低下するドイツ経済への信頼
クルスク 独軍第41装甲師団ポヌイリ駅での敗北 ObjectivePonyri! The Defeat of XXXXI. Panzerkorps at ...
このところ、ユーロが急落しています。その背景には、ドイツ経済の変調があります。
「ユーロ圏に対する楽観主義が消滅するにつれて、ドイツ経済への信頼性が急速に揺らいでいる。
経済成長の勢いは減少しており、Ifo研究所の調査によれば、5か月連続してIfo 景況感指数が低下している。
この指数は、4月には103.3であったものが、4月には102.1に低下した。ロイターによる事前の調査でも、102.7と予想されていたが、それを下回る数字であった。
Ifo研究所のクレメンス・フェスト所長は率直に警告を発している。「ドイツ財界の高揚感は失われてしまった。ドイツ経済は減速を始めている。」
パンテオン・マクロエコノミクス社のユーロ圏経済主任を務めるクラウス・ヴィスタセンは、ドイツ経済の信頼性が連続して低下しているのは「よくない(Nicht gut!)」と述べている。
彼はFTに次のように語っている。「方法論を変えたにもかかわらず、これは当たり障りのない言い方だ。第二四半期以来、ドイツ経済はモーメンタムを失っている」
先週、とあるドイツの経済シンクタンクが、ネガティブな経済指標が数多くみられるという理由から、リセッションが近づいていると指摘している。
マクロ経済政策研究所(The Macroeconomic Policy Institute)は、ドイツにおけるリセッションの可能性が、今年の3月の6.8%から、4月から6月にかけてでは、32.4%にまで上昇していると警告している。
同研究所のレポートによれば、「産業生産という観点からのリセッションの可能性は、信号でいえば黄色信号である。つまり、不確実性が増しているのだ。」
「今月のドイツの株式市場(CDAX)のボラティリティーは、リセッションの可能性を引き上げている」
「経済的にネガティブなトレンドは、今後数か月で無視できないだろう。」
「この数か月で、ネガティブなトレンドが強まれば、予測の大幅な下方修正は避けられない」
ドイツはトランプ政権に対して、鉄鋼アルミニウムへの関税を引き下げるように交渉を行わなければならない。
現在の免除措置は5月1日に失効する。ドイツ政府のスポークスマンは、事態が急を要していると先週の金曜日に語った。」
Ifo 景況感指数は、Ifo 研究所が製造業、建設業、卸売業、小売業の約 7,000 もの企業に対してアンケートを行い、その結果を基に指数化したものです。企業を調査対象としており、対象企業も多いため、ドイツの鉱工業生産の実態をかなり正確に反映していると考えられます。そのために、市場からも多くの注目を浴びている指数でもあります。日銀短観と似た調査ですね。
問題は、単なる景気循環ではないという点にあります。検査での不正によるフォルクスワーゲン社の苦境はよく知られています。また、トランプ大統領の貿易赤字に対する言及は、新たに成立したメルケル政権を悩ませているに違いありません。
さらに、アメリカの対ロ制裁が、ドイツを徐々に追い込んでいます。2017年6月半ばに米国上院がロシア及びロシアと取引のある企業への一連の新たな制裁を承認しました。その結果、波及的にドイツとオーストリアが打撃をうけることになりました。両国は、ロシアの重要な通商パートナーであり、天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」(ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン)の建設にも関わっています。ドイツとオーストリアも6月15日にコミュニュケを発表し、「制裁の域外適用は国際法違反であり」「米欧の関係をかつてないほど悪化させるものだ」と非難しています。
それだけではありません。パリ協定から離脱したことからもわかるように、トランプ大統領は環境保護政策に無関心であり、環境技術を売り込もうとしていたドイツは肩すかしを食らった形になっています。
そこに、ロシアに対抗するためのNATO強化のための予算が必要になります。政治的資本を既に使い切ったかに見えるメルケル新政権が、こうした幾つもの難題を無事可決できるとは考えにくいのです。
国際政治の定石という観点から言えば、ドイツはロシアと組んでいるときには最強なのです。ドイツ帝国とロシア帝国の再保証条約を考えればわかるでしょう。この際保障条約が更新されなかったために、露仏同盟により挟撃されることになったのです。
第二次大戦においても、ドイツ・ソビエトロシアの協力関係が、独ソ戦により崩壊すると、ナチスドイツは崩壊してしまいました。
現在の事態の推移は、ドイツ・ロシアの関係を徹底的に破壊する方向に向かっています。政治的にも、経済的にも、ドイツは今後苦しい立場に立たされることでしょう。