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アマゾン密林火災は、ブラジル大統領の犯罪

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 重要な論点としては、今回のアマゾンの大火災が人為的な側面があると言うことでしょう。

 なぜアマゾン川流域が重要であるのかというと、それは、流域の60%がブラジル国内にあるアマゾン川の一帯には、世界最大の熱帯雨林が広がっており、この熱帯雨林には、固有の植物種・動物種が多数育まれており、生物多様性の宝庫と考えられているためです。
 密度の高い原生林は、気候変動の最大の要因と考えられている温室効果ガスの二酸化炭素を膨大に吸収しています。ですから、科学者たちも、アマゾン熱帯雨林保全地球温暖化対策に必須であると主張しているのです。

 そのような重要なアマゾンの原生林が破壊されているのに、あまり積極的に対策を取ろうとしないブラジルの姿勢が、おかしいのです。

 それに対して、G7諸国が消火活動のため2000万ドルを拠出すると提案したのに対し、ボルソナロ氏は他国首脳らの懸念を「特権階級的」と一蹴
 マクロン仏大統領に嘘つきと呼ばれたため、マクロン氏が「侮辱的な発言」を撤回すれば資金受け入れを検討すると表明したと報道されています。

 通常であれば、消火活動への支援は受け取るものでしょう。それに対して、「特権階級的」と非難するのは、ボルソナロ大統領の姿勢にやましい点が存在しているためでしょう。実際、ボルソナロ大統領は、熱帯雨林保全に非常に消極的だったのです。

ロイターは次のように報道しています。 

 「火災がアマゾンの熱帯雨林を破壊し続け、国際的な批判が集まる中、ブラジルのボルソナロ大統領が熱帯雨林保護を担当する政府機関を意図的に弱体化させてきたことが、ロイターの取材で分かった。
 この機関、環境・再生可能天然資源院(イバマ)は同国の主要な環境関連の法執行機関だ。
 現在および過去の職員10人がロイターに対し、政権からいくつかの点で妨害されていると述べた。ブラジルの首都からジェイク・スプリング記者がリポートする。
 「大統領は選挙遊説以来、環境保護法の執行を非難してきた環境保護活動家によると、これを受けて森林破壊活動家は勢いづいた。
 さらに、イバマの予算は25%削減され、環境関連の罰金は43%減額された。
 イバマ職員が解雇を恐れて匿名で語ったところでは、現政権下で規則があまりに強引に執行されることを懸念しているという」
 ルセフ元大統領が2010年代初め、環境法執行の責任を各州に負わせようとし、イバマは予算削減に直面。深刻なリセッションにより、予算はさらに削られた。
 その後、ボルソナロ氏は農業や産業界の支持者らに、イバマの統制を強めると約束しており、環境犯罪の取り締まりはかつてないほど厳しくなっている。
 「イバマ職員によると、4月以来、破壊的な伐採や採掘、環境犯罪を実行する機械を破壊することを事実上禁止されている
 環境犯罪者を取り締まるエリート集団、GEFは今年、足止めされているという。GEFは銃を持ってヘリコプターに飛び乗り、アマゾンの僻地で最も危険な環境犯罪者を阻止する。
 だがボルソナロ氏の大統領就任以来、イバマの執行部長は、彼らを現場に送る要請に同意することを拒否したという」
 熱帯雨林が燃えている映像が地球温暖化への影響について懸念を引き起こしており、同氏の環境政策はここ数日、厳しい目にさらされている。
 気候変動に懐疑的なボルソナロ氏は、政府を貶めるために環境団体が火をつけたと非難している。(以下略)」
ブラジル大統領、環境保護当局を意図的に弱体化 職員ら証言(字幕・29日) | jp.reuters.com

 ブラジルのブルソナロ大統領が、環境保護に頑なに消極的なのは背景があると考えるべきでしょう。その一つが中国ファクターです。

 米中貿易戦争の激化により、中国がブラジル産の農産物を大量に購入するようになっていることは既によく知られています。そこで、中国とブラジルの接近が見られるのです。8月16日付けのブルームバーグでは次のように報じられています。

「 中国がブラジルからの大豆輸入を拡大する。緊張が高まる米中関係を受けて、ブラジルとの関係強化を狙う。
 中国の国有食糧大手、中糧集団(COFCO)傘下の食品会社、中糧国際(COFCOインターナショナル)の遅京涛董事長(会長)は5日、ブラジル・サンパウロの産業イベントで、同社がブラジルからの大豆の購入を今後5年間にわたり、年5%のペースで増やす計画であると述べた。また、安定した予測可能な投資環境が継続するなら、物流とサイロ新設に対する投資の拡大も計画しているとした。
 中国は2008年以来となる人民元安を容認したうえ、国有企業に米国産農産物の輸入を停止するよう要請し、米中貿易戦争はエスカレートする一方だ。遅董事長は「米中の貿易関係に見るような衝突も起こり得るが、ブラジル政府、ブラジル企業と当社の関係は盤石だ。変動が激しく急速に変化する世界で、われわれは安定と長期的な見通しがきくということが貴重な財産であると経験から学んだ。ブラジルと当社の関係をこの先長く保っていくべきことについて意見を交わすことを切に望んでいる」と語った。
 COFCOはパートナーとしての中国とブラジルの関係の拡大・変革を目指しており、生産効率の向上により環境や社会に貢献した農家に対し資金援助を増やす方針だ。遅董事長は「農家を世界の温暖化対策に直接結びつけ、森林の保護や再生に対して恩恵を受けられるようにする。持続可能な農業への移行は農家と農作物の取引に携わる者の利益を保護して初めて可能になる」と語った。
 COFCOは昨年、1300万トンを超える穀物食用油の原料となる油糧種子をブラジルから購入した。また、中国は昨年、ブラジルの大豆輸出量の80%を超える最大の輸入国となった。関係者によると、米中間の通商交渉が悪化したことで、中国のバイヤーはブラジル産大豆の購入を再び増やしている。」

中国、ブラジルと関係強化 大豆輸入拡大、対米交渉悪化で長期展望 - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

 ブラジルのボルソナロ大統領が、アマゾンの密林を焼き尽くして、大豆畑にしてしまいたいという希望を持ったとしても不思議ではないでしょう。つまり、米中対立の余波が南米にまでおよんでいるのです。

 ボルソナロ大統領も、「アマゾンの熱帯雨林で進む森林伐採、経済低迷による国民の貧困、そして環境保全を同時に解決できるか」と問われると、「(人間は)少し食べるだけで十分だ」と。続けて、「一日おきにうんちするだけで十分だ」と答えるほどですので、当分アマゾンの火災は終わらないと見るべきでしょう。

 結局の所、酷い大統領は韓国だけに限らないということです。韓国と異なるのは、世界的な環境問題にネガティブな影響が出るということでしょうか。それにしても残念な大統領です。