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米シリア撤退のもう一方の勝者はロシア

The New Tsar: The Rise and Reign of Vladimir Putin (English Edition)

 だらしなさそうに座っているプーチンも、見かけ通り傲慢に見えていいですね。

  そもそも、パトルシェフ文書の存在を知りませんでした。

 3カ月前、プーチン大統領の国家安全保障担当補佐官ニコライ・パトシェフ(Nikolai Patrushev)は、イスラエルのカウンターパートに文書を提出した。この文書には、シリアとイランに関する米国とロシアとの関係に関する非公式な提案が含まれており、関係を改善するためにワシントンとモスクワのより広い対話を開始することを意図したものであった。
 この文書がなぜ重要なのだろうか。ロシアの提案は、シリアからの米国の撤退と、イランのシリアからの撤退をバーターで行い、そうすることで、アメリカとイスラエルがシリアの今後の政治的解決に対する影響力を強めるというものであった。しかし、この提案は、イランに対する米国の制裁措置の凍結を要求していた。これは、ネタニヤフ首相には容認できない条件であった。結局のところ、トランプ大統領のシリア撤退に関する水曜日の驚くべき発表で、アメリカは、シリアに対する大部分の影響力を手放すことになった。

 先月、ネタニヤフ首相は、イスラエル議会のクネセトで非公開の聴聞会で、ロシアは、イランに対するいくつかの米国の制裁措置の解除のために、イラン軍をシリアから追放すると提案したと報じた。ネタニヤフ首相の発言では、「パトルシェフ文書」として言及されている。
 パトシェフ文書は、イスラエルとロシアの間で深刻な危機を引き起こしたシリアのロシア軍用機墜落事件の4日前、9月13日にモスクワで開催された会議でイスラエル側に提示された。
 2人のイスラエル当局者によれば、ロシア側の提案は、イスラエルが米国とロシアの仲介役として行動し、ホワイトハウスがシリアとイランに関するクレムリンとの対話をより広い二国間協議の開幕として開始するというものであった。
 イスラエル当局者の一人は「ロシアはイスラエルにワシントンでロシアが受け入れられるようにするように依頼した」と語った。
 「パトルシェフ文書」を見たイスラエル当局者は、この文書に、主なポイントが含まれていると述べた。
 そのポイントとは以下の通りである。 
・イランの核合意からの撤退の一環として計画されていた11月の段階でのイランへの経済制裁の強化の凍結
・イランとイラン勢力のシリアからの撤退というロシアの約束
主にアル・タンフ基地からのシリアからの米軍の撤退
イラン問題に関する米国とロシアの対話の開始
・シリアとイランに関する米国とロシアの対話を使用した、他の二国間関係に関する対話の拡大

 イスラエルの当局者は、ネタニヤフがパトルシェフ文書の提案を拒絶したと語っている。なぜなら、イランへの再制裁は、シリアに対するイランの影響力を抑制するために用いることができるためだ。
 「ネタニヤフ首相にとって、何よりも優先されるのが、イランの核計画の抑止なのだ。米国の制裁問題に柔軟性を持たせることを拒否したのはそのためだ」とあるイスラエルの当局者は語っている。
 2人目のイスラエル当局者は、「イスラエルがロシアの提案を拒否しなければ、米国のシリアからの撤退決断が、単なるアメリカの一方的な決定ではなく、確実に、シリアでのイランのプレゼンスに関する取引にすることができたのだが」と語っている。」

Scoop: Netanyahu rejected Russian plan to work with U.S. on Syria, Iran - Axios

 トランプがシリアからの撤退を決断した理由として、前回のエントリーではトルコの関与に触れましたが、イスラエルとの関係でいえば、ロシアとの関係改善という目的があったことがわかります。

 ただ、この記事にもあるように、合意を定めたうえで撤退していれば、イスラエルもシリアからイラン勢力が除去されることになり、歓迎すべき事態になっていたはずです。

 ただ、そうしなかったのは、おそらくはトランプ大統領が「めんどくさくなった」からではないでしょうか。まあ、それは冗談としても、ロシアとの関係強化に動き出しているという言い方はできるでしょう。

 ただ、今回のシリアからの撤退には、ペンタゴンに十分に話を通したうえではないことは、マティス国防長官が辞任を申し出たことからも判断できます。

 さらには、グラム上院議員が、シリアからの撤退に強く反対していることから、すんなりシリアから撤退できるかどうかはまだわからないといったところでしょう。