貸し剥がしにより恫喝するトランプ大統領
バブルの末期には銀行が貸しはがしをして融資先を良く倒産させていたものです。自国の都合で、同盟国を叱責し、非難するようでは、バブル期の日本の銀行の貸し剥がしとあまり変わりがありません。男トランプどこへ行く。
毎日新聞からです。
「【ブリュッセル八田浩輔、高本耕太】12日に閉幕した北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、トランプ米大統領は軍事支出や対露姿勢を巡って公然と同盟国批判を繰り返した。トランプ氏は初日に首脳会議の共同宣言をまとめた後も、国防支出を国内総生産(GDP)比2%以上とする共通目標の達成時期を早めるよう加盟国に圧力をかけ続けたとされる。その強硬な手法は世界最大の軍事同盟の結束を危うくしている。
「極めて強い不満を伝えた。だが最後には素晴らしい会合になった」。トランプ氏は12日、満足げにそう語った。欧米メディアはNATO筋の話として、トランプ氏が11日にNATOからの脱退も示唆しながら加盟国に国防費引き上げのペースを上げるよう求めたと報じた。首脳会議では12日朝に国防支出を巡る予定外の会合を開き、加盟国はトランプ氏の意向をくみ取る形で2%目標の早期達成に向け「努力を倍加する」ことで合意した。
「NATOの歴史では多くの相違があった。そしてそれらを繰り返し克服してきた」。NATOのストルテンベルグ事務総長は11日夕の記者会見の冒頭で強調した。ストルテンベルグ氏が「成果」ではなく「相違」から語り始めたことが、今回の首脳会議の混迷を象徴していた。
首脳会議でトランプ氏は独露間の天然ガスパイプラインもやり玉に挙げ、「ドイツは完全にロシアに支配されている。NATOにとって非常に悪いことだ」と主張。欧州に米国産の液化天然ガス(LNG)を熱心に売り込むトランプ氏にとって、ドイツがロシアへの依存度を下げることは商機に直結する。
一方、「トランプ氏の圧力が、NATOの即応体制強化を加速させた」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル)との評価もあり、ロシアの脅威に危機感を募らせる東欧諸国からは歓迎の声も上がる。またトランプ氏が加盟国に圧力をかける応分の防衛負担要求は、歴代米政権の一貫した主張。GDP比2%目標はオバマ前政権時に決まり「トランプ政権で言葉が激しくなっただけ」(NATO外交筋)との声もある。
しかし、トランプ氏による同盟の意義や戦後の世界秩序を否定するような発言や通商問題と安全保障を関連付ける姿勢は、同盟の信頼関係を著しく損ねている。トランプ氏という「劇薬」が米欧関係を揺るがす状況は今後も続きそうだ。」
軍事支出をGNPの4%というのには驚きましたが、トランプ大統領の判断は、全てが間違いと言えないところが悩ましいところです。ロシアとのパイプラインを指摘され、「ロシアに従属している」とハッキリと指摘されたメルケル首相を始め、EUからの離脱がうまくないとけちをつけられた英国のメイ首相など、面目を失うという意味では今回のサミットは歴史に残るものでした。
今後の展開という意味では、NATOが崩壊するきっかけになったと後に評価されることになるかも知れませんが、人間の心理というのは興味深いもので、今回の一件で、NATOの結束はむしろつよまったという側面も見過ごすことはできません。
「アメリカに捨てられるかも知れない」という意識のために、アジアでの紛争に際しても、NATOがいち早く協力するという図式が生まれつつあります。グアムが北朝鮮や中国に攻撃を受ければ、足下が危ないNATO諸国は率先してアメリカ側の軍事作戦に協力することになる筈です。
今回の米中の軍事紛争で問題になるのは、中国による核の使用です。ですから、その場合には、ヨーロッパもすぐに中国の核に対応することになります。中国がアメリカや日本に向けて核を発射すれば、ヨーロッパから核が飛んでくるということです。敢えて言えば、今回の首脳会談で評価できる点はこれにつきます。
しかし、アメリカが同盟国を切り捨て始めたという見方も成り立ちます。特に、方向性が全く異なるドイツとの関係は、一層悪化したと言えます。クリミア侵攻を無視して、そして東欧諸国を切り捨てて、ロシアに接近するという方向性すらありえます。この場合は、なし崩しで対ロ制裁が解除となることでしょう。これはペンタゴンからすれば嫌な方向です。ただ、今後の中国との軍事対決という意味ではいつまでもロシアを疎外することもできません。それが、今回のコペンハーゲンでのプーチンとの会談の意味になります。