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近づく第二次朝鮮戦争(4)

ミリオタJK妹! 異世界の戦争に巻き込まれた兄妹は軍事知識チートで無双します (GA文庫)

 Chalmers教授の「Preparing for War in Korea」の続きです。
 ホワイトハウスは、北朝鮮が設定されていたペンス副大統領との会談を直前にキャンセルしたことを伝えています。ペンス副大統領は最後まで妹に振り回されました。そして、「北朝鮮は副大統領がメッセージを和らげることを期待して会合をちらつかせた。その通りになっていれば、五輪期間中に世界の舞台を北朝鮮プロパガンダに譲ることになっていた」と指摘しています。でもこれはうまくいかなかった言い訳のようにも聞こえます。アメリカとしては今回でけりをつけたかったのでしょう。ペンスは交渉は行う予定だったのですから、北朝鮮への先制攻撃の可能性はなくなっていません。今回は北朝鮮の戦略の正しさが分析されています。

  「抑止は働くのか
 北朝鮮はすでに核を保有しています。そして、米本土を長距離ミサイルで攻撃する能力の獲得に向けて着実に進歩しているのです。北朝鮮をこの路線から逸脱させるために、関与と見返り、それに孤立化と制裁を含む数度にわたる努力は、ことごとく失敗しました。軍事的な先制攻撃がなければ、2020年代初頭にも、北朝鮮はアメリカ本土やその主要都市に対して核攻撃を行う能力を身につける可能性が高くなっています。
 アメリカが、自国民を虐待する指導者によって率いられ、反米的な外交政策を掲げる国家と、核兵器の取得を巡って対立するのは、これが初めてのことではありません。冷戦の期間中にこれに相当したのは、ソビエト連邦と中国でした。それでも、結局は(先制攻撃に真剣な考慮が払われた後の中国に関して)、アメリカはソビエト連邦と中国を核保有国として認める以外他に選択肢がないことを渋々認めたのです。今日では、ロシアと中国は核攻撃でアメリカを恫喝できる2か国となっています。この現実はアメリカにとって心地よいものではありません。しかし、この現実を甘受するようになったのです。第三の敵対勢力が加わることにによる相互抑止のほうが、第二次朝鮮戦争の帰結よりも望ましいとアメリカは判断するかもしれません。
 後退戦略の中心的要素である抑止の場合は明らかでしょう。北朝鮮の体制は、自国民の取り扱いに際して残酷で不道徳的です。共産主義体制であれ、資本主義体制であれ、ほかの体制であれば、国民の生活水準を向上させ急速な成長を享受してきました。しかし、北朝鮮はこの地域の標準からも大きく出遅れてきました。最近の韓国銀行の評価によれば、2015年の洪水の後の2016年には、少し盛り返したとはいえ、北朝鮮の一人当たりの国内総生産GDP)は、韓国の2%にしかなりません。北朝鮮は年間1340ドルであるのに対し、韓国では26100ドルに相当するのです。北朝鮮が自国の防衛と安全保障の計画にその大部分を費やしていることを考慮すれば、この比較ですら過度に北朝鮮に対して好意的といえそうです。
 それでも、国民の利益という点からではなく、国家の利益という観点から見れば、北朝鮮戦略核能力を保持するという関与が合理的なものであることは、ほとんど間違いがありません。北朝鮮は、相当の経済的政治的不利益があったにもかかわらず、1980年代から一貫して、核を所持しようとしてきました。なぜなら、北朝鮮は、核があれば、金一族を中心に構築された北朝鮮の体制を外的な脅威から防衛する助けになると信じてきたためです。そして、北朝鮮は、朝鮮戦争で停戦協定が締結されて以来、そうした脅威に直面してきたと信じているのです。北朝鮮は嫌われており、友人もおらず、共産主義国の盟主でもある中国までもが、より御しやすい指導者に交代させようとしています。北朝鮮がそんな世界に生きていると信じているのは、本当にその通りなのです。
 さらに、北朝鮮イラクリビアの指導者の運命のこともよく知っていますし、しばしば言及してもいます。この両国の指導者が核開発計画を断念した後で、アメリカ主導の侵略を招き、英国もそこに加わりました。その結果、米国の支援の下でこれらの国の指導者は殺されたのです。もし信頼出来る報復用の核を所持していれば、サダム・フセインもムアンマル・カダフィも攻撃されなかっただろうと、北朝鮮の公式声明も主張しています。北朝鮮は,自国で核抑止力を産み出すことで,そうした運命から逃れよう決意しているのです。
 こうした抑止という原則に加えて、北朝鮮プロパガンダは、自国民に対して強いナショナリズムをかき立てています。アメリカは、1950年に北朝鮮を破壊しようとして失敗し、その機会を再び窺っていると北朝鮮は考えています。北朝鮮は、アメリカという侵略的な超大国に対して対抗する意思を核開発計画を利用して示しているのです。北朝鮮の核開発計画への関与は、一つには、相対的な通常戦力での弱さを自覚しているためでもあります。逼迫した財政事情を考慮すれば、軍全体に資源を振り分けることを制限したいという意欲があるのです。」

[コメント]
「国民の利益という点からではなく、国家の利益という観点から見れば、北朝鮮戦略核能力を保持するという関与が合理的」という指摘はまさにその通りでしょう。これまでの核抑止がことごとく失敗してきたことが指摘されています。
 その一方で、北朝鮮が核に固執する理由が詳細に分析されています。イラクフセインリビアカダフィのようになりたくない、アメリカには反抗したい、そして、軍全体に資源を配分したくない(笑)。これが核にこだわる理由とされています。
 次回は、北朝鮮が核を持てばという話です。