英米仏のシリア攻撃の全貌
本日4月14日に英米仏の三カ国はシリアに対してミサイル攻撃を行いました。その概要をまとめておきます。
攻撃の概要
米軍の攻撃は14日午前3時55分(日本時間同9時55分)に始まりました。東地中海に米海軍の駆逐艦少なくとも3隻が展開し、巡航ミサイル「トマホーク」約100発を発射しました。空爆には遠距離から精密攻撃が可能なB1戦略爆撃機が加わりました。
英軍はキプロス島の基地からトーネード戦闘機4機を発進させ、空中発射型の巡航ミサイル「ストームシャドー」で爆撃しました。フランス軍はフリゲート艦4隻とミラージュ戦闘機、ラファール戦闘機を出撃させました。
攻撃対象
首都ダマスカス近郊の研究施設や中部ホムスの化学兵器保管庫など3カ所が攻撃対象になりました。
今回の攻撃の目標
今回攻撃に踏み切ったのは、米欧主要国がシリアの後ろ盾であるロシアとイランとの対立先鋭化も覚悟の上で、化学兵器の使用や製造、拡散は「レッドライン(許容できない一線)」だとする立場を明確に打ち出す狙いがありました。
さらに、「イスラム国」の掃討作戦が最終局面を迎える中、アサド政権の温存を図る形でシリア内戦の戦後処理を目指すロシアやイランに対して強い警告を発するという目的もありました。
ロシアの対応
ロシアはヘメイミームとタルトスの基地周辺に移動式防空システム「パンツィリS1」や、S400を配備しています。さらに、最新鋭戦闘機スホイ35や爆撃機スホイ24など巡航ミサイルの発射能力を持つ空軍力も展開しています。ロシア国防省は、米英仏が今回発射した103発のミサイルのうち、71発をシリア軍が迎撃したと主張しています。英政府は作戦の「成功」を強調しているものの、実際の戦果は乏しい可能性も否定できません。
英仏が参加した理由
アサド政権への制裁に加え、その後ろ盾となってきたロシアをけん制する狙いがあると考えられます。
特に、ロシアは欧州各地の極右を資金支援し、EUの分断を図っています。さらに、サイバー攻撃を仕掛けるだけでなく、英国では元スパイを襲撃したとみられています。
ドイツが参加しなかった理由
EUの盟主ドイツは攻撃には参加しませんでした。これは連立与党を担う中道左派の社会民主党(SPD)に慎重論があるためです。左派の社旗民主党は人種差別的なトランプ大統領に不信感がある一方で、ロシアに同情的な議員が少なくありません。
また、今後、アサド政権を打倒するまで攻撃を継続するのかどうか明らかでないことも参加しなかった理由と考えられます。
攻撃が遅れたのはなぜか
トランプ氏は9日の閣議では「48時間以内」に重大な決定をすると述べていました。しかし、トランプ大統領やその日に就任したボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)とマティス国防長官は拙速な軍事行動には慎重だったと言われています。
特にマティス国防長官は、今回の攻撃でロシア軍に被害が出れば、米ロの本格的な紛争の可能性を危惧していました。また、アサド政権が化学兵器を使った「証拠」固めや、英国やフランスとの調整にも時間が掛かったためでした。
再攻撃はあるのか
トランプ大統領はツイッターで「作戦完了」と述べています。しかし、最終的に今回の攻撃が最後であることはまだ確認されていません。
北朝鮮問題への影響
北朝鮮に対しても、核・ミサイル開発を放棄しなければ実力行使も辞さないとする、米政権の「有言実行」ぶりを印象づける思惑があったと見られます。少なくとも,北朝鮮に対してであれ、巡航ミサイルなどによる攻撃は高まったと見るべきでしょう。