誰がやっても戦争になる 尖閣から始まる世界大戦
ニューズウィークもたまには良い記事を掲載しています。たまにはというと失礼でしょうかね。
ニューズウィークのマイケル・ペックの「尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮想「東シナ海戦争」の結末」は出色の出来ですね。
尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮想「東シナ海戦争」の結末 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
この記事は「ワシントンのシンクタンク、新アメリカ安全保障センター(CNAS)が実施した机上演習」の模様を伝えています。詳しくは元の記事をご覧になってください。
そのシナリオは以下のようなものでした。
1.30年、東シナ海の尖閣諸島の魚釣島に中国軍兵士50人が上陸。中国政府は周囲約80キロ範囲内を自国の排他的経済水域(EEZ)に設定すると宣言し、本土の弾道ミサイルの傘の下、水上艦や潜水艦、戦闘機、ドローン(無人機)の一団を配置する。
2.レッドチーム(中国)もブルーチーム(日米)も主張を譲らず、レッドが「引き下がれ」と強硬なメッセージを発信する一方、ブルーは敵を撤退に追い込もうとする。
3.ブルーに最初に問われたのは、日本の艦隊がEEZに入った場合に想定される、中国の対艦ミサイル一斉射撃への対策だ。イージス防空システムを搭載した米軍イージス艦が日本艦隊を護衛すべきか、それとも米軍はサイバー戦を展開して中国側の指揮命令系統を妨害するべきか。一般参加者のうち6割の賛成を得たのが後者だ。
4.中国側も呼応する。日本艦隊へのミサイル攻撃か、サイバー戦による日本の命令系統妨害かとの問いに、一般参加者の54%が後者を選択。日米の多国籍チームは連絡網への依存度がより大きいため、サイバー攻撃合戦でより大きな被害を受けるのは日米だとの裁定が下された。
5.EEZに入った日本の駆逐艦の多くを、中国戦艦が巡航ミサイル攻撃で沈める。報復として、日本の駆逐艦は中国の潜水艦1隻を破壊する。
6.日本側と共に、米軍のステルス戦闘機が尖閣諸島付近を飛行する中国の航空機を破壊。ターゲットの1つが、「空母キラー」ASBM(対艦弾道ミサイル)に標的データを送るドローンだ。
7.大損害を被った中国は米軍空母2隻をミサイル攻撃し、1隻を大破させる。決定的行動に出たのは終盤だ。ゲーム開始時から沖縄には日米の航空機が多数配備されていた。誘惑に負けた中国はミサイル攻撃で沖縄の基地の滑走路を壊滅させ、敵の航空戦力に深刻なダメージを与えた。
このシナリオにはいくつかおかしなところがあります。中国の対艦ミサイル艦に対する日本の潜水艦からの攻撃が想定されていない点です。ミサイルを発射した段階で、これらの艦船を沈めてしまえば、全く問題はないはずです。また尖閣諸島沿岸になぜ機雷を配備しないのでしょうか。それも理解に困るところです。こうしてみるとまだまだ日本の方に手札があるように思うのは気のせいでしょうか。そもそも、中郷側が弾道ミサイルで空母を沈めることが出来るのでしょうか。早期警戒機も今だ開発途上であるのに、アメリカや日本が持つような早期警戒機を短期間に完成できるとは到底思えないのです。
問題は「空母を所有したこと」に有頂天になっている中国の方にあります。空母を所有すればその護衛船団が必要になります。そして奇襲を避けるために早期警戒機、それに信頼に足る潜水艦隊が必要なのです。そうした準備が不完全なまま空母を所有していても、アフリカの国相手ならばまだしも、日本や米国相手に戦えるはずがないのです。軍の強さは兵器の強さよりもそれを運用する人間の側の優劣が重要になります。精神の強靱さは、さすがの中国もコピーが出来ないので、これで勝負は決まるということになります。それでも量子コンピューターを搭載した無人の武器が主流になれば話も変わるのでしょうが、まだ時代はそこまで来ていないように思います。