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トランプ再選を決定的にした中東外交革命

トランプは再選する! 日本とアメリカの未来

 今回のイスラエルUAEの国交樹立は、トランプ大統領の中東改造計画の大きな転換点と言えます。これでトランプ再選の芽が出てきたような気もします。

  率直に言ってトランプ大統領の再選はもうだめかもと思っていたのですがこのニュースで目が覚めました。従来中東に於いて、イスラエルは中東諸国のほとんどにとって明確な敵でした。何度も中東戦争が行われたのもイスラエルを巡る戦いであったと言っても誤りではありません。これは1977年のエジプトのサダト大統領のイスラエル訪問に次ぐ事件です。当時のエジプトはアメリカとよりを戻したかったので、あえてイスラエルに戦争を仕掛け限定的な勝利を収めることでイスラエルとの間で平和条約を締結しました。そのサダト大統領も81年には暗殺されるのですが。ただ、エジプトは、意外なことに中東の他の諸国とは違い、基本的に軍部独裁による世俗政権なのです。つまり、イスラム教を信奉する国民が多くても、イスラム教の国家ではないのです。だからこそイスラエルと結ぶことが出来たとも言えます。しかし、UAEはれっきとしたイスラム国家なのですから、これは中東の外交革命と呼んでも差し支えがない事態です。

「 トランプ米大統領は13日、イスラエルアラブ首長国連邦UAE)が国交正常化で合意したと発表した。トランプ氏の仲介で、イスラエルのネタニヤフ首相、UAEアブダビ首長国ムハンマド皇太子の3者が同日電話会談し、合意に達した。トランプ氏はツイッターで「大きな進展があった! 歴史的な和平合意だ」と強調した。
 アラブ諸国はこれまで、パレスチナ国家樹立と引き換えに、イスラエルと国交正常化する案を提示していた。イスラエルパレスチナの和平交渉が進展しない中での国交正常化の動きは、交渉停滞を固定化する可能性がある。湾岸諸国がパレスチナ問題よりも、対イランでのイスラエルとの協力を重視する姿勢が鮮明になった。
 3カ国の共同声明によると、今回の合意を受けてイスラエルは占領地ヨルダン川西岸の一部併合を凍結イスラエルUAEは数週間以内に、投資や直行便、大使館開設などに関する合意に署名する。トランプ氏は記者会見で、調印式は「おそらく3週間」以内にホワイトハウスで行われると語った。11月の米大統領選での再選に向け、トランプ氏が外交実績として仲介を強調する狙いがある。」

イスラエル、UAE国交正常化=トランプ氏「歴史的合意」―対イランで協力重視 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 これがオクトーバーサプライズだったのですね。ホワイトハウスイスラエルUAEの合意の署名が行われるとすると、親イスラエルイスラエルロビーは全力でトランプを支えなければならなくなります。

 今回のイスラエルUAEの合意の意味は、中東におけるイラン包囲網の第一歩が踏み出されたという事です。この流れにはサウジアラビアも加わることでしょう。なぜサウジアラビアが最初に合意を締結しなかったかというと、サウジアラビア原理主義的なワッハーブ派の聖職者の力が強く、最初に言い出すのは非常に困難であったためです。

 これにたいして周辺諸国の反応が興味深いのです。

 第一に、イラン、これは激怒しています。恐らくイスラエルと国交を結ぶ国家に対して文字通り「サタンと手を組みやがった」と思っているに違いありません。自国が包囲されるのですから、当然のことでしょう。

 第二に、トルコです。トルコも今回の合意に反対しています。エルドアン大統領が世俗国家トルコのイスラム化を推進しているので、これは当然のことでしょう。トルコはイスラム世界での発言力を高めるため、パレスチナ支持を強く訴えていたためです。ですから、エルドアン大統領はオスマン帝国の再興を狙っていると言えば良いのでしょうか。

 第三に、バーレーンオマーンの動きです。湾岸のバーレーンオマーンも正常化を歓迎すると表明しました。バーレーンは隣国サウジアラビアの影響力が強いが、アラブ連盟による対イスラエル関係遮断(ボイコット)を批判していました。オマーンは2018年、イスラエルのネタニヤフ首相の訪問を受け入れています。ですから、中東諸国と言ってもイスラエルと国交を結びたいと考えていた国も多かったのです。

 ここに加わるのがヨルダンです。200万人超のパレスチナ難民を抱えるヨルダンのサファディ外相は13日「イスラエルヨルダン川西岸併合をやめるのなら地域の和平につながるだろう」とコメントしています。

詳しくは日経新聞のこの記事をご覧ください。

トルコやイラン猛反発 イスラエル・UAE国交樹立で (写真=ロイター) :日本経済新聞

 ヨルダンと言えば、何が思い浮かびますか?そうです。ヨルダン港の大爆発ですね。事件の真相は不明ですが、人為的に引き起こされたという噂は絶えません。

 もうすこし補助線を引いておけば、ヨルダンは一帯一路の基軸国です。イランも中国と深い関係を結びつつあります。

「 中国とイランが25年に及ぶ経済・安全保障のパートナーシップ協定を結ぶ計画を進めている。ニューヨーク・タイムズ(電子版)など米メディアが報じた。中国はイランを巨大経済圏構想「一帯一路」における重要国と位置付ける半面、イランにすれば中国との関係強化は技術の導入や経済の好転につながる。対米関係が悪化している両国の連携強化の動きに、米政府は神経をとがらせている。
同紙は11日、中国とイランの協定案を入手したとして内容を伝えた。中国はイラン国内で空港や高速鉄道、地下鉄の建設に投資し、第5世代(5G)移動通信システムのインフラも構築する。兵器開発や情報共有など軍事面でも関係を強化する。両国軍が昨年末にオマーン湾やインド洋で行った海上演習にはロシア軍も加わり、反米協調を演出した。
 イラン高官らは同紙に、協定により中国が25年間にわたりイラン産石油を安価で購入でき、イランには同じ期間に中国から総額4000億ドル(約43兆円)相当の投資が流入すると述べた。
 トランプ米政権はイラン核合意からの離脱に伴って原油の全面禁輸を含む対イラン経済制裁を再開しており、中国が原油輸入に踏み切れば対立が深まるのは確実だ。米国務省報道官は「イランを支援した中国企業には代償を科す」と述べ、協定締結の動きを牽制(けんせい)した。
 また、協定を通じて中国がイランの戦略的要衝、ホルムズ海峡に近いジャスク港などの港湾整備に投資する可能性も指摘される。新型コロナウイルスの感染拡大前、世界で海上輸送される原油の3割が通過していた同海峡は米・イランの緊張の最前線だ。中国が足場を築けば争いが複雑化する恐れがある。
 協定は2016年、イランを訪れた中国の習近平国家主席が提案したが、中国側は締結するか態度を鮮明にしていない。」

中国とイランが大規模な経済安保協定を計画 - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

 これで中東における反イランと極東における反中国が見事にリンクすることになりました。これでトランプ大統領再選が決まったも同然ですよ。