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メルケル、連立政権樹立に失敗、再び総選挙か

 ヨーロッパに関しては、シリア難民をドイツが率先して自国に導き入れた段階で潮目が変わったように感じています。続発するテロと、ドイツの場合は、難民による軽犯罪の公的機関による組織な隠蔽が、移民反対勢力に力を与えています。今回紹介する記事は、自由民主党が連立交渉を蹴ったというただそれだけの記事ですが、なかなか、考えさせられるところが多いですね。

  「深夜12時の5分前。二日前から続いていた整序交渉の結果、クリスティアン・リントナーの手は震えていた。彼は劇的な決定を発表したのだ。
 しかし、ドイツの連立交渉に携わった関係者が気がついていたのは、メルケル首相の下で4党による連立政権という危うい交渉の足下をすくうのは、自由民主党党首であろうということであった。自由民主党党首が交渉の最終日に非妥協的な態度で現れたときから兆候は現れていた。そのことが、他の連立政党を苛立たせた、と匿名を条件に関係者が語っている。
 一ヶ月にもわたる交渉は,非難の応報に終わった。ドイツの大統領は,月曜日には、各政党に交渉に戻るように促した。その一方で、メリける首相は,安定した多数が確保できないまま首相の地位に留まるよりは、再び選挙を行いたいと述べている。
 一つのことが明らかになったとすれば、10年近くの密室での協議と3代にもわたる連立政権の結果、ヨーロッパの盟主が、国外で友人を作っても国内ではむしろ敵を生みだしていたということだ。
 「12年にもわたる政権で,メルケルは政治的な偏見と多くの敵を持つことになった。そのために、メルケルは傷つきやすくなっている」と述べるのはINGディーバ社の主任エコノミストであるカーステン・ブレゼスキー氏である。「メルケルはもう何年も統一と安定性を確保しようとしてきた。そのために、メルケルは政治上の同盟者に苦い妥協をのませてきた」

<荒廃した月日>
 日曜日から始まった交渉が頓挫することで明らかになった欲求不満が、交渉を通じてくすぶり続けた緊張の背後にあった。
 63才のメルケルは38才のリントナーを信頼していなかった。というのも、この自由民主党の党首は、移民危機の際に、メルケルを手厳しく批判していたためだ。メルケルに近い筋によれば、メルケルは、リントナーを、責任を取らないオポチュニストでポピュリストと見なしている。その一方で、リントナーはメルケルに全く敬意を払っていないと自由民主党関係者は述べている。
 リントナーは、交渉から脱退する二日前の金曜日に、政党間の相違はあまりに大きいと述べていた。というのも連立結成の文書には「無数の矛盾」が含まれていたためだ。
 自由民主党は、よりビジネス寄りの手段を含む経済計画を提唱し、EUを離脱せずに、EU加盟国がユーロから離脱出来るようにすることを望んでいた。移民に対しては強硬派であり、そのために緑の党との連立結成は困難になっていた、と関係者は語っている。
 インサイダーの中には、メルケルを悩ませる歴史が戻ってきたというものもいる。自由民主党は、しばしばドイツの権力構造のバランサーとして機能してきた。2009年から2013年までは連立与党に属していたのだ。
 自由民主党は、税制に関する彼らの公約を実現しようと試みた。しかし、メルケルの中道勢力によって精気を抜かれた後では、議会で議席を獲得することは出来なかった。それは戦後政治における最大の敗北であった。そのために、自由民主党は連立結成のテーブルに着くどころか、野党の地位に転落したのだ。
 「クリスティアン・リントナーは連立を望んでいなかったのではないか。一部には、リントナーがメルケルを打倒したかったためだ」と月曜日にドイッチュラントファンクラジオで述べたのは、シュレーダー内閣で環境大臣を務め、連立交渉にも加わった緑の党のユルゲン・トリッティンである。「しかし、このお陰で、メルケルは立場を強めることになった。というのも、メルケルは責任を持って合理的に振る舞っていると見なされたからだ」
 議論に加わった関係者によれば、連立交渉はもうすこしのところで合意するところであった。自由民主党によって規定された午後6時の期限は、リントナーが記者達の前に姿を現したときには過ぎ去っていた。
 メルケル首相とキリスト教民主同盟は、自由民主党の党首に交渉を続けるように説得しようとした。そして連立協議のどの部分に反対なのかを尋ねた。すると自由民主党は、「受け入れられないのは取り決め全てだ」と答えた。この段階で、メルケルは、既に自由民主党は態度を決定していたのだろうと述べた。
 リベラル派が恐れているのは、4党の連立政権があれこれと詮索されることだ。そうなれば、自党の主張を展開することが困難になる、とマインツ大学の政治学者であるユルゲン・ファルターは述べる。「メルケルは12年の在任期間中に、政党同士を争わせることが大変上手なことを証明している」」

Germany’s Talks Collapsed When an Old Ally Turned on Merkel - Bloomberg

 自由民主党が連立交渉を頓挫させたのは確信犯だったのでしょう。連立内閣に入っても小政党が、自らの主張を政策にできないとすれば、あえて参加する必要はないとリントナー党首は考えたのでしょう。ましてや落ち目のメルケル首相相手ですから。
 今後はEU加盟国内部でも移民反対派が大きな力を持つことになるでしょう。その時、現在特権的な地位にあるドイツに対する批判は、我々の想像を超えたものになるでしょう。
そして、パリ、ニースやロンドンのようなテロによる惨事が繰り広げられるにつれ、国内での対立は回避出来なくなるとみられます。とするならば、ユーロ圏の経済は限りなく暗いといえそうです。