必死で同志を募る習近平
「けものはいるけどのけものはいない」という歌の歌詞がありましたね。
辛亥革命以降の中国に於いて各地に乱立する軍閥のなかで、のし上がっていくためには海外との関係が必須でした。国民党にしても南部でくすぶっているところにソビエトとの協力関係を利用したり、アメリカや英国を抱き込んだりと、必死に同盟を求めてきたのです。中国共産党は、毛沢東がソビエトとの関係を断絶することで、他国への依存という中国政治における悪しき伝統を断ち切りました。
対外的な関係が復活するのは鄧小平の改革開放政策の採用と同時に、冷戦を崩壊させるためにアメリカとの手を結んだことで、対外関係をテコに力を付けるという方針に再び転換しました。その際にアメリカや日本、それにヨーロッパ諸国から利用出来る技術はどんどん中国に導入し、十分に力を付ければ、アメリカの覇権を突き崩そうと考えたのです。しかし、習近平の時代になって、その野心があまりに露骨になったので、アメリカは中国を踏みつぶす決定を下したのです。IT分野から中国を追放したのは、この分野が社会の欠かすことのできないインフラになる事が明らかになったためです。
実は中国共産党の力の根源はこうした安定した対外関係にあったのです。習近平が日本訪問に固執したのは、国賓待遇であれば、天皇陛下に面会することが出来るためです。つまり、日本の天皇陛下にお目通りしたと言う事実が、中国では権力の正当性の一部を形作るのです。もう一つ例を挙げましょうか。人民元の信用を支えているのは中国が保有している米国債にあることは誰も否定出来ないでしょう。経済でも、政治でも、他国との安定した関係がなければ、中国は存在出来ないのです。それは国民党以来の歴史からも明らかです。現代中国史に於いて、中国との関係を断絶するという局面は初めてなのです。ですから、習近平を中心とする中国共産党常任委員会は、内心では非常に焦っているのです。そういう文脈を踏まえて今回の楊潔篪の訪韓のニュースを見れば、重要性がよくわかるのではないでしょうか。
「 中国外交担当トップの楊潔篪共産党政治局員は22日、訪問先の韓国釜山で、韓国大統領府の徐薫(ソ・フン)国家安保室長と会談した。新型コロナウイルス感染症対応での一層の協力を確認するとともに、中国の習近平国家主席の訪韓を、感染状況が安定し、条件が整い次第、早期に実現させることで合意した。大統領府が発表した。感染の拡大以降、中国要人の訪韓は初めて。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は当初、習氏訪韓の今年上半期の実現を見込んでいたが、感染の拡大で先送りとなり、その後、年内の実現を目指してきた。韓国でも感染が再拡大しており、今回も時期を詰め切れなかったもようだ。具体的な時期については引き続き協議していくとしている。
大統領府によると、楊氏側は「韓国は習主席が優先的に訪問する国だ」と確認した。新型コロナの中でも交流を拡大させることや文政権が最重視する北朝鮮問題での協力も約束した。
米中関係をめぐる懸案に関しても中国の立場を説明したという。貿易摩擦に加え、香港や南シナ海問題で米中対立が激化する中、韓国を中国サイドに取り込む狙いがあるとみられる。
韓国が今年、議長国を担う日中韓首脳会談については、年内開催の必要性を協議し、李克強首相の訪韓の重要性を確認することにとどまった。いわゆる徴用工判決の解決策で進展がなく、日本との調整も進んでいない。会談は昼食会を含め、計6時間弱に及んだ。」
文政権を中国サイドに引き寄せか 外交トップ21日から訪韓 - 産経ニュース
だれもがのけ者に使用としている習近平を訪韓させると言うのが、相も変わらず韓国の外交音痴な所です。しかし、こんな頼りない相手に頼まなければならないほど、中国の孤立は極まっていると言うべきでしょう。
面子の問題をとりあえず無視すれば、差し当たって「サムスンに半導体を手伝ってもらえないか」というのが、中国の要求でしょう。しかし、それをアメリカが許すかどうか。本格的に米韓断交にまで進みかねないデリケートな問題でしょう。下手すれば、韓国という国家が消滅する可能性すらあります。