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逆転しつつある米中の技術格差

時価総額アジア1位 テンセント帝国を築いた男 馬化騰 (CHINESE DREAM)

 少なくとも現段階では、米中の格差は明白ですが、これがあと10年たてばわかりません。米中対立でびっくりしている人も多いですが、むしろ遅すぎたのかもしれません。

 「 これまで西側諸国の企業が中国企業を買収する背景には3つの理由があった。第1は中国での市場シェアの獲得、第2は中国における販売網の拡充、そして第3はあまり技術力を必要としないローテク分野の生産業者を調達するためだった。
 しかし今日、外国企業にとって中国のスタートアップ企業を買収することは、競合他社にない強みを入手することにつながる。買収対象の企業は研究チームや特許、顧客を既に抱えているうえに、中国政府から潤沢な補助金を受け取っている場合もある。一方、中国企業の創業者にとっては、中国国内での資金調達が厳しくなっているだけに買収提案は願ってもない展開となる
 欧米企業が入手しようと考えている技術は、他の国からは入手できない場合もある。自動車の内装で世界大手の仏フォルシアは17年、車と人がコミュニケーションするためのヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)開発の江西好幇手電子科技(本社は中国南東部の江西省)を買収した。フォルシアは江西好幇手電子を見いだすまで1年間、世界各国で同様の技術を探し求めていたため、中国で同社を発見した時、「フォルシアは感嘆の声を上げた」と内情に詳しい情報筋は言う。フォルシアは江西好幇手電子の技術に価値を見いだしたからこそ、買収の提案をしたのだった。
 外国企業が中国企業に関心を持つのは、人工知能(AI)から医療技術、クラウドコンピューティング、さらには半導体の分野も含む半導体やソフトウエアの企業の買収には、「米国も欧州も多大な関心を寄せている」と米国の技術コンサルティング会社、ティリアス・リサーチのジム・マクレガー氏は指摘する。
 そうした直近の典型例が米半導体大手ザイリンクスが昨年7月、北京に本社を置く機械学習スタートアップのディーファイ・テック(深鑑科技、編集注、中国の人工知能関連の3大ユニコーンの一つとされる)を買収し、大きな関心を集めた件だ。買収金額は公表していない。ザイリンクスの半導体向けにディーファイがソフトを開発した時はまだ創業間もなかったが、ディーファイは創業からわずか19カ月で総額3億ドル(約327億円)近くの資金を調達した。ザイリンクスは買収を公表した際、ディーファイの技術力を「業界の最先端を行く」と評した
 米調査会社ディーロジックによると、米IT企業が18年1月以降、中国IT企業に投資した金額は約10億ドルに上る。一方、中国IT企業による米IT企業への投資額は、その4倍近い38億ドルに達する。
 それでも米各社による中国企業への投資を見ると、その関心の高さが分かる。米アップルは16年、中国配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)に約10億ドルを出資した。同年、米マイクロソフトはアプリを通して音声コマンドに対応する「AI執事」の来也(ライイエ)に出資。インテルは18年にクラウドサービスプロバイダー、今年はレジなし店舗向けのソフトウエア開発など、複数の中国スタートアップ企業に出資した。
 米アルファベット(グーグルの親会社)も18年、中国のネット通販大手の京東集団(JDドットコム)に5億5000万ドル投じたが、その出資比率は1%にも満たない。AI向け半導体を手掛ける米エヌビディアは、自動運転技術では中国の最先端企業の一つとされる文遠知行(ウィー・ライド・エーアイ)と、中国と米国でトラックの自動運転を開発中の米スタートアップ、トゥーシンプルに出資した。
 手術ロボット世界最大手の米インテュイティブ・サージカルは昨年、中国のスタートアップ、ブロンカスの株を取得した。中国のベンチャーキャピタル(VC)、啓明創投のニサ・ロン氏の説明によると、これは高度な肺の手術の支援技術を入手するための出資だという。また、ロイター通信は15日、米フェイスブックが複数の中国企業への出資を検討していると報じた。」

中国ハイテク 魅せられる欧米(The Economist) (写真=ロイター) :日本経済新聞

 たしかに、現在では中国による出資額は、アメリカの出資額の4倍程度ですが、その出資先はすでにアメリカを凌駕しているようにも見えます。5Gだけではなく、AIやIoTの技術が進むにつれて、中国の存在感が増すことになります。これが米中対立の本当の原因であると考えられます。