ロシアが目論む第三次世界大戦
ロシアでは上院議員が英国を(核で)焼き尽くすと発言したことからもわかるように、西欧諸国への敵対心が燃え盛っています。東アジアでは、まだおとなしいのでしょうが、東欧では今にも周辺諸国を蹂躙する意欲にあふれています。
上の地図は、前回の演習ZAPADの想定図となっています。安部首相が東欧諸国を歴訪しますが、おそらくは、ロシアの軍事的野心という話をいやというほど聞かされることになるはずです。(上の地図はBILD紙より引用)
ドイツのビルト紙からです。
「昨年12月19日にBILDは、NATOの情報機関筋から、ロシアの9月の演習が、ヨーロッパのNATO諸国に対する通常全面戦争の予行演習(dry run)であったと報じた。
しかし、最近まで、このBILD紙の記事は公式に確認されていなかった。事柄の性質上微妙な問題を含んでいるためだ。しかし、それも過去の話だ。
BILD紙の、エストニアのリホ・テラス将軍とのインタビューで、将軍は昨年のZapad演習の評価を明らかにした。テラスはエストニア国防軍の司令官であり、ドイツ連邦共和国功労勲章も授与されている。
Zapad演習以降、テラス将軍はエストニアとバルト海諸国の安全保障関係の様々な問題を調査した。たとえば、ロシアのサイバー脅威、東方からのロシアの侵略、ロシア語を話す少数派民族によるエストニアの軍への浸透といった問題を取り上げたのだ。
BILD紙:エストニアの地理的な脆弱性を考慮すれば、ロシア軍の東方からの侵入という想定に対してエストニア国防軍はどのような緊急対応計画があるのか?
テラス将軍:かつて、エストニアがヒトラーとスターリンの密約により独立を失い、1939年から1940年まで軍事的抵抗を組織することが出来なかったことは想い起こしておく価値があります。我々は同じ過ちを犯すわけにはいきません。」
エストニア国防軍には、25000の強力な予備役を備えるまで成長しました。我々は、2015年に14000名の兵士の動員訓練を実施しています。そして、そこで得られた教訓は、我々は24時間以内に予備役部隊を動員し組織することができると言うことです。それと同時に、エストニアの防衛にはNATO同盟国と共に当たることは明らかです。我々は信頼出来る部隊をアフガニスタン似展開しており,軍事支出も2%の大台に到達しています。
BILD紙:我々は,クリスマス前に、二人の情報機関関係者による、Zapad 2017はバルト三国などへの攻撃を想定したものだという見解を報道しました。将軍は、演習を綿密に観察し、その後もご覧になっていましたね。その最終的評価はどのようなものになりましたか?
テラス将軍:はっきりさせておきましょう。ロシア軍の演習Zapad 2017は、NATO加盟国に対する大規模な軍事侵攻作戦を想定したものです。目標となっているのはバルト三国だけでなく、北極付近や黒海沿岸も含む3方向に展開されています。演習全体の規模と範囲は,公に表明されているよりも大きなものでした。
BILD紙:我々はエストニア政府当局から、「数分おきに」ロシアからサイバー攻撃を受けているということを耳にしました。この脅威を将軍はどう評価しますか?またそれに対抗するためにエストニア国防軍は何をしていますか?
テラス将軍:エストニア国防軍は現在サイバー部隊を組織している最中です。我々はエストニア軍のために働いてくれるサイバー関係の専門家をリクルートするのに一層の注意を払い、資金も投じています。予備役は徴兵に基づいているので、我々はサイバー徴兵を導入しました。これによって、我々は聡明な若い専門家の技量や知識を利用することが出来ます。それに加えて、我々のサイバー防衛同盟という民間防衛組織の実践と技能が現在の段階では有効に機能しています。実際上、サイバー攻撃はロシアの西側諸国への侵略行為の一部となっています。サイバー攻撃は、背景の騒音であって、常に存在し、すぐに対処する必要があります。
BILD紙:24%のエストニア住民はロシア語を話します。そして、彼らは自らをロシア系少数派と考えています。数や展開される領域、そして彼らが満たしているポストの点で、エストニア防衛軍はどのようにして彼らを統合したのですか?
テラス将軍:世論調査によれば、ロシア語を用いる人口の間で反政府感情はありません。エストニア国防軍は、オープンで近代的な軍であり、核構成員のわれわれの社会への貢献を尊重しています。ロシア語を話す少数派は軍組織でも高い地位を占めています。ロシア語を話す兵士や士官は、部隊の要です。彼らは、アフガニスタン、イラク、中央アフリカ共和国、マリなどに展開されています。
BILD紙:ドイツは旧東欧諸国に軍を順番に展開させています。昨年の5月まで、エストニアに派遣されていました。現在はリトアニアです。このドイツ軍の展開は将軍にとってどれほど重要ですか。またエストニア、バルト三国にとってどれほどの価値がありますか。
テラス将軍:まず、第1に、同盟国の軍隊がここに駐留しているのはNATOを防衛するためです。彼らのエストニア、そしてバルト三国とポーランドにおけるプレゼンスが、NATOの団結と共に困難に立ち向かうという決意の徴なのです。エストニアの英国軍、リトアニアのドイツ軍、ラトビアのカナダ軍それにポーランドの米軍は、駐留国の軍と統合され同盟の領土を防衛する準備を整えています。ロシアのウクライナ侵攻以降、防衛と抑止を強化するためにNATOが採用した対応の素晴らしい実例です。
我々は、我々の祖国や他の地域におけるNATOの姿勢を確実なものにするために忍耐強く活動し続ける必要があります。そして、集団的安全保障の必要性に応じて常に進歩をとげ、いつでも信頼出来る存在であり続けています。この目的を達成するために、我々はZapad 2017やその他のロシア軍の演習から学んだ教訓を考慮に入れる必要があるのです。」
Russia simulated a large-scale military attack against NATO - Estonian - Politik Ausland - Bild.de
日本ではあまり報じられていませんが、バルト三国はロシア軍の圧力に常に晒されています。そして何かあれば、いつでもロシア軍は侵略できるという事実を正面から受け止めているのです。ロシアはといえば、プーチン大統領は再び大統領選に立候補することを決定しており、ウクライナのようにバルト三国その他を侵略の対象にすることは十分にあり得る事態となっています。
東アジアでは、米朝、米中の対決にばかり焦点が当てられていますが、ヨーロッパでは英国を筆頭として、NATO加盟国がロシアに危機意識を持っています。世界大戦はヨーロッパから始まる可能性もあることを我々は肝に銘じておかねばならないでしょう。