英国ポンドの行方
ユーロは下がるとはわかっているものの、ポンドも下がるのかといわれると迷ってしまいます。
「 先週の熱波とワールドカップのために、英国の小売売上高はプラスに転じたにもかかわらず、ポンドはユーロに対して改善する傾向を見せなかった。
8月16日の一ポンド当たり1.117ユーロからみれば若干の改善であるが、今週の為替レートは1.120ユーロまで下落した。
英国家統計局は、英国の7月の小売売上高が予想以上に増加したことを明らかにした。
これは、だらだらと続いた熱波とワールドカップによるところが大きい。
TorFXの通貨アナリスト、Laura Parsonsは、なぜポンドが拾われなかったのか次のように説明している。
「現段階では、Brexitの不確実性がポンドにのしかかっているために、英国の小売売上高が大幅に回復したにもかかわらず、木曜日に上昇の契機を見つけることができなかった。」
「GBP / EURの為替レートは、日中に少し上昇したが、1.120ユーロを上回った。」
英国の小売データは先月0.7%上昇し、3ヶ月から2.1%増加した。
先月はスーパーマーケットでの食料品の購入や、バーゲンによる衣料品価格の下落が、この上昇に貢献した。 しかし、家庭用品は総体的に減少した。
肯定的なデータがあるにもかかわらず、高級店がひしめくハイストリートは、多くの店舗の閉鎖により、苦戦を続けている。
「ホームベース」は最近、労使紛争のために英国全体で数多くの店舗を閉鎖し、「ハウス・オブ・フレーザー」は最近スポーツダイレクトのマイク・アシュリーによって買収された。
B&Qとスクリューフィックスは、暑い天気のためにパドリングプールやファンが売り切れになったため、売上が増加したと報告している。
今週初め、英国のインフレ率は11月以来初めて2.4%から2.5%に上昇した。
英国家統計局はまた、失業率がわずか4%となり、43年ぶりの低い値に達したことを明らかにした。
賃金の伸びは、5月の2.5%に対し、2.4%の上昇と伸び悩んだ。
Parsons氏は、この週末にポンドがどのように拾い上げられるかを説明した。
彼女は言った「Brexitの話は週末の前にスターリングの動きを引き起こすかもしれないが、GBP / EURは最終Eurozoneのインフレ数値が当初の見積もりからの修正でさらに変動するかもしれない。」
英国人は、ポンドを利用するには、ユーロは避けて、トルコ・リラに向かうべきだ。
トルコ経済の混乱のおかげで、昨年に比べリラはポンドに対して半値に落ちている。」
現在のポンドをめぐる情勢は、Brexit一色です。そのために、英国経済の動向などが全く無視されています。混乱のそもそもの原因は、こわもてのメルケル首相に対して英国のメイ首相が断固とした態度をとれないことにあります。
思えば、ポンドもかなり下がっており、最近では140円前後です。昔は250円を越していたことを思えば、下がったものだとは思いますが、ここまで下がれば、英国の輸出部門にはかなり良い影響がみられることになります。それはこの記事が指摘する通りです。
そもそもの問題は、ギリシャの通貨危機のようなメルケル首相のEU統治方針に英国がついていけないと思ったというのが、Brexitの最大の要因でした。それに加えて、シリア難民の組織的な受け入れは、英国にとっては耐え難いものであったと考えられます。
いろいろ理由を挙げることはできますが、それでも決定打であったのは、エリザベス女王の離脱に向けた硬い意思でした。
ポンドもかなり減価したのですから、輸出の拠点としてのポテンシャルは上昇することになります。ユーロ圏との経済関係は重要ですが、ハードBrexitとなった場合、大陸側にも大きな犠牲が生じます。ですから、ギリギリの段階ではブリュッセルも英国に妥協せざるを得なくなるでしょう。そうしなければ、フランスの農民などの抗議運動を抑えることができなくなります。
英国の今後という点では、Euro圏との経済関係が安定し、それ以外にもTPPなどに加盟できれば、工業国として再生する可能性が高いといえます。現在でこそポンドは売られていますが、ある日いきなり急速な上昇を始めるという展開も考えられます。
ですから、ポンドを売り進めることができるのかといえば、少し自信がありません。