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新首相ボリス・ジョンソンはイランをどう料理するのか

第二次世界大戦 合本版 (河出文庫)

 いよいよ、真打登場です。

 「 ボリス・ジョンソン氏は今週中に英国首相となり、同国の欧州連合EU)離脱(ブレグジット)を主導するはずだ。しかし、新首相は、ブリュッセルの名を口にする間もなく、イランが引き起こした国際危機に対処しなければならない。これはジョンソン氏にとって、イランに対する新たなアプローチを欧州に促し、英国の独自性と強さを示す機会になる。
 イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRGC)」は19日、ホルムズ海峡で英国船籍の石油タンカーを23人の乗組員ごと拿捕(だほ)した。イランは今回の臨検が「安全保障上の理由」によるものだとしているが、報復措置であることは明らかだ。
 英国は最近、EUの制裁措置に違反してシリアへ石油を輸送していた疑いのあるイランのタンカーを、英領ジブラルタル沿岸で拿捕していた。英国側はこのタンカーについて、シリアへ航行しないならば解放すると提案したが、イラン側は無条件での解放以外は受け入れられないとして拒否している。
 イランのジャバド・ザリフ外相は20日、「ジブラルタル海峡での海賊行為と違い、ペルシャ湾におけるわれわれの行動は、国際的な海事規則にのっとっている」とツイートした。同外相は「英国は米国の経済テロリズムの支援者になるのをやめなくてはならない」と続けたが、彼の反応はイランの政権に最大限の圧力をかけるトランプ政権の作戦が効果を発揮していることの表れだ。
 トランプ大統領は昨年、イランの核問題に関する合意(包括的共同作業計画=JCPOA)から離脱した。これは戦争を始めるためではなく、新たな交渉に向けた動きを進めるためだった。ザリフ氏は2015年、当時のジョン・ケリー国務長官よりも巧みに交渉し、一時的に核開発を保留にしてその間に経済力を回復できるイランにとって有利な取引をまとめた。この合意はイランが地域で示していた悪意ある振る舞いに対処するどころか、同国政府がテロリズムやその他の侵略的行為により多くのカネをつぎ込むことを容認した。
 トランプ政権は以前の制裁措置を復活させ、新たな制裁措置も導入した。英国、フランスとドイツは、イランが公然と核合意に違反し、欧州による米国の制裁を迂回(うかい)する試みが失敗しているにもかかわらず、古い合意にしがみついている。経済低迷から国内で政治的圧力を感じているイラン政府は、トランプ氏の決意を試すため、そして、交渉での立場を強めるために行動に出ている
 ザリフ外相は先週、制裁解除と引き換えに核開発計画に対するより厳しい査察を受け入れる用意があると提案した。これは真剣な提案ではなかったものの、イラン政府が必ずしもトランプ政権が交代するまで待つ姿勢ではないことを示唆するものだった。双方とも戦争は望んでおらず、相手側が交渉に向けたシグナルを出すのを待っている状態だ。
 英国は今回のイランの挑発行為に対して軍事的に対抗する必要はない。ジョンソン氏は、イランに対して最大限の圧力を掛け、新たな合意を目指すという米国の方針に加わると表明するだけでよい。その他の欧州諸国は米英同盟に参加する以外に選択の余地がない公算が高く、中東で最も危険な国に対してついに共同戦線を張ることになるだろう。」

【社説】ボリス・ジョンソン氏、イランが試金石 - WSJ

 イランがこうした激しい対応をとるのはいくつか理由が考えられます。自国のタンカーが英国に拿捕されてるのだから、こちらも英国のタンカーを拿捕しなければならないという奇妙な義務感です。そのまま放置すれば、海外でのイランの威信だけでなく、イラン国内の治安も崩れる恐れがあるために、米英に対して特に強い姿勢で臨まなければならないと考えているのでしょう。

 もう一つの理由は、イランの体制のひずみでしょう。1979年のイラン革命以来、シーア派の指導者たちが、国家の権力者として君臨してきました。しかし、聖職者や、指導部の直属の組織である革命防衛隊は、イラン国内では、特権階級と化しています。自分たちの国内での権力を維持したいという革命防衛隊のドメスティックな希望が、このところの一連の騒動につながっていると考えられます。

 そうしたイランに、アメリカ以上に強硬な姿勢をとっているのが英国です。アメリカよりも、むしろイギリスの出方に中東の将来がかかっているといえるでしょう。