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トランプ大統領は正気か

  一読しただけでは常軌を逸したツイートといえます。「金正恩をよく知り合い、彼には能力があることを理解している」それで、「経済大国になる」というのは、いささか行き過ぎの表現にも思えます。

 「 トランプ米大統領は8日、北朝鮮金正恩キム・ジョンウン)委員長と27、28両日に開く会談の場所がベトナムの首都ハノイに決まったと明らかにした。ツイッターで「金委員長と会って平和への歩みを進めるのを楽しみにしている」と表明した。米朝は6~8日に続いて実務者協議を首脳再会談の前に再び開いて詰めの調整を急ぐ。
 国務省は8日、ビーガン北朝鮮担当特別代表と北朝鮮の金革哲(キム・ヒョクチョル)元駐スペイン大使が6~8日に平壌で協議したと発表。トランプ氏は「とても生産的な協議だった。2回目の首脳会談の日程について合意した」とツイッターで明かした。
 国務省によると、8日までの実務者協議では完全な非核化、米朝関係、朝鮮半島の平和構築について話し合った。ビーガン氏は8日、専用機で平壌からソウルに戻った。9日に韓国外務省の李度勲(イ・ドフン)朝鮮半島平和交渉本部長ら韓国政府関係者や、訪韓している日本外務省の金杉憲治アジア大洋州局長らと会談。北朝鮮との協議内容を説明する見通しだ。
 トランプ氏は5日の米議会での一般教書演説で、米朝再会談を27、28両日にベトナムで開くと表明していた。開催地を巡っては、ベトナム中部のダナンが有力視されていた。

米朝首脳再会談、ベトナムのハノイで トランプ氏表明 (写真=AP) :日本経済新聞

 現時点では、核廃棄に関する情報はまだ出ていません。しかし、先に挙げた金正恩への異常に高い評価と、首脳会談の開催場所がダナンからハノイに変更されたことは、金正恩の方がトランプ大統領に妥協を迫っていることを明らかにしています。

 現在のアメリカと北朝鮮の関係は、暫定的に良好な関係を保っているにすぎません。しかし、その一時的な良好な関係は、お互いに目的を隠し持っているといえます。トランプ大統領の観点からすれば、「朝鮮半島からは撤退したい、そのための障害となっている北朝鮮との関係を改善したい、核兵器アメリカに届かなければよい」といったところでしょう。北朝鮮の観点からすれば、「アメリカとの関係を改善して、経済開発を進めたい、アメリカからの軍事侵攻の可能性がなくなれば、核兵器の量も最小レベルにまで削減しても構わない」と考えているはずです。

 ですから、北朝鮮を国際社会に復帰させるという点でトランプと金正恩は合意しているといってよいでしょう。

 一見したところ、北朝鮮が成果を総どりしているように見えます。しかし、核を持った国が隣接していることを、中国が許すのか、ロシアが許すのかという観点が金正恩には欠けています。北朝鮮にその認識がないということは、韓国にもないということです。つまり、きっかけさえあれば、朝鮮半島から朝鮮人の国がなくなるという事態の端緒を金正恩はつくっているのです。

 アメリカにしてみれば、駐韓大使に刃物で切り付けるような国民とは早く縁を切りたいのでしょう。それに、北朝鮮に関しては、北朝鮮の核がさしあたりアメリカに落ちなければよいのです。ですから、トランプ大統領は正気なのです。

 アメリカにとっては都合がよいのかもしれませんが、少なくともこのままでは統一朝鮮が樹立されるのはほぼ確実です。その統一朝鮮は、ほぼ確実に半日国家となるわけで、中国と並んで、日本に強い圧力をかけることになるでしょう。日本にとっては非常につらい時代が始まります。