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トルコの地政学的転向

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2018年 5/1・8 合併号[テロ時代の海外旅行]

 アメリカとトルコの対立に関しては、トランプ大統領エルドアン大統領の意地の張り合いとなっており、簡単に解消されそうにありません。

 日経新聞からです。

「トランプ米政権とトルコのエルドアン政権の対立が激化している。在トルコ米国人牧師の拘束問題での制裁合戦が止まらず、トルコは独自の友好陣営構築を探り始めた。中東と欧州の間に位置するトルコは北大西洋条約機構NATO)に加盟する安全保障の要衝。内向きに強さを誇示する指導者同士の対立は地政学のバランスも崩しかねない
 「米政権による経済への攻撃に対抗する」。トルコのエルドアン政権は15日、米国から輸入する乗用車やウイスキーなどへの関税を倍増させた。トランプ米政権が米国人牧師解放への圧力をかけるため、トルコ産の鉄鋼・アルミニウム製品への関税を倍増させたことへの報復措置だ。

 米国も一歩も引かない。米政府高官は14日、数日から1週間以内に牧師の解放に向けて何らかの行動を取らなければ追加制裁に踏み切ると警告した。同牧師は2016年にトルコで起きたクーデター未遂事件に関わったとして約2年にわたり収監・拘束している。

 11月の米中間選挙をにらみ、イランやロシアにも制裁を発動したトランプ大統領が圧力を弱める兆しはない。トルコでも米国の圧力に屈しないエルドアン政権の支持がむしろ高まっているとの指摘もある。両者のメンツが絡み、落としどころは見えていない。

 シリア、イラクと計1200キロメートルの国境を接するトルコは1952年、当時のソ連の侵略を抑止するためにNATOに加盟した。欧米はトルコの民主化を促し、同盟関係を構築してきた。南部の空軍基地には米軍が駐留。過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦の前線基地として機能し、シリアなどから欧州への難民の流れを抑える役目も果たしてきた

 しかし、トランプ政権は今回の対立を受け、13日に成立した国防権限法ではトルコへの最新鋭ステルス戦闘機F35の売却を禁じることを決めた。同盟関係を支える安保協力は風前のともしびだ。エルドアン大統領も、ロシアなどを念頭に「新たな同盟相手を探し始める」と公言。一部の湾岸諸国などとの連携強化を模索している。

 シリア内戦ではエルドアン政権は米軍が支援するクルド人勢力と敵対しており、すでにロシアにすり寄っている。ロシアのプーチン政権はラブロフ外相を14日にトルコに派遣し、対米批判で歩調を合わせた。トルコは欧州と自国をつなぐ経済圏構想「一帯一路」を推進する中国に対しても秋波を送る。

 ドイツのメルケル首相は13日、「ドイツはトルコの繁栄を望んでいる。それはドイツにとっての利益でもある」と述べ、米トルコ間の対立収束を促した。トルコを巡る地政学上のバランスが崩れれば中東や欧州にも影響が避けられない。「米国第一」を掲げ、貿易赤字の削減や防衛費の上積みで欧州の同盟国にも圧力を加えるトランプ氏が地政学に関心を払っているようには見えない。」

米・トルコの対立激化 安保の要衝、崩れる均衡 :日本経済新聞

 オバマ大統領は、思えば無能な大統領でした。アラブの春のお膳立てがそろっていたにもかかわらず、結局、軍の投入を恐れるあまり、シリアをイスラム過激派の巣窟にしてしまったためです。

 トルコに関しても同様です。エルドアン大統領は、まあこんな人(笑)ですから、クーデターをアメリカが狙ったとしても、トルコの歴史を振り返れば、あり得た選択肢でした。ただ、ここでも、作戦が徹底していませんでした。2016年のクーデター計画は、ロシアのGRU(軍情報部)によって傍受されていました。それが、プーチンからエルドアンに伝えられ、エルドアンはぎりぎりのところで難を逃れたのです。エルドアン大統領がアメリカを許せないのは当然でしょう。今回のアメリカ・トルコの確執の直接の起源は、このクーデター未遂にあったと考えられます。

 とはいえ、日経の記事では、触れられていませんが、実のところエルドアン大統領もイスラム国を支援していた疑いが濃厚です。娘は負傷者の世話を担当し、息子はイスラム国からの原油の密輸に一枚かんでいました。その原油を購入していたのが元BPのヘイワード氏の企業だったのですから、当時は驚いたものです。

 このままでは、中東の地政学的バランスは大きく崩れることになりそうです。それと同時に、トルコ・リラ問題は、まだ序の口にあるとも言えるでしょう。