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備忘録 北朝鮮とヨーロッパの関係

 これまでのエントリーでは、スイスが米朝間の仲介を行っていることをお伝えしてきました。今回、ロイターの方にヨーロッパ各国の調停の試みがまとまっていましたので、振り返ってみます。

  まずは、ロイターの記事から紹介しましょう。
「[ブリュッセル 3日 ロイター] - 北朝鮮が約1カ月前にこれまでで最も強力な核実験を実施して以降、英仏両国が米国に緊張緩和を働きかける一方で、北朝鮮に大使館を置く欧州連合(EU)加盟国は、同国に直接圧力をかけている。
 英国とドイツのほか、チェコスウェーデンポーランドルーマニアブルガリアのEU加盟7カ国のグループは9月、北朝鮮の首都平壌で少なくとも2回、北朝鮮側と公式協議を行ったと、EUの外交官3人が明らかにした。
 だが、EU側は不満を感じたという。昨年の協議では北朝鮮の高官に面会できたにもかかわらず、今回出席したのは北朝鮮外務省の中級クラスの当局者だったからだ。
 「北朝鮮側が局長クラスを送り込んできたため、全く成果が得られていないという感じだった」と、協議について説明を受けたというブリュッセルに拠点を置く外交官は話す。2回の協議の雰囲気は「とても堅苦しい」ものだったという。

<「彼らは米国との対話を望んでいた」>
 ホワイトハウスはそのような対話を除外している。トランプ米大統領は、ティラーソン国務長官に対し、北朝鮮との対話を図ることは「時間を無駄」にすることだと伝えている。
 米国は平壌に大使館を置いておらず、西側諸国の国民が問題に巻き込まれた際などに対応する領事業務は、いわゆる米国の利益保護国であるスウェーデンに頼っている。
 最近の協議とは対照的に、文化プログラムや地域の安全保障などを話し合うため昨年チェコ大使館で開かれた会合には、北朝鮮の外務次官が出席したと、あるEU外交官は明かした。
 北朝鮮に大使館を構える少数のEU加盟国政府にとって、こうした対応の変化は、国連安全保障理事会で決められた以上にEUが制裁を拡大してきたことに対する北朝鮮の怒りの表れと映る。
 また、EUが北朝鮮に対する制裁強化を準備するなか、核危機で仲介役を務めようとする幅広いEUの取り組みに影響する可能性があると、平壌の同僚から説明を受けたEU外交官は言う。
 2015年の歴史的なイラン核合意で議長を務めたEUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表は、EUは北朝鮮のミサイル・核兵器プログラムを凍結するための協議を仲介する用意があると語っている。
 その一方で、EUは北朝鮮への石油禁輸を検討しており、他国が追随することを望んでいる。
 一部のEU加盟国政府は、ポーランドなど東欧諸国で働く北朝鮮人の就労許可を取り消そうとしている。こうした労働者の給料が北朝鮮政府が管理する銀行口座に振り込まれている疑いがあるためだ。
 「北朝鮮は、EUを米国の操り人形と見るようになった。だがわれわれは、公正な仲介者であると強調したい」と、2人目のEU外交官は語った。

