まだまだ問題が多い日本版海兵隊
日本にもようやく海兵隊が創設されました。これで、離島防衛もはかどるとみられます。
ロイターからです。
「自衛隊初の上陸作戦能力を持つ水陸機動団が7日、配備先の相浦駐屯地(長崎県佐世保市)で本格始動した。中国の海洋進出をにらんだ南西諸島の防衛力強化の一環で、日本は同機動団をその中核に据える。いずれ3000人規模まで増員するが、本格的な力を発揮するまでには課題も多い。
「日本版海兵隊」と称される陸上自衛隊の水陸機動団は3月27日に2個連体、約2100人で発足した。4月7日の編成式に出席した山本朋広防衛副大臣は、顔を迷彩色に塗った約1500人の隊員を前に訓示。中国を念頭に「自国の権利を一方的に主張し、行動する事例が多く見られる」とした上で、水陸機動団の創設で「島しょを守り抜くという、わが国の断固たる意志と能力を国際社会に示す」と語った。
イラク派遣部隊の日報問題の対応に追われる小野寺五典防衛相は出席を取りやめた。
「南西諸島防衛というパズルを埋める有効な一片になる」と、元米海兵隊大佐で、現在は日本戦略研究フォーラム上席研究員のグラント・ニューシャム氏は言う。「日本の戦略に選択肢が増え、対峙する側にとっては複雑さが増す」と、同氏は語る。
7日の編成式では、離島に見立てた芝生の運動場で水陸機動団による奪還作戦を披露。約220人の機動団員に約20人の米海兵隊が加わり、AAV10両やヘリコプター4機を使って上陸、空砲を撃ちながら前進して敵部隊を制圧した。
しかし、災害から有事まで、あらゆる事態にいち早く駆けつける米海兵隊のような能力を持つまでには、まだ時間もカネもかかる。水陸機動団を輸送する海上自衛隊、空からの火力で上陸を援護する航空自衛隊との連携が欠かせない。専守防衛を掲げる日本は第2次大戦後、敵地への攻撃的な戦力としても使える上陸作戦能力を整備してこなかった。
「南西諸島を守るには水陸機動団だけでは十分ではない。適切な海軍力と空軍力、何よりそれらを一体的に動かす必要がある」と、機動団の立ち上げ支援のため日本に派遣されていたニューシャム元大佐は言う。
具体的には、水陸両用車などを沖合いから発進させつつ戦闘機の発着拠点にもなる広い甲板を有した強襲揚陸艦や、そこに垂直着陸できるF35Bのような戦闘機が必要になると、同氏は指摘する。
初代団長に就任した青木伸一陸将補は、編成式後に記者会見で、「まだ能力は完全なものではない。今後の訓練のなかで、陸海空がしっかり連携しながら、実効性の向上に努めたい」と語った。」
「日本版海兵隊」が始動、自衛隊初の上陸作戦部隊 | ロイター
まだ詳細は明らかにはなっていませんが、それでも重大な問題がいくつも指摘されています。
まず、問題になるのは、今回の水陸機動団の規模です。南西諸島の防衛にあたるといっても、いくつもの離れた島しょ部を狙われたらひとたまりもないのは明らかでしょう。いずれは三個連隊3000人程度まで拡大するようですが、奪還された島を新たに奪還するためにはもう少し人員数が必要であるように思われます。
ちなみに、中国人民解放軍において、海兵隊に相当するのは、海軍陸戦隊になります。南海艦隊司令部に所属し、第1海軍陸戦兵旅団と第164海軍陸戦兵旅団から構成されています。
第1海軍陸戦兵旅団の構成は、水陸両用機甲大隊×1個、機械化歩兵大隊×1~2個、第1海軍陸戦兵大隊(歩兵)、第2海軍陸戦兵大隊(歩兵)、第3海軍陸戦兵大隊(歩兵)、ミサイル大隊、自走砲大隊、警護・通信大隊、工兵・化学防護大隊、整備大隊、水陸両用偵察大隊となっています。
第164海軍陸戦兵旅団は、水陸両用機甲大隊×1個、機械化歩兵大隊×1~2個、海軍陸戦兵大隊(歩兵)、自走砲大隊、ミサイル大隊、警護・通信大隊、工兵・化学防護大隊、整備大隊、水陸両用偵察大隊から構成されています。
全体の規模ですが、海軍陸戦隊は2個旅団で構成されるため、海軍陸戦隊の総員は約1万から1万2千名程度と予想されています。つまり、3000名に拡大されても中国の三分の一から四分の一程度に過ぎないのです。
武装の点でも、水陸両用戦車では、05式水陸両用戦車×73輌、水陸両用歩兵戦闘車では、05式水陸両用歩兵戦闘車×152輌を保持しています。自走砲では、07式水陸両用自走榴弾砲を20門以上配備しています。さらに、89式自走榴弾砲も20門以上です。
いくらメイドインチャイナの質が劣るといっても、数ではもはや日本を圧倒しているのです。
第二に、水陸機動団が独自の海軍力、空軍力を保持していないという点です。その点では海上自衛隊や航空自衛隊との緊密な協力が必要になりますが、差し迫った軍事作戦でタイトな統合運用を行うためには、事前に相当の訓練が必要になります。ですから、まだ現段階では水陸機動団という駒ができたにすぎないのです。
ここでは指摘されていませんが、今後は潜水艦による浸透工作なども必要になるはずです。しかし、その点にも言及がありません。
災害への対応は置くとしても、実際に実効性のある作戦を展開するにはまだまだハードルが高いと言わざるを得ません。