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米のシリア撤退は、クルド人の切り捨て

ISISと戦う ~分断された、国を持たない世界最大のクルド民族4600万人

 トランプ大統領は、自分の思った通りでなければ堪えられないという性格です。当初から、シリアから米軍を撤退させると主張していましたが、今回も果たしてその通りになりそうです。

  ただ、米議会や国防総省には動揺が見られます。

 例えば、これまでトランプ政権の政策を支持してきたリンゼイ・グラム上院議員も、米軍撤退を「オバマ的な大失敗」と呼んでいるほどです。グラム議員は、一連のツイートで、ISは「敗北していない」と述べ、米軍の撤退は「我々の同盟国や少数民族クルド人を危険にさらす」と警告しています。

 対IS国際有志連合の調整役を務めるブレット・マガーク米大統領特使も、先週、国務省で記者団に対し、「あの勢力(IS戦闘員)が消滅するとは誰も言っていない。そんな考えの甘い人は誰もいない。なので、我々は留まり、シリア一帯の安定性維持を確かなものにしたい」と述べていたほどです。

 これに対して、ホワイトハウスは、「アメリカの国益を守るため、必要な時にいつでも、あらゆる水準の取り組みを再開する準備はできている。また、イスラム過激主義者による地域支配、資金調達、支援、そして我々の国境へのあらゆる侵入を退けるため、共に取り組み続ける」と発表していますが、突然の撤退声明に議員も、ペンタゴンも揺れているのです。

 トランプ政権にとって命よりも大事なイスラエルには、事前に通知されていた用です。また、クルド人勢力を放逐したいトルコも今回の動きを歓迎しています。

 ただ、問題は、イスラム国討伐に大きな功績があるクルド人アメリカが公式に見捨てることになるということです。トランプ大統領は、自分の国さえ良ければ、後はどうでも良いという姿勢で一貫していますが、シリア分割によるクルド人国家の樹立につながらないのであれば、アメリカの国際的な信用は無に帰することでしょう。

 ただ、トランプ大統領の言い分からすれば、いずれ来るイランとの戦争に対してトルコは同盟国に引きつけておきたい。だから、ギュレンもトルコに引き渡しても構わないと考えているのです。

 とはいえ、素直に考えるのであれば、アメリカに裏切られたクルド人はどうなるのでしょうか。クルド人イスラム国と結ぶという可能性アメリカ政府は考えないのでしょうか。少なくとも言えることは、これでシリアにイスラム国の活動の余地が生まれ、テロが今後激化するということです。

トランプ氏、IS「敗北」宣言 米軍はシリア撤退開始 - BBCニュース