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中国が北朝鮮を追い詰めているのか、中国が追い詰められているのか

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 たまには、中国をどう見るのか他の方の意見も紹介してみることにしましょう。

  結局のところ、今回の北朝鮮のオリンピック参加という態度変更に中国は寄与したといえるのでしょうか。中国の政界に関して多くの著作のある遠藤誉氏は次のように主張しています。
「1月1日、午前9時18分、中国共産党機関紙「人民日報」傘下の環球時報の電子版「環球網」は「金正恩:平昌冬季五輪に参加の意思あり、核武装建設大業はすでに完成」という見出しで、金正恩の「新年の辞」を速報で伝えた。また中国政府の通信社である新華社の電子版「新華網」も同様の情報を大きく扱っている。
 問題は韓国が平昌冬季五輪期間をまたいで行なわれることになっている米韓合同軍事演習を中止もしくは延期できるか否かである。アメリカのマティス国防長官は昨年末、考慮する余地を若干示唆しながらも、延期しないと言っていた。
 しかし韓国の文在寅は延期を主張し、また韓国の承諾なしにアメリカが北朝鮮を先制攻撃することは許さないと言い続けている。つまり、韓国の承諾なしに朝鮮半島で戦争を始めてはならないということだ。
 アメリカのヘイリー国連大使は2日、「北朝鮮が誰と対話しようと自由だが、(北朝鮮が)核放棄に同意するまで、アメリカは(対話を)認めない」と言っている。
 CCTVでは、トランプが2日、ツイートで「(アメリカ主導の)制裁や圧力が北朝鮮に影響をたらし態度を変えさせた」と書いたことに関して、やや嘲笑気味に「その逆だ」という趣旨の解説を行なっている。むしろ「韓国における平昌冬季五輪と文在寅の対北融和政策を利用した中朝の米韓離間戦略が功を奏して日米韓を困惑に追いやっている。制裁と圧力という日米の戦略より、対話による平和解決という中露の戦略の方が勝ちつつある」というのが中国の見解で、残るは文在寅の決断と覚悟次第と、韓国への課題を提起している。
 CCTVではさらに、「なにしろ文在寅は盧武鉉ノ・ムヒョン)政権時代に幕僚長として歴史的な南北会談に立ち会った人物だ。もう一度、今度は自分自身が大統領として平壌を訪れ、平和的に朝鮮半島問題を解決したいと望んでいるだろう。戦争は韓国にとって不利益をもたらすだけだ」という解説を加えた。
 こういった特集番組を組んだこと自体、金正恩の政策転換が中国自身の戦略であることを示唆していると解釈される。(以下略)」

北の対話路線転換と中国の狙い――米中代理心理戦争 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト


 これだけを読めば、今回の北朝鮮の転向により中国が利益を得ているような印象も受けます。
 しかし、その一方で、産経新聞記者の田村秀男記者は次のように主張しています。
「 米政府は中国などの対北石油製品輸出は年間450万バレルと推定し、今回の決議でその9割が削減されるという。50万バレルまで削減するためには、ロシアや中東など中国以外からの石油製品の対北積み出しルートを全面封鎖するのに加えて、中国も16年比で4分の1以下まで出荷量を抑えるしかなくなる。
 北朝鮮と国境を挟んで陸ルートで結ばれている中国からは闇取引で石油製品が高い価格で供給されてきたが、これからは習政権がそうした裏ルートを厳しく取り締まらない限り、米国から対中制裁を受ける恐れがある。
 中国は核実験やミサイル発射を繰り返す北に対し、昨年春までは貿易を拡大してきた。国連制裁そのものが「大甘」だったからだ。グラフは中国の対北石油製品輸出と、北の最大の外貨獲得源である石炭の対北輸入の推移である。一目瞭然、オバマ米政権までは北京の対応はまさに馬耳東風といったところだった。
 対中強硬策をちらつかせるトランプ政権になって、ようやく中国が重い腰を上げ、米国が示す厳しい対北制裁決議案に難色を示しながらも、緩い内容の制裁案にすることで妥協してきた。8月には北の石炭と鉄鉱石・鉄鋼製品輸出禁止に同意し、9月には米国案を骨抜きにしたうえで原油と石油製品の対北輸出規制に応じた。
 グラフは中国側が発表する税関統計が基本になっており、闇ルートは含まれないが、正式ルート上は中国の対北石油製品輸出、石炭輸入とも、3月頃から急減傾向にある。米フロリダでの米中首脳会談を機に、中国側の対北政策が徐々に変化したことをうかがわせる。
 トランプ大統領は習氏に対し、大統領選で公約していた対中高関税の適用を棚上げする見返りに対北朝鮮政策での対米協力を強く求める一方で、国連制裁破りの中国企業や地方金融機関に対し、制裁を科してきた。口先だけで、ほとんど対中制裁しなかったオバマ前政権と違って、トランプ政権は強硬策を辞さない態度を鮮明にしている。
 年明けの焦点は中朝国境の緊迫化だ。北がさらに核実験・ミサイル発射を繰り返すようだと、トランプ氏は石油製品に続き原油の対北供給禁輸を習氏に強く迫るだろう。習氏がそれに応じない場合や、制裁の抜け穴封じをしないときは、トランプ氏は中国の国有大手商業銀行への金融制裁カードを切るだろう。追い込まれるのは金正恩キム・ジョンウン労働党総書記ばかりではない。習氏もそうだ。

【田村秀男のお金は知っている】国連の対北制裁強化で追い込まれる習主席 「抜け穴」封じなければ米から制裁の恐れ(3/3ページ) - 産経ニュース

 こうしてみると、遠藤誉氏が「金正恩の政策転換が中国自身の戦略」であると解釈しているのに対し、田村秀男氏は、「金融制裁カード」に脅された中国が仕方なく対北朝鮮制裁を強化していると考えています。
 こうみれば、遠藤誉氏の主張は、少し中国共産党の主張に寄り添いすぎているような印象が浮かびます。一帯一路政策も各地で破綻しています。その一方で、中国国内ではゾンビ企業、地方政府の累積債務問題の解決が待たれています。外交でも,内政でも課題が山積している習近平政権にとってアメリカと北朝鮮問題を巡り対決することは避けたいに違いありません。とするなら、田村秀男氏の主張の方に軍配を上げたくなります。