FirstHedge 明日の投資情報

投資を搦め手で分析します。

近づく第二次朝鮮戦争(3)

 

Photo : Minuteman III ICBM Launch Control Facility november-1、新しいRaymer、溶接Co。、Co、29

 このレポートは昨年の9月に発表されたものですが、事態はこの通りに推移しています。

  「アメリカの指導者によって軍事的オプションが公的に議論されているのは、北朝鮮への圧力を狙っているためでもある。その場合の最大の敗者は、北朝鮮になるだろう。それは中国にとっても同様である。中国は北朝鮮に対する原油供給を停止しようとせず、国際的な制裁の効果を限定しているためである。北朝鮮は,そうした脅威が説得力があるものと信じ、開発計画のペースを遅らせるかもしれない。あるいは、計画のモラトリアムを受け入れるかわりに、韓国における米軍の軍事演習の縮小を求めるかも知れない。しかし、現在の段階では、北朝鮮は米国の脅威を進んで無視しているように見える。それは、ワシントンがこれほど重大な帰結をもたらす脅迫を実行に移すはずがないと信じているためだ。
 北朝鮮は正しいのかも知れない。しかし、北朝鮮ICBMが東太平洋に向かって発射されるか、より大型の核弾頭の実験が行われるといった新たな展開が見られた場合、トランプ大統領は、アメリカ国民を北朝鮮の核の脅威の下に恒常的にさらすつもりはなく、外交による問題解決の時間は終わったと考える可能性はある。
 そうした状況下では、可能な報復を最小限に限定する方法で、遅くよりは早め行動を起こした方が良いという軍事的要請が生まれる。先制攻撃を準備する際に、米軍の指導者は、北朝鮮の防衛準備態勢を厳重に監視し、主要施設や要員という点で潜在的脆弱性を探すことになる。そうすれば、北朝鮮による効果的な報復を削減できるからだ。攻撃のタイミングは、そうした作戦上の配慮から決定される可能性がある。
 アメリカ国内の政治的計算が影響を及ぼすという可能性もある。トランプ大統領は、自分の行動が支持率に影響を及ぼすことを鋭く自覚している。2017年4月に、シリアのアサド大統領が化学兵器を使用したことに対して、トランプ大統領はシリアへの攻撃を決定した。このことは、一時的にせよ、支持率の上昇につながった。北朝鮮に対する戦争も同様の結果を生むかもしれない。少なくとも、軍の最高司令官という立場で一般国民の支持を獲得し、民主党の反対勢力を分断することができる。軍事的冒険には慎重であったオバマ大統領ならばとても採用することができなかったタフな決断を下す準備があるとトランプ大統領は強調できることは疑いない。また、朝鮮半島の戦争で、米軍が戦い、死傷者も出ていれば、メインストリームのメディアが、ロシアとトランプ大統領の過去の関係に焦点を当て続けることは困難になる。
 イデオロギーの点でいえば、北朝鮮に対する軍事力の行使は、トランプ大統領外交政策に対する“アメリカ・ファースト”のアプローチと合致することになる。なぜなら、アメリカ・ファーストというのは、多国間協力や国際法の制約よりも、アメリカの国益を重視する考え方であり、政策の道具としてのソフトパワーには懐疑的で、国益を支持する際の軍事力の割合を重視しているためである。このアプローチはすでに、TPPからの脱退、気象変動に関するパリ議定書からの脱退といった決定に反映されている。また、トランプ大統領は、イランに対するより断固としたアプローチの一環として、ヨーロッパの同盟国の見解に逆らってでも、イランとの核合意の破棄に舵を取る可能性がある。
 将来の脅威からアメリカを防衛するために、北朝鮮を攻撃するという決定は、たとえこの地域の同盟国への攻撃という危険を冒すとしても、現在のところはアメリカ・ファーストの最も顕著なデモンストレーションとなることだろう。そして、トランプ政権が、イラク戦を遂行したジョージ・W・ブッシュ政権のように定義されることになるだろう。」

[コメント]

 米軍が攻撃を仕掛けるタイミングは、「北朝鮮ICBMが東太平洋に向かって発射される」場合、もしくは、「より大型の核弾頭の実験が行われる」と明示されています。これが事実上のレッドラインです。

 しかし、これはあくまでも外形的なレッドラインに過ぎません。「アメリカ国民を北朝鮮の核の脅威の下に恒常的にさらすつもりはなく、外交による問題解決の時間は終わったと考える」というのが本当のレッドラインです。北朝鮮が核開発をやめない以上、このままでは何も起きないということはあり得ないということになります。そして、やるならば早ければ早いほうが良いという計算もあり得るでしょう。

 もう一つの論点は、トランプ大統領世論調査の上昇を見込んで北朝鮮を攻撃すると指摘されていますが、現在のところその可能性は低そうです。というのも、トランプ大統領の支持率も上昇気味であるためです。

 さすがにトランプ大統領も政権移行から1年が立ちましたので、昨年度よりは過激な政策は採りにくくなっています。

 問題は、ロシア疑惑がなかなか晴れないことでしょう。

レポートの方はまだまだ続きます。