追い詰められる習近平
今回の米朝首脳会談はほぼ間違いなく実施するでしょう。その結果、北朝鮮の核廃棄、並びに、日本の拉致被害者の帰国が実現するはずです。この時点の推移に一番衝撃を受けているのが、実は中国です。習近平とインドのモディ首相がこの度首脳会談を開きました。
産経新聞からです。
「27日からのインドのモディ首相訪中で、中国の習近平国家主席は今回、北京ではなく湖北省武漢で会談する異例の形式を取った。中国側には、モディ氏も出席する6月の上海協力機構(SCO)首脳会議まで待てない事情があった。保護貿易色を強める米国への対抗軸構築を急がなければならないためだ。
中国外務省の陸慷報道官は24日の記者会見で、中印首脳会談について「この100年間なかったような世界情勢の変化を前に、長期的かつ戦略的な問題に関して突っ込んだ意見交換を行う」との見通しを示した。
今回の首脳会談は、中・印・ブータン国境付近で中印両軍が対峙(たいじ)するなど、ぎくしゃくした両国関係を修復し、それを内外にアピールする機会となる。王毅国務委員兼外相は中印の「新たなスタートライン」と位置付けている。
中国外務省は武漢で開催する理由について「両国が調整して決めた」としか説明しないが、「北京に呼ぶのでなく、習氏も出向く形にすればモディ氏も訪中しやすい」と外交筋はみる。
ただ当初、習氏とモディ氏の会談は6月に山東省で開かれるSCO首脳会議の際に行われる予定だった。前倒ししたのはなぜか。
関係改善を急いだ背景には、貿易問題で対立するトランプ米政権を牽制しなければならない中国側の事情があったとの見方が強い。中国紙、環球時報は社説で「人類の4割を占める中印の協力関係が強化されれば、世界にとって積極的な意義がある」と強調した。
習外交の要である王岐山国家副主席も23日、北京を訪問したスワラジ印外相との会談で、「(中印両首脳が)戦略的な共通認識を得るものと確信している」とし、「ともに多国間貿易体制を擁護することを期待している」と述べている。」
習近平氏、モディ印首相との会談は異例の形式 米牽制へ関係修復アピールなるか(1/2ページ) - 産経ニュース
この産経新聞の記事では、「貿易問題で対立するトランプ米政権を牽制」とされていますが、ブータンだけでなく、パキスタン周辺でもインドと中国の角逐は始まっていました。いつ戦闘が本格化してもおかしくない状況だったのです。それを白紙にしてでも、今回会談を開かなければならなかったというのは、これはなかなか深刻な事態といえます。
中国が折れたとみることができる証拠は、武漢という首脳会談の場所です。今回は、北京に呼びつける、もしくは自分がインドに赴くのでもなく、平等な立場で会談を行うというサインなのです。現在のところ、人民解放軍はインドの軍事力を見くびっています。ですから、今回の首脳会談の場所は、中国側の譲歩といえます。
習近平が最も警戒しているのは、このところのアメリカの攻勢が、単に貿易赤字解消が目的なのではないと気が付き始めたためでしょう。さしあたりは、北朝鮮がアメリカの勢力圏に入ることを懸念しているのです。鴨緑江を境にアメリカと対峙すると考えただけでも悪夢でしょう。
ですから、中国は、一旦インドとの関係を修復して、アメリカの外交攻勢に対応しなければならないのです。インドとの関係修復が成功したとしても、そのあとは自国の巨額の負債という経済問題を解決しなければなりません。大規模な戦争が始まらない限り、今後中国は国際社会に対してひたすら低姿勢を続けるほかはありません。
そこで問題は、習近平は3期15年間政権を維持できるのかという問題です。このような状態があと2年も続けば、大きな業績がない習近平は追い落とされることでしょう。