10連休がマーケットに与える影響
というわけで、いよいよ日本も歴史上例を見ない10連休を体験するわけですが、本当に大丈夫なのでしょうか。
「 オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)が今年1月の円急騰を分析し、話題になっている。グローバルな金融市場で取引が少なくなる日本時間の早朝に「フラッシュクラッシュ」が起きやすいと指摘。日本の個人投資家のポジションにも一因があるという。今年のゴールデン・ウィークは異例の10連休であり、再び急激な円高が進む可能性があると警戒されている。
<危険な時間帯は日本時間午前7─8時>
2016年の英ポンドや18年の南アフリカランド、19年の豪ドルなど主要通貨の急変動、いわゆるフラッシュクラッシュは、いずれも日本時間の午前8時前後に発生している。 今年1月3日の円急騰も日本時間早朝の午前7時過ぎに起きた。ドル/円は、それまで推移していた108円後半から突然急伸し、数分後には電子取引のEBSで104.10円を付けるなど4円以上の円高が一気に進んだ。
RBAは今月5日に公表したリポートhttps://www.rba.gov.au/publications/smp/2019/feb/pdf/box-b-the-recent-japanese-yen-flash-event.pdfで今年1月3日の円急騰について考えられる3つの要因を指摘した。その1つが取引量の薄さだ。外為市場は24時間取引だが、株式市場や債券市場はそうではない。各国で取引時間が決まっており、外為市場もそれに伴い取引量が増減しやすい。
NYの取引終了後、東京市場が開くまでの間、世界で開いている主な市場は、ニュージーランドのオークランドとオーストラリアのシドニーのみ。今年1月は日本が正月休みだったという特殊事情があったが、日本時間の早朝は、外為市場でも売りと買いのスプレッドが開きやすく、値が飛びやすくなることが多いという。(中略)
<個人投資家のキャリートレード>
日本の個人投資家の動きも、1月3日早朝の円高を加速させた要因の1つとRBAは分析している。
高金利の外貨に投資するために、日本の個人投資家は円を調達通貨として、豪ドルや南アランド、トルコリラに投資するキャリートレードを行っており、そのポジションが積み上がっていたと指摘。それが当日のロスカットで一気に巻き戻され、円買い・高金利通貨売りが進んだとみている。
金融先物取引業協会によると、1月の店頭FX業者間で発生した未収金(ロスカットにより損失を出した個人からFX会社が回収できなかった資金)は9億4300万円。15年1月のスイスフラン急変時、11年3月の東日本大震災発生時に次ぐ、過去3番目の高水準となった。
今月11日の日本時間午前7時過ぎにも、特段の手掛かりがない中でスイスフランが突然急落。直後に0.99フラン後半へ値を戻す場面があった。対円でも108─109円台を乱高下した。今回はマイナス金利のスイスフランは個人にあまり人気がなく「大きな影響はなかった」(FX会社幹部)が、日本の個人投資家のポジションには、今後も注視が必要になりそうだ。
<アルゴリズム取引による流動性枯渇>
RBAが指摘する3つめの理由は、一部のアルゴリズム業者が相場急変時に取引を自動停止するよう設定しており、流動性がさらに失われたことだ。「相場急変の動きに乗る業者もいるが、反動を警戒して取引を『スイッチオフ』する業者もいる」(国内証券)という。
FX業者の未収金が膨らんだ要因はまさに、RBAの指摘と合致する。発生から1時間後には107円後半へ値を戻したため、損失を確定させなかった業者は評価上の巨額損失が「幻」となったが、金先協会の集計は一部業者がセオリー通り、速やかに損失を確定させてしまった可能性が浮かび上がる。
幸運にも損失を確定させなかったFX業者も恐怖を感じている。相場が急変して予想と逆行した際は「素早く損失を確定させるのがセオリー」(外銀幹部)だが、パニック的な薄商いの下で「売買注文がほとんど消えてしまい、眺めることしかできなかった」(あるFX業者)ためだ。
これまではフラッシュクラッシュが発生しても、薄商い下の一時的な異常値として扱われ、取引量が増えるに従って元の水準へ戻ることが多かった。しかし市場では、最近の環境変化を受けて、暴騰した円があまり戻らず、フラッシュクラッシュが超円高局面への導火線となってしまう可能性を警戒する声が上がり始めている。
景気減速懸念の高まりや米中通商摩擦の長期化、それに伴う各国金融政策のハト派転向は、主要通貨の下落圧力を強める一方、リスク回避の買いが集まりやすい円に従来以上の上昇圧力が加わる可能性を高めることになる。
トランプ米大統領は15日、中国との通商協議を60日延長する考えがあるかとの質問に「可能性はある」と述べた。現在の期限である3月1日の60日後は、日本が10連休中の真っただ中だ。日本勢が長期不在で朝方の取引が枯渇するなかでの、フラッシュクラッシュの再来を恐れる声は少なくない。」
焦点:豪中銀が1月円急騰を分析、フラッシュクラッシュが日本早朝の訳
ドル円の水準が上がろうと下がろうと、10日間の間に海外の勢力が相場をどう動かそうと、日本の機関投資家は、基本的には手が出せないことになります。暴騰した、もしくは暴落した円が、さらに他の通貨市場、たとえばユーロ・ドルにも影響を与えることは十分にあり得ることです。幸か不幸か、今年の一月の急落で、混乱を引き起こす手口があきらかになったのですから、いまから、その対応を考えておかねばならないのではないでしょうか。