<秘密交渉>
 EU加盟国の大使館と北朝鮮とのつながりは何年も前にさかのぼる。共産主義チェコスロバキアは、北朝鮮への主要な重機輸出国だった。チェコスロバキアは、ポーランドルーマニアと共に、ソ連の衛星国として1948年に北朝鮮と国交を結んだ。
 北朝鮮に大使館を置くのは、EU7カ国や、ロシア、中国、キューバなど24カ国にすぎない。
 仲介役としてのEUの立場は、スウェーデンに依存するところが少なくない。同国は1973年、西欧の国としては初めて北朝鮮と外交関係を樹立した。
 スウェーデンは、1953年の朝鮮戦争休戦協定の監督や査察、そして軍事演習の監視を行い、北朝鮮と韓国の信頼を醸成する目的で設立された中立国監視委員会のメンバーである。
 チェコスロバキアも1990年代初めまで同委員会のメンバーだった。
 スウェーデンは今年、カナダ人牧師ヒョンス・リム氏、そして米国人学生オットー・ワームビア氏の北朝鮮からの解放において、大きな役割を果たした。しかしスウェーデンは、EUによる制裁を強く支持している。
 北朝鮮にあるEU7カ国の大使館は、同国政府から派遣された北朝鮮人職員が密告する可能性があるため、発言できる内容に制限があると、前出のEU外交官らは言う。
 「制裁と圧力。悲しいことに、われわれには他に手段がない」と、あるEU外交官はブリュッセルでこう語った。
 北朝鮮と7か国側の協議は、通常1カ国の大使館で行われているが、拘束されている西側の国民の解放交渉が中心で、大きな外交戦略などを話し合うことはない。
 とはいえ、米国と北朝鮮の戦争の脅しを沈静化しようとする努力が一段と増すなか、米朝間のメッセージを仲介する重要なチャンネルであることを証明することは可能だろう。
 「北朝鮮と米国のあいだに外交ルートを開く手助けができたら最高だ」と語るのは、スウェーデンの元首相で外相経験もあるカール・ビルト氏である。EUの動きは全て、秘密にすべきだと同氏は言う。「EUがこうした方向で何かするなら、まずすべきは、それについて語らないことだ」

<安全網なし>
 ビルト氏も関わるシンクタンク「欧州外交問題評議会」の北朝鮮専門家であるマシュー・ドゥシャテル氏は、EUが米中間の対話を取り持つことが可能との見方を示した。
 危機が制御不能となるのを防ぐホットラインが米朝間にはなく、米国が北朝鮮のミサイル実験を迎撃した場合、中国がどう反応するかは分からないと同氏は言う。
 現段階では、マクロン仏大統領とトランプ米大統領の親しい関係を踏まえ、仏政府が米国のマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題)とケリー大統領首席補佐官と接触していると、複数の外交官が明かした。
 陸軍中将であるマクマスター氏と海兵隊退役大将のケリー氏は、フランス軍への尊敬の念から、同国には好意的だという。
 ただしそれが、トランプ大統領の北朝鮮政策に直接影響を与えるかは不明だと、欧州の外交官らは話す。
 「彼らはトランプ氏を正常化しようとしているが、それが可能とは思わない」と、あるフランスの上級外交官は言う。「聞く耳を持たせるには、各国首脳が直接彼と話す必要がある」
 マクロン大統領は軍事的選択肢を除外しており、軍事介入を回避するようトランプ大統領を説得できるとの考えを示している。マクロン氏は、忍耐と対話を繰り返しトランプ大統領に訴え続ける構えだと、外交官らは語った。」

焦点:核危機「調停力」失うEU、冷え込む北朝鮮との裏ルート | ロイター


 ここに挙げられている事例を見れば、アメリカとヨーロッパ諸国の間に、明らかに温度差があることがわかるでしょう。日本のように、自国民が拉致された経験を持つ国と、本国にまで届くミサイル開発に激怒を隠さないアメリカと、直接の関与はなく、出来れば経済面での協力を押し進めたいヨーロッパ諸国の間では、こうした温度差も仕方がないのかも知れません。
 しかし、9月に開催された国連総会で、米国や日本が激しく北朝鮮を非難し、北朝鮮が開発している核の規模が知られるにつれて、ヨーロッパ諸国も、北朝鮮に対する制裁に前向きな姿勢をとる国が増加しました。
 とするならば、そろそろ北朝鮮も核ミサイルによる恫喝は取りにくくなっていることでしょう。10日に北朝鮮のミサイルがという報道は良く目にしますが、もし何か行動を起こすのであれば、そろそろ、その趣旨の発言がなければならないのですが、現在は何の音沙汰もありません。したがって、10日のミサイル、核実験は起こりにくいのではないかと考えられます。