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トランプ再選を阻むサウスファクター

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 テキサス州のようなアメリカのサンベルト地帯といえば以前は共和党の基盤でしたが、それが崩れ始めています。

 日本経済新聞の秋田浩之記者の記事を紹介します。
テキサス州は鉄板の「保守王国」であり、1980年以来、共和党は大統領選で一度も負けたことがない。親子で大統領を歴任したブッシュ家のお膝元でもある。ところが、いま現地では共和党離れが起きつつあるようなのだ。自民党でいえば、金城湯池の富山、島根が揺らぐにひとしい。

テキサスはもはや、保守王国ではない」。現地で財界や政界関係者らに会うと、支持政党を問わず、あちこちでこんな声を聞く。実際、大都市では共和党民主党の支持率が逆転しており、ダラス、オースティンの市長はいずれも民主党だ。

 こうした潮流を反映するように、大統領選や上院選では、共和党テキサス州で楽勝できなくなってきている。16年の大統領選では、トランプ氏が同州を押さえたものの、ヒラリー・クリントン候補との差はわずか9ポイントだった。2000年以降、最低の得票率だ。

 18年の上院選では、共和党の現職が民主党の新星、ベト・オルーク下院議員に散々苦しめられ、落選寸前まで追い詰められたことは記憶に新しい。

 「トランプ氏の再選は安泰ではない」。テキサス州の地元議員らは危機感を募らせ、こんな警告をワシントンの共和党首脳部に伝えているという。

 テキサス州で起きている異変の理由は、おおまかにいって2つある。1つは人口動態の変化だ。民主党支持に傾きがちな移民、とりわけヒスパニック系の人口がテキサスでは急増しており、白人は42%まで下がった。

 さらに、生活費が高騰しているカリフォルニア州シリコンバレーやニューヨーク、ロサンゼルスなどから、民主党支持層のIT企業や起業家が、続々とテキサスに拠点を移している。税金や住居費が安いためで、サンアントニオ市はいま、サイバー・セキュリティー会社の集積地になった。

 第2が、トランプ氏の自殺点だ。移民を敵視する彼の政策が、ヒスパニック系の人々の怒りを買っている。トランプ政権はさらに、移民問題を理由にメキシコに制裁関税をかけようともした。いったん見送ったが、実行されれば、メキシコと深く結びついたテキサスは、経済的にも大きな打撃を受けてしまう。

 「自分は生涯、共和党員としてやってきたが、トランプ氏の貿易保護主義は許せない。こんどは民主党候補に投票するかもしれない」。地元の共和党員からは、こんな怒りも耳にした。
 もし、テキサス州で敗れたら、トランプ氏の再選は危うい。大統領選は州ごとに投票し、各州に割り振られた票のうち、270以上を得た候補が当選する。テキサス州は38票を与えられた2番目の大票田であり、ここを落としたら勝利は極めて厳しくなる。
 南部の保守王国の異変は、テキサス州だけではない共和党の牙城であるアリゾナジョージアでも似たような「離反の兆し」がうかがえる。アリゾナでは18年、民主党が24年ぶりに上院の議席を得た。同年のジョージア知事選も大接戦となり、民主党共和党に1.4ポイント差まで迫った。
 ニューメキシコネバダ各州はすでに保守から中立、さらには民主党寄りに傾きつつある。ヒスパニック系を中心とする人口の増加が大きな理由とみられる。
 移民規制や保護貿易策は、白人の労働者を中心としたトランプ支持者には受けがいい。トランプ氏は接戦州である中西部の白人票を得るため、今後もそれらの政策を振りかざしていくだろう。
 だが、それがテキサスなど南部の離反を招けば、いくら中西部を押さえても、勝利の女神は遠のいてしまう。選挙戦を占ううえで、無風とみられてきた南部の動向に、世界も注目すべきだろう。」

米保守王国に異状あり トランプ氏再選に影 :日本経済新聞

 そもそもトランプ大統領が不法移民を厳しく取り締まるのかといえば、南部から流入するヒスパニックを無制限に受け入れる限り、英語を話す白人の人口比はますます減少し、スペイン語を話す、若しくはスペイン語しか話せない不法移民の量が限界を超えてしまうと考えているためです。このままでは国柄がおかしくなるという危機意識が不法難民の厳格な処理に繋がっています。

 ですから、メキシコとの間に壁を設けるというのもその一環で、一般のアメリカ国民が考えるよりも、トランプ大統領の危機感の方が根深いと言えるのです。しかし、不法移民を批判すればするほど、かつては不法移民であったヒスパニックの有権者を離反させる結果に終わっています。おそらくは、フロリダも含むのでしょうが、米国南部の初秋の動向には一層注意を払っておくべきでしょう。