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トランプ通商戦争はTPPを破壊するか

仁義なき戦い 頂上作戦

 まず、中国に向けた貿易戦争を振り返っておきましょう。
 米中の貿易摩擦で、中国が2日に報復関税発動に踏み切りました。対象品目は3月に公表済みですが、実際に発動して一歩も引かない姿勢を見せています。

  具体的には、ワイン、ナッツ類、果物など120品目に15%、豚肉やアルミニウムスクラップなど8品目に25%を上乗せするというもので、2017年の輸入額は30億ドルに上っています。その結果、アメリカの豚肉業者やワイン業者は悲鳴を上げています。
 中国の狙いは米国との交渉に強い立場で臨むことにあります。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は通商法301条に基づく制裁の発動を6月以降に先送りする方針を示し、交渉の余地を残しています。実際、米中とも貿易戦争は避けたいのが本音で水面下では双方の交渉が本格化しています。
 しかし、中国はアメリカへの対抗心を隠していません。一方的な攻勢にはあくまで対抗する気構えです。それが、今回の対抗措置です。
 とはいえ、これはまだ序盤戦に過ぎません。本命は中国の知的財産侵害に対する制裁措置です。中国製の通信機器や半導体などが対象になれば、1300品目にのぼるとみられています。その額も、最低でも500億ドル相当になると見積もられています。

 中国は、なるべくアメリカの関税と同程度のものに押さえています。ただ、こうした強硬な姿勢は中国にだけ向けられている訳ではないということです。

 そこで目につくのが,トランプ大統領のNAFTA放棄の発言です。特に不満を持っているのが、メキシコです。トランプ米大統領は1日、中米からメキシコを通って米国に向かう不法移民に関して「メキシコは何の対策も取っていない」とツイッターで批判しています。「メキシコは人と薬物の大きな流入を食いとめるべきだ。さもなければ彼らのドル箱である北米自由貿易協定(NAFTA)をやめる」と貿易協定の離脱を畳み掛けているのです。

 したがって、トランプ大統領は、メキシコに対しても,中国に対しても本気ということになります。ですから、メキシコとカナダがTPPを断念してアメリカとFTAを締結する,若しくは現在のNAFTAを米国に都合良く改訂するならば、TPPが事実上崩壊することになります。

 こうなれば、大変だから日本もある程度譲歩しなければという声があることも良く理解出来ます。ただ、メキシコは、別の考えがあるようです。メキシコのグアハルド経済相は、3月15日に、サンパウロで開催中の世界経済フォーラムラテンアメリカ会合で北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉に関し「米国抜きのNAFTAに備える必要がある」と述べています。NAFTA脱退を繰り返し示唆し、メキシコなどに譲歩を迫るトランプ米大統領をけん制しているのです。

 つまり、NAFTAからアメリカが脱退すれば、カナダとメキシコの間でNAFTAは維持され、それがTPPにつながるという仕組みです。こうなれば、恥をかくのはトランプ大統領です。これはトランプ大統領にとっては危険信号です。TPPが崩壊するか、はたまたトランプ大統領が孤立するか、重大な岐路にあると言えます。