スイスと北朝鮮
金正恩がスイスに留学していたのは有名な事実です。
その背景には、スイスが北朝鮮の経済開発をひっそりと支援しているという事実があります。ですから、今回のミサイル発射に関しても、次のような報道だけでは真実は見えてこないのです。
「 挑発の再開は、北朝鮮の窮状を映している。金正恩氏にとってハノイで開いた2回目の米朝首脳会談の失敗は、大きな誤算だった。閣僚級協議の難航を受けてトップダウンでの合意にいちるの望みを託したが、完全な非核化を求めるトランプ米大統領は「ディール」にはのらなかった。
焦った金正恩氏は4月12日の施政演説では3回目の首脳会談に意欲を示し、「年末までは米国の勇断を待つ」と交渉期限を設定した。4月25日に開いた初のロ朝首脳会談では、プーチン大統領に「自分の疑問を米国に伝えてほしい」とトランプ氏への伝言も託した。
ただ、3日の米ロ電話協議で、トランプ氏の反応はつれなかった。ホワイトハウスによると、トランプ氏は「ロシアが圧力を強化・継続することが重要だ」と述べ、制裁継続の方針を改めて強調した。
北朝鮮が米国に一方的な譲歩を求めるのは、内部事情の苦しさが背景にある。軍や軍需産業の関係者は米国が求める非核化に反発している。金正恩氏が4月の最高人民会議で、新首相や国務委員会の幹部に軍需部門に精通した人物を登用したことからも、軍部の掌握に躍起になっている姿勢がうかがわれる。
金正恩氏は市民に対しては「自力更生」のスローガンを掲げて、長引く経済制裁に耐え抜く構えを唱えてきた。しかし、国連世界食糧計画(WFP)などは3日、北朝鮮で数百万人に飢餓状態が迫っており、人口の4割に当たる1010万人が食料不足に直面していると明らかにした。
金正恩氏は4月17日にも「新型戦術誘導兵器」の発射実験を視察したと報じられたが、その意図や兵器の種類は明かさなかった。国際社会の反応を見極めつつ、挑発を含めた出方を慎重に計算しているとみられる。」
北朝鮮、窮余の挑発再び 道筋描けぬ対米協議 (写真=AP) :日本経済新聞
これだけを読めば、北朝鮮が追い込まれており、そのために短距離ミサイルを発射したと判断できます。ただ、本格的な軍事的衝突は望んでおらず、あくまでも要求を催促しているだけだと判断することも可能でしょう。
この記事にもあったWFPですが、次のような報道もみられます。
「【ジュネーブ=細川倫太郎】国連世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)は3日、北朝鮮で数百万人に飢餓状態が迫っていると発表した。猛暑や洪水の影響で2018年の農産物の収穫量が490万トンと、過去10年で最低水準となったためだ。すでに人口の約40%にあたる1010万人が食料不足に陥っており、国際的な支援が必要だと指摘した。
1月から国民1人当たりの食料配給量は1日300グラムと、以前より80グラム減った。食事は主にコメやジャガイモで、たんぱく質が不足している。十分な栄養が摂取できない世帯が増え、幼児や妊娠中の女性への影響が懸念されると報告した。
WFPは「多くのコミュニティーがとても脆弱な状態で、食料配給がさらに削減すると、飢餓の危機に陥る可能性がある」との懸念を表明した。」
北朝鮮、数百万人飢餓迫る 深刻な食料不足と国連機関 (写真=ロイター) :日本経済新聞
この記事の肝は、ジュネーブ発の報道であるという点です。つまり、スイスが背景となって、北朝鮮への支援を呼びかける構図になっているのです。これはスイスによる北朝鮮への隠れた支援であるとみなすことができます。
中長期的にみれば、今後ヨーロッパが衰退していくことは明らかです。とすると、ヨーロッパの大量の資本は、インド・アジア地域に投下されることになります。そのための一つの候補地が北朝鮮という見方をするべきでしょう。
北朝鮮の問題が解決され、今後経済発展を開始するとすれば、だれがそこで利益を得るのかが、背後に隠された暗闘なのです。アメリカ資本で行われるのか、スイスを中心とするヨーロッパ資本で行われるのか、あるいは、どちらもが邪魔な中国が北朝鮮を奪取するのか、現段階では、どの可能性も否定できません。