再評価が進むロシアのアフガン侵攻
失敗したはずのロシアのアフガン侵攻が再評価されるというのは奇妙な話です。
「 旧ソ連の当局は、自らが行ったアフガニスタン侵攻を非難していた。だが、30年後の今、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)政権下のロシアでは、アフガニスタン侵攻を肯定的に評価する人々が出てきている。
ソ連は、イスラム武装勢力の抵抗に遭っていたアフガニスタンの共産主義政権を支援するために同国に軍事侵攻したが、1989年2月15日の完全撤退まで戦闘は10年に及んだ。死者数はソ連軍の戦死者が1万4000人以上、アフガニスタン人が100万人以上に上った。
当時の最高指導者ミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)氏が命じたアフガニスタン撤退は、ソ連にとって屈辱的な敗退で、ソ連崩壊の一因ともなった。(中略)
アフガニスタン侵攻はソ連国民に著しく不評で、ゴルバチョフ氏が率いた「グラスノスチ(情報公開)」が最高潮に達していた1989年には、当局が正式に非難するに至った。だが、退役軍人の圧力により、アフガニスタン侵攻が今、再評価されている。
プーチン大統領は2015年、ソ連の指導者は「多くの過ちを犯したが、現実の脅威」に立ち向かおうとしたと発言し、侵攻を支持する姿勢を見せた。
この1月にはロシア議会の防衛委員会が、アフガニスタン侵攻を支持する決議草案を支持した。草案では、ソ連軍はアフガニスタン政府による「テロリストと過激派」との戦いを支援し、ソ連自身が直面していた安全保障上の脅威の拡大を阻止したと主張している。
だが、草案はいまだ本会議での審議に至っていない。これは、ロシアにとってトラウマとなっている出来事を正式に再検討することに、当局が二の足を踏んでいることを示している。(以下略)」
アフガニスタン侵攻を正当化するロシア、ソ連軍撤退から30年で変わる評価 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
プーチンの支持母体であるシロヴィキは、軍・情報機関関係者で構成されていますが、そうしたシロヴィキの圧力も、この再評価につながっているはずです。
しかし、それよりも問題なのは、そのタイミングでしょう。アメリカはタリバンと手打ちにしてアフガンから撤退しようとしています。その後釜としてロシアが名乗りを上げたとも見ることができます。
ロシアとアメリカの関係が硬直しつつある中で、アメリカが撤退した地域ではロシアが勢力を拡大するというわかりやすい力学が働いているとみるべきでしょう。