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トヨタの悲劇

トヨタ物語

 そろそろ日本企業も本格的に中国から足抜けするべき時期だと思います。それが出来ないのはなぜなのでしょうか。

 理由は簡単で、現在トヨタの車が中国で売れるためです。

 「トヨタ自動車は6月4日、中国での5月の新車販売台数が前年同月比20.1%増の16万6300台だったと発表した。5月の販売はマツダも3割増で、日産自動車も1割弱伸びた。中国の新車市場は2~3月に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大きく落ち込んだ。ただ中国政府の消費刺激策などを受け需要は持ち直しており、日系大手の販売回復も鮮明になっている。
 トヨタ自動車の5月の中国新車販売は、「RAV4」など主力車が好調で前年同月比2割伸びた。
 5月の販売はトヨタが2カ月連続で前年実績を上回った。主力車種のうち「レビン」が前年同月比8割増、「RAV4」が7割増と好調で、高級車ブランド「レクサス」も3割強伸びた。
 マツダも31.6%増の2万2886台で、2カ月連続でプラスになった。5月上旬の労働節(メーデー)連休期間に販売促進を強化しアクセラ」や「CX-4」などの主力車種が好調だった。」

5月の中国新車販売、トヨタ2割増 日系の回復鮮明 :日本経済新聞

 しかし、車が売れるならば、それなりの代償も必要になります。

トヨタ自動車は2020年6月5日、商用車向け燃料電池(FC)システムの研究開発会社を中国自動車メーカーらと設立すると発表した。商用車を手掛ける中国の完成車メーカーと、FCシステムの開発経験や実績を持つトヨタや北京億華通科技が協力することで、中国の規制に適合した競争力の高いFCシステムを開発する。

 新会社は2020年中に中国・北京市内に1万9000m2の拠点を設ける。総投資額は50億1900万円で、従業員数は2023年をめどに段階的に100人まで増やす。出資比率はトヨタが65%、北京億華通科技が15%、中国第一汽車東風汽車、広州汽車、北京汽車が5%ずつとなる。

 新会社では、6社が協議して商品を企画し、中国で求められる性能を満たすFCスタックなどのコンポーネントやFCシステムの制御、車両の搭載まで一連の開発を行う。製品化までのリードタイムを大幅に短縮し、中国の商用車市場で燃料電池車(FCV)の普及を加速させる。動力性能や燃費、耐久性、コスト競争力を満たすコンポーネントを開発する。」

トヨタが中国自動車メーカーと合弁、商用車向け燃料電池を共同開発 - MONOist(モノイスト)

 米中の対立が本格化しているのにどうしたことでしょうか。結局目先の利益を確保するために、虎の子の燃料電池技術を中国に公開し、恐らく中国はそれを少しひねって特許を取りまくるのでしょう。確かに従業員の雇用のことを考えれば、これも致し方ないのかも知れません。しかし、中国のファーウェイ社が袋だたきに遭っているところに、中国側に貴重な技術を公開してしまうのはどうなんでしょうか。

 思えば、日本経済の衰退は、国際政治の無視による部分が大きかったのだと思います。新自由主義なんてアメリカの日本の利権を収奪する際の口実に過ぎなかったはずです。郵政民営化などがその典型でしょう。しかし、既に米中の対立が始まっているのに、少し前の常識を前提に経営を行うのであれば、大きな悲劇が訪れることでしょう。これでは時価総額でテスラに負けるわけです。残念ですね。