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米朝軍事対決までのフローチャート(追記あり)

 まさか目の前で核戦争が勃発することになるとは予想もしませんでした。たとえ僅かであっても、その可能性が膨らみつつあることには、個人的な責任ではないにせよ、日本人として事態に誠実に対応することが求められているのだと思います。
 明日目が覚めれば、東京は水爆で消滅していたというSFチックな想定が、すでにフィクションではなくなっていることに呆然としています。

 

 感想はともかく(笑)。今後の事態のフローチャートを設定してみましょう。

[1]北朝鮮による太平洋上での水爆実験
 これは、以前のエントリーで北朝鮮国連大使の発言から明らかです。インテリジェンスにとって重要なのは、敵勢力のcapability(能力)とwill(意思)の二点です。
 北朝鮮に水爆実験の能力があることはもう前提として良いでしょう。ただ、太平洋上でということになると、そこまでの運搬手段が問題になります。ミサイルに搭載して実験する場合と小型の船舶(もしくは潜水艦)に搭載して実験を行う場合の2通りがあります。 ここで条件分岐です。
(1)北朝鮮が太平洋上で水爆実験を行う
(2)北朝鮮が太平洋上で水爆実験を行わない

[2]北朝鮮が太平洋上で水爆実験を行う場合のアメリカの対応
 先にも述べたように、運搬手段が最低2通りは考えられるので、米国側の対応は異なるかも知れません。ただ、太平洋という多くの航空機・民間船舶が航行している領域で水爆実験を行うとなれば、アメリカのみならず国際社会から北挑戦に対して厳しい批判が寄せられると考えられます。
 したがって、この段階でアメリカの対応も2通り考えられます。
(1-1)北朝鮮に対してアメリカが先制攻撃を行う
(1-2)北朝鮮に対してアメリカが先制攻撃を行わない
 (1-1)のケースの場合、アメリカの攻撃が本決まりになると、その段階から韓国の(そして中国東北地方の)アメリカ市民ならびに軍人は一斉に退去を始めるでしょう。米海軍、海兵隊も動員されますので、それは傍目からも十分に確認出来ると考えられます。 問題は、その準備プロセスがどれほどの時間を要するかという点です。なぜなら、米軍が準備を始めたということが明らかになった段階で、北朝鮮が先手を打って韓国・日本・米国に先制攻撃を行う可能性があります。日本も、衛星画像などを通じて北朝鮮内部の動向はある程度は把握していますから、この時は自動的に開戦ということになりそうです。どちらが先に攻撃を始めるかは、その時の状況に夜でしょう。
 (1-2)のケースの場合であっても、即座に北朝鮮を攻撃しないということでしかないと考えられます。ただ、先週トランプ大統領が導入した新たな北朝鮮の制裁措置を世界中に徹底することを求めるでしょう。背景にあるのは米軍の準備不足です。これまでのエントリーでも紹介してきましたが、オバマ政権時代の予算の強制削減の影響がまだ色濃く残っており、今のところ極東・東太平洋を担当する第七艦隊ですらトラブル続きです。ただ十分対応が可能とトランプ大統領が踏んだ段階で、(1-1)のステージに突入ということになるでしょう。そのまえに自国民の避難が完了していることが前提ですが。
 したがって、現段階では(1-1)よりは、(1-2)のケースが可能性が高いと考えられます。ただ、いずれの場合でも米朝の軍事衝突が不可避であることには変わりがありません。

[3] 北朝鮮が太平洋上で水爆実験を行わない場合のアメリカの対応
 この場合も次の2通りの条件分岐が考えられます。
(2-1)北朝鮮に対してアメリカが先制攻撃を行う
(2-2)北朝鮮に対してアメリカが行動を起こさない
 (2-1)の場合に関しては、現段階で完全に否定できないと考えられます。なぜなら、北朝鮮のミサイル・核の開発のスピードは誰にでもわかる形で順調に進んでいるためです。このままのペースで進めば、ロサンゼルスだけでなく、シカゴ、ワシントン、ニューヨークにまで到達すると米国サイドの分析機関は想定しています。
 ただ、先に挙げた米軍の準備不足がありますので、しばらくは身動きがとれないと考えられます。したがって、(2-2)北朝鮮に対してアメリカが行動を起こさないという場合の可能性が最も高いといえるでしょう。
 ただ、アメリカは国際社会に対北朝鮮制裁の遵守を求めるでしょうから、北朝鮮の立場はますます苦しくなるとみられます。

[4]平和の期限
 後は、この軍事衝突にまで到らない状態がいつまで続くかでしょう。そこで一つの目印になるのが、来年2月の平昌での冬季オリンピックです。すでに、今回の国連総会のトランプ大統領の演説により、北朝鮮情勢の危うさは、ヨーロッパ諸国もよく理解したと考えられますので、それ以前に何かトラブルが起きればオリンピックは不可能になります。
 国際社会の暗黙の慣習として、オリンピック期間中は、軍事衝突などのもめ事は避けるということがあります。したがって、オリンピックを尊重するなら、現在の米朝対決は、オリンピック以降にまで持ち越す可能性が高いといえるでしょう。

[5]結論
 以上をまとめると、北朝鮮が太平洋で水爆実験を行った場合、時期はずれるにせよ、自動的に米朝は交戦状態に突入することになります。水爆実験を行わなければ、さしあたり来年の2月までは朝鮮半島の平和は維持されることになります。
 なお、今回の分析において、中国、ロシアというファクターは分析に含めませんでした。中国に関しては、現在、北朝鮮との関係が悪化しており、米軍が北朝鮮に進駐するのでなければ、中国は米軍による北朝鮮の攻撃は歓迎すると考えられるためです。
 ロシアに関しても、太平洋上で北朝鮮が水爆実験を敢行すれば、北朝鮮を見捨てるでしょう。その場合は、アメリカの攻撃決定に影響を及ぼさないと考えました。ただ、来年2月までの米軍の先制攻撃は認めないでしょう。
 となるとやはり、朝鮮半島で核戦争が起きるかどうかは、北朝鮮側の対応によって決定されると言えそうです。

(追記)

ロイターに上の分析を裏付けるホワイトハウス高官の発言が紹介されています。

「[ワシントン 22日 ロイター] - 米政権当局者は22日、北朝鮮が水爆実験の実施を示唆したことについて、実際に強行すれば1つの分水嶺になるとの認識を示し、現時点ではそれほど信用するべきではないとしながらも、米国はこうした脅しを深刻に受け止めていると述べた。
 同当局者は匿名を条件にロイターに対し、北朝鮮に水爆実験を実施する能力があるかは疑問とし、「現時点でそれほど信用するべきではない」と指摘。ただ、北朝鮮が水爆実験を実施すれば「1つの分水嶺となる」となるとし、「われわれはある程度は深刻に受け止める必要がある」と述べた。」

北朝鮮、水爆実験強硬なら分水嶺 米国は深刻に受け止め=米政権当局者 | ロイター