10月はユーロショックか、チャイナショックか
ユーロ経済がリーマンショックを何とか乗り切れたのは、中国というカウンターパートが大きな役割を果たしました。今度ばかりはだめそうです。
まず、欧州の盟主たるドイツ経済が失速しています。
「ドイツ経済は7-9月(第3四半期)に製造業の不振が深刻化し、恐らく景気後退に陥ったと、ドイツ経済研究所(DIW)が予測した。
DIWは7-9月のドイツ経済が前期比で0.2%縮小したと見込む。4-6月は0.1%減だった。DIWが月次で調査する経済活動指数は9月に89ポイントで前月から変わらず、4-6月に続いてマイナス成長に陥ることが示唆されたという。
ドイツ連邦統計局は7-9月国内総生産(GDP)速報値を11月14日に発表する予定。ブルームバーグが今月調査したエコノミストの予想中央値はゼロ成長となっている。」
ドイツ経済は7-9月にマイナス成長、景気後退入りの見込み-DIW - Bloomberg
これでドイツは景気減速が明確になりました。中国もバブル崩壊寸前です。
「 中国で永久債の早期償還を初めて見送った地方政府の傘下企業が出現し、波紋が広がっている。地方政府のための資金調達と投資を手掛ける「融資平台(LGFV)」と呼ばれる企業は、中央政府から命令された債務圧縮目標の達成に向けた一助として、資本性証券の性格を持つ永久債を積極的に活用してきた。しかし約750億ドル相当が事実上の償還期限を迎えた今、永久債発行という安易な手段を選択した代償が高くつくことが判明しそうだ。
今月の初回コール日に、15億元(2億1200万ドル)の永久債の償還をしないと表明したのは、吉林省のLGFVだった。永久債には当然正式な償還期限はなく、だからこそバランスシート上でしばしば株式と同等の扱いを受ける。ただできるだけ早く償還しないと、利払い負担がどんどん大きくなるので、一般的には初回コール日の償還が想定されている。償還を見送った吉林省のLGFVの場合、起債時におよそ4.6%だった表面利率を今後8%前後に設定しなければならない。このため償還見送りは、何らかの問題が生じているサインだとみなされがちだ。
中国では、永久債の90%は国や地方の資本が入っている公的企業によって発行されている。当局から来年末までに、資産に対する債務比率を2017年比で2%ポイント減らせと迫れている公的企業が開始したのが永久債発行で、早期償還のオプションと高い表面利率を通じて買い手を取り込んだ例も多かった。つまり従来の社債よりも発行コストはかさみ、特に早期償還ができないと、借り手の痛みは増大する恐れが出てくる。それでも公的企業の経営者は、純粋な債務削減よりもそうしたリスクを背負う道を好んだようだ。
中央政府当局はこの永久債のからくりに気づき、財政省は今年になってより厳格な指針を発表している。とはいえ永久債全体ではS&Pグローバル・レーティングの推計で約1兆2000億元に上るだけに、当局としても新ルールをあまりにも厳しく適用することに消極的になっているように見受けられる。
この姿勢は、公的企業の中でも財務面で最も不安定なグループに属するLGFVに対してとりわけ当てはまる。S&Pによると、非金融セクターの永久債発行残高の40%近くを占めるのはLGFVだ。
そしてS&Pは7月、今年と来年に5330億元相当の永久債が初回コール日を迎えるとの試算結果を示した。折悪しく地方政府の財政は減税と景気減速で圧迫されている一方、彼らは景気を刺激する重要なエンジンでもある。こうした状況は、当局にとって延々と続く頭痛の種になりかねない。」
コラム:中国「融資平台」が直面する安易な永久債発行のつけ - ロイター
中国の中央政府はともかく、地方政府とその傘下の企業がかなり苦境に陥っていることがわかります。吉林省などは特に景気が悪い地域なので、永久債が早期償還できないのも仕方がなかったのかもしれません。しかし、この動きがほかの地方政府に広がれば、状況は待ったなしの状態になるでしょう。景気が後退している局面で8%という金利は耐えられないはずです。今年から来年にかけて5330億元の償還を迎えるのですから、来年の春までにはチャイナクラッシュは発生していることでしょう。
ただ、中国が反則なのは、中央政府が積極的に経済に介入するという点です。しかし、今回に限って、積極的に介入できるかどうかには疑問符が付くのです。中国の今後の中期的政策が決定されるのは4中全会なのですが、そこでは経済が議論されないというのです。
「中国共産党は8月30日、主要政策や人事を討議する重要会議、第19期中央委員会第4回全体会議(4中全会)を10月に開くことを決めた。本来は昨年の3中全会で議論するはずだった経済の基本方針は今回も議論しないとみられる。米国との貿易戦争が影を落とした可能性がある。
経済の基本方針は通常、5年に1度の共産党大会の翌年に開く3中全会で決める。例えば、2013年の3中全会では「資源配分で市場が決定的作用を果たす」との重要決定を下し、習近平(シー・ジンピン)指導部が市場化改革を進めるとの期待が世界で高まった。
ただ、18年2月の3中全会では経済方針についての議論はなく、同年秋の4中全会で経済政策の基本方針を決めるとの観測もあったが、結局開かれなかった。
今回、10月に4中全会を開くことは決まったが、議題は経済ではなく「社会主義の改善や国家統治」としている。中国の社会主義制度の改善や国内の統治システムについて話し合うもようだ。北京の外交筋は「大きな意見の隔たりがなくまとめやすい分野を選んだ」と指摘する。
米中は追加関税を掛け合うだけでなく、米国が中国を「為替操作国」に指定するなど、覇権争いの様相を呈する。北京の外交筋は「貿易戦争が激化するなか、経済政策を議論できない状況だ」と指摘する。」
中国、4中全会を10月開催へ 経済対策は討議せずか (写真=ロイター) :日本経済新聞
アメリカの貿易戦争の余波もあり、行き詰まる中国経済に対する公式の政策が全く放置されていることがわかります。背後では、セメントと鉄鋼の可能生産により、数字は悪くないように工夫しているようですが、やはり、そろそろ潮時のようです。結論として言えるのは、習近平は中国のバブルに正攻法で対処することを完全にあきらめたということです。そこに、永久債の大量償還がはじまるわけです。これでバブルが崩壊しないはずがないでしょう。
ですから、改めて言いましょう。10月はリーマンショック級の大変動が発生すると。