北朝鮮にかける橋
まだ,首脳会談の内容も開催地も明らかになっていませんが、制裁解除を見越した動きが始まっています。
スターズアンドストライプス紙からです。
「北朝鮮は、韓国、中国、それにロシアと国境を接している。
ロシアとの国境は、北朝鮮の東北部にある豆満江の河口のわずか11マイルである。ここには、「友情の橋」という橋が1カ所だけ架かっている。この橋が開通したのは1959年で、鉄道の単線が敷設されている。朝鮮半島の緊張が若干和らいでいる今週、ロシアの使節団は北朝鮮に赴き、もう一つ橋を開通させることを提案した。
計画はまだ準備段階であるが、今回の計画は、ロシアと北朝鮮が、制裁と軍事的緊張が終了した段階で交易を検討していることを示している可能性がある。
ロシアと北朝鮮は、中国を迂回せずに,直接車両の往来を可能にする端を提案していた。先週の水曜日には、ロシアの極東開発省は、両国が新しい橋の建設に関して作業グループを創設した事を発表している。
「北朝鮮と中国の間には23カ所の自動車のチェックポイントがある。しかし、ロシアとの国境にはない」と北朝鮮の盧斗哲副総理は述べたとされる。「ロシアからの輸入の際に、ロシアとの国境が利用されず、中国を経由している。これはかなりの遠回りだ」
北朝鮮側は,既存の端の拡張を提案している。ロシアの使節団団長で極東開発相のアレクサンダー・ガルーシュカは、浮き橋による恒常的な橋の建設を提案している。
ロシアと北朝鮮のサミットは、NKnewsの注意を引いた。それによると、両国は新たな橋の建設で合意したとのことだ。中国・北朝鮮を中心とする東アジアのロシア外交の専門家であるアントニー・リンナは、北朝鮮に注目するメディアに、兵站若しくは技術的な問題のような、北朝鮮とロシアとの関係を悪化させかねない予期せぬ問題を軽減させるために,今回の新しい橋は用いられると語っている。
外交政策研究所の客員研究員で、北朝鮮経済ウォッチの共同編集者であるベンジャミン・カゼフ・シルバースタインは、今回提案されている橋は、経済的価値と言うよりも、象徴的な価値野天で意義深いかも知れないと述べている。
カゼフ・シルバースタイン発議のように指摘する。ロシアと北朝鮮の間ノ貿易は些細なものである。それは主に国連制裁によるところが大きい。しかし、「長期的に見れば、貿易は再び拡大するという信念が存在するようだ」と付け加えている。
ロシアと北朝鮮の間には長い貿易関係が存在した。冷戦期、ソビエト連邦は北朝鮮の最も重要な金融面での同盟国であった。1970年代から80年代にかけて,北朝鮮の貿易量の半分以上を占めていた。モスクワと平壌が袂を分かったのは共産主義が終演した以降の話に過ぎない。当時のロシアの新大統領であったボリス・エリツィンが、北朝鮮ではなく,韓国との緊密な関係を求めたのである。
両国関係が改善したのは、プーチンの大統領就任以降の話だ。彼は2000年に平壌を訪問し、北朝鮮メディアにより絶賛された。しかし、両国の経済関係は進展しなかった。2013年の段階で、北朝鮮のロシアとの貿易は全体の1%の割合を占めるに過ぎない。この筋は、中国よりもはるかに低い。
両国ともによりよい経済関係を希望しているものの、北朝鮮が核兵器の開発を推進するために、国際的に孤立していることが、貿易関係の大きな支障となっている。ロシアは北朝鮮に対する国連決議を支持している。昨年12月、新たな多国間制裁によって、ロシアで働くことができる北朝鮮国民の数を制限された。ただ、ロシアへの出稼ぎは両国の最も重要な経済関係であった。
ウラジオストックの極東連邦大学の国際政治の教授であるアーティヨム・ルーキンは、ロシア極東地方と北朝鮮の貿易がこの2年間で大きな打撃を被ったことは明らかだと述べている。彼によれば、シベリアの石炭を北朝鮮の羅津港(モスクワのターミナルがある)に輸送するためには重要であった。
「このターミナルから、石炭はアジア諸国、大部分は中国に輸出された」ルーキンはメールで述べている。「少なくとも、2017年後半の北朝鮮に対する強い制裁措置以前の状況であった。」
時折,外国人旅行客がロシア国境から北朝鮮に入国する。しかし、それはまれにしかないので、北朝鮮の国境警備員は戸惑っているように見えたとある旅行者は語っている。
しばらくの間は、ロシアが橋の建設に投資するとは想像できない、とルーキンは述べる。「北朝鮮はロシアが資金を出すことを期待している」「しかし、北朝鮮に関する危機がかなりの程度まで落ち着くまでは、公私ともに投資家はこの計画にコミットしないだろう」
こうした危険が沈静化すれば、ロシアにとって北朝鮮への投資は明らかな利益がある。金を失うだけという見方もあるが、羅津港のターミナルは、制裁が解除されれば、重要な拠点となり得る。また、最終的には韓国と鉄道を連結させるという希望もある。この動きは、ヨーロッパからロシアを経由して直通便を開くことになる。また朝鮮半島を縦断するパイプラインによって、両国に天然ガスを供給することができる。
そして、ロシアが韓国における経済的オプションを維持しているように見えるのは明らかだ。昨年、ロシア企業が,北朝鮮に対して光ファイバーケーブルを既存の橋に敷設することでインターネット接続を提供した。「遅かれ早かれ、北朝鮮は孤立から脱する」とルーキンは述べる。「そうなれば、橋の需要は高まることだろう」
Russia wants to build a bridge to North Korea – literally - Pacific - Stripes
ロシアが韓国にまで届く鉄道を計画していると言うことは以前のエントリでもお伝えしています。ただ、こうした報道がでる段階で、北朝鮮に対する制裁解除をロシアは予想していると考えられます。
北朝鮮に眠る膨大な資源、そして天然ガスの朝鮮半島への輸出といった膨大な利権がこの橋にかかっているといえます。
しかし、ロシアもしたたかで、橋の敷設方式がいつでも撤収できる「浮き橋による恒常的な橋」というのが笑えます。都合が悪くなれば,いつでも寸断するということです。
ロシアの朝鮮半島への野心は、今後数十年にわたってロシアの極東外交に大きな影響を与えることでしょう。