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人民解放軍は習近平と心中する

人民解放軍と中国政治―文化大革命から鄧小平へ―

 実は、北載河会議1週間で終わった途お伝えしていましたが、終わっていなかったようです。また習近平と軍の間での軋轢があったことが報道されています。

「 国営新華社通信電子版は8月14日、中国共産党機関紙・人民日報の評論記事を転載した。記事は「なぜ人民軍隊に対する党の絶対的な指導制度を揺るがしてはならないのか(中国語は、党対人民軍隊的絶対領導制度為何動揺不得?)」とのタイトルがつけられ、中国共産党による軍の支配権について持論を展開した。
 同記事は終始、中国の軍は共産党の軍であると主張した
 「国家は、階級の矛盾による調和不可能の産物である。軍隊は階級統治の暴力的ツールだ。(中略)国家政権を奪取し、政権を強化していくにはまず、軍を掌握しなければならない」
 「政権を奪取するため、必ず強い武装力量(軍)を持たなければならない。(政権奪取で)勝利した後、武装力量を借りて…自らの統治を維持していくべきだ」
 「この軍隊は最初から最後まで、党の指示に従う。いかなる人がいかなる方法で、軍を党から離脱させようとしても、失敗に終わるだろう」
 「(文化大革命の)四人組は常に軍権の掌握を狙っていた。しかし、軍は彼らの指令に従わなかった。四人組が失脚した際、軍権の掌握ができなかったと嘆いた」
 中国国民にとって、人民解放軍共産党支配下にあることは言うに及ばないことである。北戴河会議の開催中に、官製メディアが軍権掌握に関する記事を発表したのは意味深長で、党内で軍権をめぐる激しい論争、または争奪戦が勃発した可能性があると推測する。中国共産党の歴代最高指導者が自らの権力基盤を強固にするには、軍権の掌握を必須条件としてきたからだ。
 記事の中では、「(軍に対する)最高領導権と指揮権は、党中央にある。(中略)軍事委員会主席の責任制度を貫徹し、(軍の)すべての行動について、党中央、中央軍事員会および習近平主席の指揮に従うことを確実に守っていく」との内容がある。
 この内容から、北戴河会議において、一部の人物が中央軍事委員会主席を務める習近平氏に異議を唱えたとみる。または、軍への指導権を分権化すべきだという意見もあったと見て取れる。
 しかし、習近平氏らはこれらの意見をすべて却下したようだ。「絶対的な領導制度というのは、『絶対的な』要求に達するということだ。(中略)これは手抜きしてはいけないうえ、議論の余地もないということだ。いわゆる『絶対』とは、…唯一性、徹底的にかつ無条件に行うことを意味する。全軍の絶対的な忠誠心、絶対的な純粋さ、絶対に信頼できることを守っていく」
 この記事は一部の内容にも関わらず、文脈から軍権をめぐって、会議中に習派閥とその反対勢力の間に生じた張りつめた気配が強く感じとれる
 さらに、記事が示唆した他の内情も多くある。
 例えば、「敵対勢力は、『軍の非党化、非政治化』と『軍隊の国家化』を大々的に宣伝しており、(中略)軍隊を党から分離させようとしている
 「いわゆる『政治的遺伝子組み換え』を行い、軍の『色』を変えようとする狙いがある。その下心ははっきりしている」
 「『軍の非党化』という主張を持つ人は、西側国家の軍と政党の関係性の表面しか見ていない。政権を担う政党が変わる時、軍の指導権は資産階級の『左手』から『右手』に変わったに過ぎない
 「いわゆる『軍の非政治化』は、軍が政治問題に介入しないことを指すが、これも実際には、資産階級の嘘のスローガンである」などがある。
 これらの情報から、北戴河会議の一部の出席者が、人民解放軍を党の軍隊ではなく、国の軍隊にすべきだという異例の声があったことが読み取れる。しかしながら、党の指導者に軍への支配を放棄させることは、権力を放棄させることを意味する。党の最高指導者はこのような声を絶対に容認できない。習陣営は、この記事を通じて強く反論したであろう。
 党内の激しい対立を露呈したこの記事は、まもなく新華社通信電子版から取り下げられた。」

中国、長引く北戴河会議で「軍権の争い」勃発か

 中国人民解放軍が中国の国軍としても、本来であれば問題がないはずです。しかし、一旦国家の軍となれば、政治から離れた権威を持つことが可能になります。万が一中国共産党による統治が崩壊しても、国軍が少なくとも一時的に統治を代行することが出来るということになります。しかし、人民解放軍共産党の私兵としての立場に留まる限り、人民解放軍中国共産党と共に倒れることになります。

 人民解放軍を国軍にと言う話はもう長い間議論されてきました。その都度中国共産党の私兵としての地位が確認されてその都度議論は消滅してきました。ただ、米中の衝突が明白になりつつある時期にこの問題が再び提起されたのは、中国共産党体制が崩壊するかも知れないと言う認識が少なくとも人民解放軍の内部にあるという事を示しています。

 しかし、今回の北載河会議でも反論を全て習近平は押し切ったようです。ですから、2023年以降も自分がトップに留まるつもりなのでしょう。そのためにはやはり一定の条件を満たすことが必要で、領土を拡大出来たかどうかがその基準になりそうです。アメリカとの対決は避けながらも、台湾、南シナ海尖閣諸島、それにカシミール地方から撤退の気配が見えないのは、正にそのためであると言えます。

 これらの地域で中国が大きく成功する可能性は低いと予想されます。ですから、力尽くで領土を拡張するのならば、朝鮮半島と言う可能性も捨てきれません。第二次朝鮮戦争で、朝鮮半島が中国によって統一されれば、胸熱ですね。