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信用の国、日本

SUPER LOVE SONGS!

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 たまには消費文化の話も取り上げましょう。

 日経からです。

ウォルマートに限らないが、スーパーを展開する流通外資はグローバル競争で培った少品種大量販売の「成功の方程式」を日本でも持ち込もうとしてつまずく。象徴的なのがメーカーと小売りをつなぐ卸売業を通さずに仕入れる直接取引がうまくいかなかったことだ。

 00年に日本進出して05年に撤退したフランスのカルフール。トップメーカーに直接取引を求めたがことごとく拒否された。売り場には人気の商品が並ばず3番手、4番手メーカーの商品や直接取引に理解のある外資系の商品が棚を埋めた。当然、魅力的な売り場にはならず、客足は遠のいた

 トップメーカーが「たった一店舗のために例外は作れない」と拒否し続けると、カルフールは「世界の店舗で販売する用意がある」と秋波を送った。だが、こう退けたという。「そんな口約束には乗れないし、海外向けのサプライチェーンは築けないから無理だ」

 ウォルマートも直接取引にこだわったが、有力卸の力を借りざるを得なかった。寡占が進む欧米の食品市場ではメーカーと小売りのパイプが太くなって規模の経済が機能し、大幅な低価格が実現する。大手から中小零細メーカーがひしめく日本ではそうはいかない。欧米の流通構造と正反対の多品種少量販売が基本の日本では、多彩なメーカーとの取引に柔軟な調達、支払い機能を持つ卸の存在が欠かせない。流通外資はそこを見誤った

 1990年代から出店規制が緩和され、流通外資鳴り物入りで日本進出を果たした。規制というハードルは超えたが、あとに待ち構えていたのは商習慣の壁だった。

 外資系スーパーが攻めあぐねた理由にはさらに、地域に根ざした食文化を理解できなかったという壁もあった。

 ウォルマート西友は効率化を目指し、地域法人も含めた取引先を集約して中央集権型の仕入れに移った。だが醤油(しょうゆ)や味噌など、地域に密着した品ぞろえが弱くなり、14年には全店の1割近くの30店を閉鎖すると発表した。

 外資系スーパーは一時期増えたが、皮肉にも日本の流通業に恩恵をもたらした。低価格を前面に打ち出す網の目の粗い欧米の販売スタイルよりも、消費者をよく知るきめ細かな日本の小売業に軍配が上がった。

 食品ディスカウントストアを03年に約330億円で買収し、外資系スーパーとして最も遅く進出した英テスコ。ウォルマートの日本でのもたつきを知ってか、配当収入を目当てに物言わぬ大株主として日本事業を見守った。だが、店舗投資を怠り競争力が落ちて、業績が次第に悪化。12年にイオンに譲渡したときの価格は1円だった。

 流通外資の関係者は日本市場の特殊性をよく口にする。「消費者がペットフードまでブランド品を買い求めるのには驚いた」と語って日本を去った首脳もいた。流通構造、地域特性や食文化を甘く見た拙速な戦略の帰結だ。グローバル企業の流通外資が他国で成功した自信があり、日本ではその成功の罠(わな)に陥った。」

西友 甘く見た日本の商慣習 :日本経済新聞

 これは非常に興味深い話で、日本の消費者の意識が高いためにマーケットの構造が異質であったということです。安かろう悪かろうの商品を日本人は好まず、少し高くてもブランド品を買うのです。それに応じて多品種少量生産に対応するには卸業者が必要になります。海外の小売り大手は卸業者を抜かして価格の安さだけを追求するために常に失敗し続けているというわけです。

 これを消費者の立場から考えてみれば、いつでもほしいブランドが手に入る日本のスーパーの方が、得体の知れないB級品しかおいていない外資系スーパーよりも、足が向きやすいということなのでしょう。ここで重要なのは「いつでもほしいブランド」というものです。ブランドが背負っているのは、ある種の信用であり、その信用や地域の慣習に裏打ちされた商品を日本人が買うのです。いわば、われわれ日本人は信用を食べ、信用を着ているともいえるのです。衣服の方はさすがに、デパートが通販にとってかわられていますが、日常的な食品などは、まだまだ日本式のスーパーの方に分があるといえます。

 見方を変えて、海外に日本式のスーパーの進出可能性はあるのでしょうか。流通経路の改革が必要ですが、アリだろうと思います。消費者の立場に立てば、自分の好きなブランドの商品がいつでも手に入るというのはありがたいことです。つまり、小売りはサービス業であり、たとえローカルであってもマーケットを組織する試みにほかなりません。うまく組織できれば、日本式のスーパーが世界を席巻することになるかもしれません。

 その一つの兆候が無印良品の海外での成功にあると思えるのです。単に安い商品を提供するのではなくて、消費者の目線に立って、消費者への愛情から、最適な商品を提供し、マーケットを組織するというのはなかなかチャレンジングな課題でしょう。ただ、やってみる価値はあるとは思います。

 ただ、アマゾンが提供する多品種には勝てないという気もします。むしろ、アマゾンが快進撃を続ける背景には、多品種の商品をそろえることができたことにあるともいえるでしょう。

 ただ日常的に消費する商品をタイミングよく提供することは、現段階では困難かもしれません。また、しょうゆを一本だけアマゾンで注文するというのもめんどくさいものです。

 アマゾンが配達経路の問題を解消し、ローカライズに乗り出したとき、日本のスーパーは危機に陥るかもしれません。