安部首相、北朝鮮を決定的に孤立させる
まあちょっと大げさかもしれませんが、今回の安倍首相の国連演説は、トランプ大統領の国連演説を補強し、決定的に孤立させるものとなりました。その詳細を分析してみましょう。
産経新聞から紹介します。
「 【ニューヨーク=杉本康士】訪米中の安倍晋三首相は20日午後(日本時間21日未明)の国連総会で一般討論演説を行った。核・ミサイル開発を進める北朝鮮について、全加盟国に「必要なのは行動だ」と述べ、安全保障理事会の制裁決議を完全履行するよう求めた。演説のほぼ全てを北朝鮮問題に費やす異例の内容で「脅威はかつてなく重大だ。眼前に差し迫ったものだ」として危機感の共有を図った。
演説冒頭で首相は、開発や法の支配、安保理改革など多岐にわたるテーマを挙げた上で「論点をただ一点、北朝鮮に関して集中せざるを得ない」と切り出し、以降は北朝鮮一色の内容となった。
首相は1994年の米朝枠組み合意、2005年の6カ国合意の裏で北朝鮮が核開発を続けてきたと説明し「対話とは北朝鮮にとって、われわれを欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった」と批判。北朝鮮との対話は、完全で検証可能で不可逆的な核・弾道ミサイル計画の放棄が条件となるとした上で「そのため必要なのは対話ではない。圧力だ」と述べた。
また、トランプ米政権の「全ての選択肢はテーブルの上にある」とする対北朝鮮政策について米国を「一貫して支持する」と強調。北朝鮮の脅威に対して「日本は日米同盟、日米韓3カ国の結束によって立ち向かう」と語った。
一方、首相は北朝鮮による拉致問題にも言及した。19日の一般討論演説で拉致された「13歳の少女」に触れたトランプ米大統領と同様に横田めぐみさんの名前を挙げ「一日も早く祖国の土を踏み、父や母、家族と抱き合うことができる日が来るよう全力を尽くす」と宣言した。
国連総会には北朝鮮の代表も出席した。これを意識してか、首相は「北朝鮮はアジア太平洋の成長圏に隣接し、立地条件に恵まれている。勤勉な労働力があり、地下には資源がある」と、あえて北朝鮮の潜在的な経済力に言及した。だが同時に「拉致、核、ミサイル問題の解決なしに開ける未来などあろうはずもない」とも述べ、核・ミサイル計画の放棄を求めた。」
安倍晋三首相、北朝鮮一色の異例の国連演説 「差し迫った脅威。論点を集中せざるを得ない」 - 産経ニュース
短い記事ですが、重要な論点は全て含まれています。まず、北朝鮮との対話は時間稼ぎでしかないことというのが一つ。アメリカ人大学生のワームビアーさんが帰国後、すぐに亡くなったことは覚えておられる方も多いとおもいますが、実は彼の返還劇は北朝鮮の国連大使と国務省の担当官の間での秘密交渉の産物でした。さし当たっての信頼醸成措置が、大学生の返還だったのですが、実際にはアメリカの世論を硬直化させるだけで終わってしまいました。この交渉ラインはオバマ政権時には全く使われることがありませんでした。実際に使ってみたが、ダメだったという判断をホワイトハウスが下したと考えられます。 次に焦点になったのが、やはり拉致問題でした。トランプ大統領に続き安倍首相も正面切って取りあげたことで、北朝鮮が交渉に舵を切った際にも、拉致問題の解決は最優先事項になったと言えます。欲を言えば、早く特殊部隊を編成して、実力行使に訴えるのが良いと思うのですが、それはまだ無理なのかも知れません。
最後に、「勤勉な労働力があり、地下には資源がある」と、北朝鮮の狙いをさらりと紹介しているところが心憎いところです。
ドイツのメルケル首相が、北朝鮮問題の軍事力による解決に反対なのは、北朝鮮の現在の政体が存続した場合に、資源開発に関わりたいという意欲の表明なのです。なにも、平和主義者だからと言うことではないのです。スイスが仲介した話は以前に紹介しましたね。
これで北朝鮮の取る道は二つになりました。
(1)圧力に屈して、核ミサイル開発を断念する。
(2)あくまでアメリカ・日本・中国に抵抗し、核ミサイル開発を継続する。
(1)の経路になればよいのですが、金正恩のパーソナリティーを考えると困難なのではないでしょうか。(2)の場合は、北朝鮮をどの国がバックアップするのかと言い換えることが出来ます。現在の所は、ロシアが最有力でしょう。プーチンが金正恩をどう判断するのか。そして錯綜とする中国との関係の中で、北朝鮮をどう位置づけるのか。ここが問題になることでしょう。
なお、スイス問題に関しては
北朝鮮の資源問題に関しては
また、すぐにではないせよ、米朝間の軍事衝突の可能性が高いことは、
をご覧いただければ幸いです。