英国は、ハードブレクジットを決定
ハードブレクジットであろうという推測は紹介してきましたが、ここにきてメイ内閣の閣僚から決定的な発言が飛び出しました。
「 ジェレミー・ハント外相は、メイ首相に「今後数ヶ月以内に辞退」し、「交渉不成立」のシナリオでも、英国が 「繁栄し発展」すると主張している。
ハント外相は、首相が「来るべき挑戦的な数ヶ月」を経た後で、メイ首相の後に首相に就任する「チャンス(crack)」を望んでいると認めた。ハント氏は次のように述べている。「私は、どんな国会議員でも、心の片隅には、いずれ首相になることを考えているものだ。私もそれと何ら変わらない。」
サウスウエストサリー選出の議員であるハント外相は、メイ首相が、英国を悲惨なブロックであるEUから離脱させるのに適した人物であると信じているものの、メイ首相が3月29日以降に辞任するように求めている。
彼は次のように語った。「肝心なことは、ここ数ヶ月のこの試練を乗り切ることだ」
閣僚にとっては明らかなことだが、外相は、交渉不成立の場合は混乱も生じるだろうが、英国は、これまでにもEU離脱よりも大きな困難に直面してきたと述べた。
外相はThe Sunday Telegraphに次のように語った。「交渉不成立(ノー・ディール)の状況であっても、英国は偉大な国であり、私たちは繁栄し発展する方法を見いだすだろうと常に考えてきました」
「私たちは歴史においてはるかに大きな課題に直面してきました。」
「しかし、我々は混乱が生じず、危険もなく、ショックもないというふりをするべきではありません。だから、責任を持つ政府は、すべての必要な準備を事前に行っておく必要があるのです」
サウスウエストサリー選出のハント外相は2016年には、EU残留に一票を投じた。しかし、それ以降、考えを変えたと表明している。
7月にEU離脱論者のボリス・ジョンソンの後継として外相についたハント議員は、メイ首相が、「彼女の計画を支持しない国会議員にとって満足のいく計画変更を行える唯一の人物である。というのも、EUの指導者は彼女を尊重しており、『彼女がどんなに頑張ったかを知っているから』」と述べている。
ハント氏の能天気な発言は、メイ首相のEU離脱内閣で緊張が高まっているときになされた。
閣僚は、第2回の国民投票やソフト・エグジットよりも、交渉不成立の場合の結果が望ましいと高く評価している。
保守党の院内幹事長であるジュリアン・スミスは、週に数回、労働党の院内幹事長と会談を継続しているが、そのことが、保守党のEU離脱派の議員から批判を浴びている。
彼の行動は、左派による保守党への投票を確保するために、ソフトBrexitについて議論しているのではないかという恐れを生み出している。
EUからより良い譲歩を得ることができず、英下院で離脱案が否決された場合、現在の閣僚と元閣僚は、メイ首相の後任を目指すレースに加わることになる。
労働年金省のアンバー・ラッド大臣は、メイ首相の合意案に対する反対を突き崩せない場合、首相官邸は「他の政党と交渉し、合意を形成したい」と述べている。
彼女はノー・ディールは「起こるべきではない」と言った。
ハント氏の言葉は、メイ首相の現在の合意案よりも、ノー・ディールのシナリオの方が良いだろうと主張するEU離脱論者によって歓迎されるだろう。」
EU離脱という穢れ仕事のために、同僚である保守党の大臣から、ぼろ雑巾のように扱われているメイ首相には慰めの言葉すら見つかりません。現役の閣僚から、辞任を求められるというのは、それだけ閣僚を抑えておく力がメイ首相にないということを示しています。
とはいえ、メイ首相は、メイ首相で、精いっぱい、ソフトブレクジットになるように、最後の最後までEU当局と交渉することでしょう。そうしなければ、英国に進出している企業からの信頼を失うからです。しかし、英国政府の本音はハードブレクジット。これは、この記事からも明らかでしょう。
英国は、仮に、EUから離脱しても、農産物市場としての英国を必要としているEU諸国、特にフランスは放置しても折れると見切っていると考えられます。むしろ、漁業水域の問題も一挙に解決できるハードブレクジットの方が後腐れがなく好ましいという英国閣僚の本音が伝わってきます。
ここまでくれば、農産物に関して市場を開放する代わりに、貿易・金融面で従来のアクセスを認めるという妥協が、3月29日前後でなされることでしょう。
EUを離脱した英国は、これで晴れて、米国との通商協議、TPPへの加盟協議を推進することになります。