オーストラリアに助け求める台湾
今回ばかりは武器を用いずに助けることは出来そうにないですが。
台湾情勢が徐々に煮詰まっています。
「オーストラリア軍の兵士がアフガニスタンの子供を殺そうとしている偽画像を中国政府の報道官がツイッターに投稿した事件で豪中関係が一段と悪化するなか、台湾外相はオーストラリア政府に中国の台湾侵攻を抑止するための支援を呼びかけた。
台湾の呉釗燮(ウー・シエチャオ)外交部長は、オーストラリアのテレビ局ABCのニュース番組「ザ・ワールド」に出演、台湾海峡での軍事衝突が起こるリスクは「以前よりもはるかに高まっている」と語った。
台湾と中国本土を隔てる約160キロの海域における中国の軍用機と船舶の活動はここ数カ月、急激に活発化している。台湾政府は、中国が軍事力で台湾を再統一しようとすることを「非常に懸念している」という。
12月1日に放映されたこの独占インタビューで呉は、11月に中国人民解放軍海軍が行った2回の大規模な上陸訓練をはじめ、台湾周辺で急増している中国の軍事活動の「圧力を感じている」と述べた。
中国空軍の軍用機は、毎日のように台湾海峡の中間線を越え、台湾の防空識別圏への侵入している。アメリカはこれに対抗して11月、中国の領空を侵犯したとも報じられているほどだ。
呉外交部長は、中国政府が今年の夏、香港で国家安全維持法を施行したこと、東シナ海と南シナ海における紛争海域で軍事力による勢力拡大を進めていることを指摘し、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、中国を「これまで以上に独裁的」な国にしていると述べた。
「中国側はまさに臨戦態勢であり、中国が台湾に対して軍事攻撃を開始する現実的な脅威を真剣に憂慮する」と、呉は番組で語った。
台湾政府は、台湾と中国の軍事紛争はアジア太平洋地域に広く波及する可能性があると考え、準備をしている、と呉は言う。
台湾は中国政府に「攻撃に踏み切る口実」を与えないよう、節度と責任をもって行動しようとしていると彼は主張した。しかし、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統率いる台湾政府は、8月と9月にアメリカの閣僚級政府当局者の公式訪問を初めて受け入れ、また2017年以降、トランプ政権下で米国務省と10件以上の武器取引を行っている。
台湾は挑発的と見なされる行動を避けようとしている、と呉は主張するが、中国政府は米台関係はすでに一線を越えていると見て、繰り返し警告している。
呉は、ジョー・バイデン次期大統領が提唱する民主主義国の連合に賛意を表明し、オーストラリアを含めて同じ志を持つ国々は中国の侵略に対抗するために協力すべきだと述べた。
「オーストラリアは、インド・太平洋地域を構成する強国だ」と、呉は言った。
「オーストラリアが(グローバルな)原則と価値観を守るために多くの犠牲を払ったことは、これまでの歴史で明らかだ。だから日本やオーストラリア、インド、アメリカなど、同じ志を持つ国々とも協力して中国の拡張主義の進展を防ぐことができると思う」
「私たちはこれまで一貫して、台湾の防衛はみずからの責任であり、自分の手で台湾を守ると明言してきた」と、呉は語った。その一方、「台湾とアメリカ、その他の同じ志を持つ国々がそれぞれに保有する中国に関する情報を共有できることを望んでいる」。
「なぜなら、わが国が中国について知っていること、認識していることだけでは十分ではないかもしれないからだ」
台湾海峡で紛争が発生した場合の軍事支援の見通しについて、オーストラリア軍を「頼みにしているわけではない」と付け加えた。
オーストラリアは公式には、アメリカと同様、台湾を正当な政府とは見なさず、公式な外交関係を結ばない「一つの中国」原則を遵守している
だが中国からの圧力にもかかわらず、台湾とオーストラリアの「実質的な」関係を継続的に進展させる余地はあると呉は指摘した。
12月1日に中国外務省の趙立堅(チャオ・リーチエン)報道官がオーストラリア兵に関する偽画像をツイートして以来、オーストラリアと中国政府の間では非難の応酬が続いている。
オーストラリアのスコット・モリソン首相はこのツイートを「きわめて不快」と表現し、中国に謝罪を要求。中国政府はこれをはねつけた。何度も記者会見を開いて自国の立場を繰り返し表明、この画像はアフガニスタンにおけるオーストラリアの戦争犯罪疑惑に関する事実に即した描写であると主張した。
中国政府はかねてから、オーストラリアのワインに200%の関税を課すなど一連の制裁措置を取っていた。オーストラリアが中国を新型コロナウイルスの発生源として公式の調査を求めたことに対する報復だ。今回の偽画像問題で、豪中関係は一段と冷え込んだ。
呉は、中国が貿易をオーストラリアに対する武器として選択したことは「本当に残念だ」と述べ、国際社会が団結してオーストラリアを支持する必要性を強調した。
「団結すればわれわれはもっと強くなる」と、彼は言った。
台湾が中国政府の圧力に屈すれば、台湾も香港と同じ運命になると呉は付け加えた。「民主主義国として、台湾はしくじるわけにはいかない」」
台湾外相が豪に支援要請、中国の侵攻回避で | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
これは台湾の外相がオーストラリアのテレビに出演したと言う話なので両国の関係が直接に動くと言うことはないのでしょう。しかし、台湾としても、中国外交報道官のインチキツイートの後なのでチャンスと考えたのかも知れません。
何より重要なのは、「中国側はまさに臨戦態勢であり、中国が台湾に対して軍事攻撃を開始する現実的な脅威を真剣に憂慮する」と言う発言ですね。中国に呑み込まれる前に、少しでもオーストラリアとの関係を強化しておきたいという事でしょう。
現実的に中隊戦争が始まってしまえば、オーストラリアに出来ることは少ないでしょう。紛争直前の外交でオーストラリアの力を借りたいと言うのが本意なのでしょう。アメリカ大統領選の決着がつかないという現状の中で、たよりないバイデンを狙って一気に攻撃を仕掛けることはあり得るでしょうし、かりにトランプであっても、アメリカ国内の混乱を利用して台湾を攻略する可能性があります。