中国はアメリカ国債を売り出すのか
協の日経新聞は次のように伝えています。
「米国による中国への高関税の制裁措置を機に、中国が大量に持つ米国債が「交渉カード」に浮上する可能性が出ている。中国の崔天凱・駐米大使が23日、米経済テレビのインタビューで対抗措置として米国債購入を減らす可能性にからみ「あらゆる選択肢を検討している」と述べ、減額に含みを持たせた。
中国は今年1月末時点で1兆1700億ドル(約122兆円)の米国債を持ち、米国外では最大の保有者だ。市場では米中が貿易戦争に突入すれば、中国が「米国債カード」を持ち出し、米債券市場が不安定になる可能性が懸念されている。」
中国、米国債購入減額も 駐米大使「あらゆる選択肢」 :日本経済新聞
実は、今年の一月に次のようなエントリーを立てていました。
少なくとも現段階で、中国がアメリカ国債を売り始めるという展開はあまり可能性がないと思います。
その理由は、中国が一帯一路政策のために、資金不足に陥る可能性があるためです。
この目的は、表向きは、インフラ投資を中心とする経済協力にあるとされています。具体的には、2016年末現在、個別案件で判明している分だけで、インフラ案件は発電所などエネルギー関連が188社計1705億ドル、鉄道、港湾、道路など運輸関連が197件計約1740億ドル、商業施設・工業団地関連が76件計約1355億ドル、合計461件計約4800億ドルとなっています。資金の9割以上は国有銀行の商業ベース借款となっています。
投資先の国別比率はロシア17%、パキスタン15%、ベトナム13%、インド10%,インドネシア6%でこの五カ国で60%を越えています。
確かに中国はこの「一路一帯」構想において、対象国との「ウィンウィン(相互利益)」の精神を強調しています。習近平も「中国の経済発展の急行列車に便乗するのを歓迎する」という言い方をしています。しかし、その内実は中国の中国による中国のためのユーラシア開発計画であるというのがその真相です。言い換えれば、ひたすら中国という国家の利益のために最大限の成果が挙げられるように構想したのがこの「一帯一路」なのです。
この計画の背景には、中国のエネルギー事情があります。中国は、石油輸入の半分以上を中東に依存しています。中東情勢、海賊、テロ、及び南シナ海、東シナ海における領有権争いなど、供給地と輸送ルートに存在する不安定要因は、石油安定供給のリスクとなっています。不測の事態が生じれば、ホルムズ海峡―マラッカ海峡―南シナ海―東シナ海という海上ルートは、いつ遮断されてもおかしくありません。
そこで中国が目をつけたのが、ユーラシア大陸内陸部なのです。ロシア、中央アジアと中東には豊富なエネルギー資源が眠っています。しかも、未開発資源も多く、きなポテンシャルが存在します。しかしながら、中央アジアは、貿易・物流に弱点があり、経済発展のボトルネックとなっています。[建設されたパイプラインと物質輸送網は中央アジア諸国に連結し、貿易交流を促進することで、エネルギー源の多様化、安全な輸送路の確保といった問題を一気に解決するのが「一帯一路」構想だったのです。
そこで中国が目をつけたのが、ユーラシア大陸内陸部なのです。ロシア、中央アジアと中東には豊富なエネルギー資源が眠っています。しかも、未開発資源も多く、きなポテンシャルが存在します。しかしながら、中央アジアは、貿易・物流に弱点があり、経済発展のボトルネックとなっています。*[1]建設されたパイプラインと物質輸送網は中央アジア諸国に連結し、貿易交流を促進することで、エネルギー源の多様化、安全な輸送路の確保といった問題を一気に解決するのが「一帯一路」構想だったのです。
そこで中国が目をつけたのが、ユーラシア大陸内陸部なのです。ロシア、中央アジアと中東には豊富なエネルギー資源が眠っています。しかも、未開発資源も多く、きなポテンシャルが存在します。しかしながら、中央アジアは、貿易・物流に弱点があり、経済発展のボトルネックとなっています。建設されたパイプラインと物質輸送網は中央アジア諸国に連結し、貿易交流を促進することで、エネルギー源の多様化、安全な輸送路の確保といった問題を一気に解決するのが「一帯一路」構想だったのです。
また、国内の過剰生産能力の解消と内需不足を補うため、関連諸国との連携によるインフラ投資の拡大であるという側面も忘れてはなりません。過剰生産能力の処理を先送りにしても、需要が拡大するならば問題自体が消滅することになります。新興国に鉄道、発電所、通信などの資本財を輸出することで、これらの諸国からの安定的な資源輸入を図るという一石二鳥、いや一石三鳥以上の計画なのです。
とするならば、この一帯一路政策は、中国にとっても進めなければ国家の存立に関わる重要案件であることがわかるでしょう。しかし、こうした巨大プロジェクトには膨大な資金が必要になります。資金の9割以上は国有銀行の商業ベース借款と指摘しましたが、国有銀行にそれを支えるだけの体力が残っているのかも重要な論点でしょう。
したがって、さし当たっては、中国はアメリカの国債購入を減速させる,若しくは売却するという選択肢は採りにくいと言えます。あからさまにアメリカに敵対的な半野を見せれば、一帯一路計画が根底から覆るためです。
しかし、それと同時に、世界的な景気後退により、中国政府が大幅な外貨不足に見舞われる可能性も捨てきれません。その時は、売りが売りを呼ぶ恐怖の展開となるでしょう。ただ、現在はまだその段階にまでは至っていないと考えられます。
新たに対米外交の司令塔となった王岐山が、アメリカとどう交渉するのかを見守る必要があります。王岐山は元来は金融畑の人間なので、その意味でも、現段階での国債売却は考えにくいと考えられます。全ては、中国側の反応を見てから判断することになるでしょう。