日米首脳会談がもたらすFTAと円高の恐怖
すくなくとも安全保障の面でトランプ政権が日本に対して強硬な要求をするとは考えられません。むしろ、経済面で、同盟国であるという利点が生かされていないのが問題であるといえます。
現在のところ、トランプ大統領がどのような「取引」を提示してくるのか、読めません。そのためにさまざまな憶測が生まれています。
その一つが、アメリカの貿易制裁を回避したいという日本側の希望があります。米国が先月発動した鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置で、日本も欧州連合(EU)や韓国などと同様に「適用除外とするよう働きかけたい」(与党)との意見があります。
しかし、ここで深入りすると日米二国間のFTAを求められることになりかねません。それが懸念材料の一つです。せっかくTPPをまとめ上げたのに、また初めから二国間協議を行えば、相当のエネルギーが必要となります。
もう一つ懸念されているのが、日銀の金融緩和がやり玉に挙げられるというものです。1.3%程度の成長率があるのにいつまでもゼロ金利や金融緩和が続けられないのではないかというのです。そうなれば、いきなり1ドル100円の大台を割ることになるでしょう。
しかし、オバマ政権の時とは違い、トランプ大統領は中国との経済戦争に勝利する気でいます。日本とも同時に戦うよりも、日本との同盟関係を大切にした方が良いという判断もある程度働くでしょう。
なによりも、数年後に米中の軍事衝突が発生する可能性が高い中で、日本に懲罰的な対応を行うことで日本の経済にダメージを与えることは,かえって、アメリカのためにもなりません。
後は,落としどころは、一層の軍需品の輸入、日本側からの技術の提供ということになるのではないでしょうか。アメリカの鉄鋼業界にしても、保護貿易を唱える度に、技術革新への意欲をなくしてきたという経緯があります。その点をトランプ大統領に説得出来れば,安倍首相としても最悪の事態は回避出来るでしょう。