プロパガンダでEUの内部崩壊を企むロシア
クリミア・ウクライナ紛争による対ロ制裁に対してプーチンは着実に反撃しています。難民問題などをプロパガンダで一層かき立てることで、EUの前途はさらに暗くなりそうです。
「ロシアは、EU諸国の内部からの瓦解を狙っている。アメリカ政府の報告書によれば、その最も弱い輪はハンガリーである。
スカンジナビア諸国と同様にブルガリアもクレムリンのプロパガンダマシンの格好の標的となっている。
206ページの上院外交問題委員会の報告書によれば、ハンガリー政府は、クレムリンの介入を自らの政治的な力として利用している。
ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相は、自国へのロシアのプロパガンダを歓迎している。というのも、ロシアのプロパガンダが、反EU、反米、反移民といった彼の推進する政策と一致しているためだ。
報告書では、「プーチンのロシアとヨーロッパの民主主義に対する非対称攻撃」として指摘されており、EUそしてNATO加盟国の中では、ヴィクトル・オルバン首相はプーチンの最も熱心な支持者である。彼の指導スタイル、世界観を共有しているといってもよい。
報告書は、プーチンの影響力と、オルバン首相との「暖かい関係」の証拠を示している。
オルバン首相は、何度か、ハンガリーは,対ロ制裁を支援することで自国の利益を損なっており、モスクワは「西側の孤立、体制変革の試み」に反対しているという点で讃えられるべきだと述べている。
報告書は次のように記している。「オルバンはモスクワの方向性に対する肯定的な姿勢をとっており、彼の政府がロシアの有害な影響力を挫くために努力せず、反EU,反米、反移民というロシアのプロパガンダを参照しているように見える。というのも、ロシアのプロパガンダはオルバンが推進する政策と一致しているためだ」
「ハンガリーをロシアの有害な介入から守るどころか、オルバン首相はそれを歓迎しているようだ。」
「ロシアは,ハンガリーを親クレムリン、反西欧プロパガンダであふれさせ、極右政党や小規模な民兵組織を支援することによって、ほとんど障害物がない状態を作り出している。」
2010年に政権に返り咲いて以降、オルバン首相は、「非リベラルな民主主義」という概念を提唱している。これは、ウラディスラフ・スルコフによって展開された「至上の民主主義(sovereign democracy)」をモデルにしたものだ。ウラディスラフ・スルコフは、ロシアの政治家で、ロシアでは,クレムリンの「人形遣い」と見なされている。
オルバン首相がロシアとの関係を強化するにつれて、彼はハンガリーの民主主義プロセスを着実に溶解させている。ハンガリーでは野党は周辺化され、市民社会の監視者の声は制限されている、と報告書は述べている。
報告書によれば、ロシアは、政党間の関係、文化的な紐帯、それに、ソビエト製の武器への依存、プロパガンダと同様に、経済、中でもエネルギー部門での主要な役割を通じて、ブルガリアに影響力を及ぼしている。
北欧諸国、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンは、西側世界は道徳的に堕落していると主張されると、プーチンの政治的魅力には抗いがたい。」
Russia targets Europe’s weak links to bring down EU from the INSIDE | World | News | Express.co.uk
米国議会の報告書とは
https://www.foreign.senate.gov/imo/media/doc/FinalRR.pdf
のことです。
今後もEU諸国は移民・難民問題でもめることはほぼ確実でしょう。すると、プーチンの反移民プロパガンダは有効に働くことになります。東欧が崩れれば、イタリア、フランス、ドイツにも、対ロ制裁を緩和するべきだという声が上がることでしょう。そうすれば、これまでロシアに対して強硬な姿勢を取ってきた英国はさらに浮くことになりそうです。
これだけの政治的混乱が予想される以上、EU圏への投資は考え直さなければならない時期に来ているといえるでしょう。