足感が共産党統治の正当性を支えてきた。
 10%前後の成長が巡航速度に思えた特殊な社会が、いきなり分け合うパイに乏しい時代に突入すると何が起きるのか予想は難しい。それが時を同じくして国家主席習近平(シー・ジンピン)が口にした、存在しないはずだった「黒い白鳥」のリスクだろう。
 中国は世界的な「カラー革命」のうねりの前から国内で「和平演変」への警戒を呼びかけてきた。平和的手段による政権転覆を狙う米国など西側諸国の陰謀を粉砕する、という名目だった。裏には同じマルクス・レーニン主義を掲げる社会主義国ソ連が1991年に崩壊したトラウマがあった。この「和平演変」への警戒は、後により差し迫った「カラー革命」へのおびえに形を変えた。
 公安担当トップの趙克志は1月後半、全国から集めた幹部を前に「カラー革命」を食い止める有力手段として、世界が注視する先端技術の活用を訴えた。警察・公安部門の「ビッグデータ戦略」である。ビッグデータ活用、「デジタル・チャイナ」実現は中国のハイテク産業育成策である「中国製造2025」の重要な柱だ。
 コンサート会場や街中の隅々に設置された監視カメラ、中国のホテルにチェックインする際の顔認証……。「中国製造2025」には警察・公安部門の力を飛躍的に高める戦略が組み込まれている。中国では大物歌手のコンサートに現れた犯罪者が最先端の顔認証で逮捕されるケースも多い。」

中国が恐れる「カラー革命」と対米譲歩の微妙な関係 (写真=AP) :日本経済新聞

 結論から言えば、現在の中国には「カラー革命」におびえる理由はないのです。そもそも「カラー革命」は、アメリカ政府がIT企業と仕組んだ壮大な陰謀でした。フェイスブックやグーグルなどが、アラブの春の背後に介在していたのは今となれば明白な事実です。一方中国では自国でのメディア空間をすべて中国共産党が一括支配しているのですから、中国に「カラー革命」が発生する確率は、想定されるよりはるかに低いといえるでしょう。ネット空間を共産党が完全に支配する中国ではSNSを通じて社会革命が起きる可能性は極めて低いのです。

 しかし、ここにきて改めて「カラー革命」が意識されているとすれば、それは経済の減速による国内の不穏な情勢に対する対処策がないためなのでしょう。これから数週間の中国国内の動向に注目しておきたいと思います。