FirstHedge 明日の投資情報

投資を搦め手で分析します。

未来予測 戦後の世界を想像・創造する(1)

宴のあと (新潮文庫)

 世の中のメディアでは、米中冷戦がはじまったという報道が多いように思います。最近のペンス副大統領の発言でもそれは確かめることができます。

 ただ、「冷戦」で終わるのでしょうか。

1.中国がアメリカに戦争を仕掛ける理由

  米中の対決は、冷戦という生易しいものでは収まらないと個人的には感じています。ベトナム戦争などのプロクシ戦争以外に、米ソがなぜ冷戦期で直接対峙を回避したかと言えば、それは第二次大戦のときの記憶に行き着きます。

 ソビエト・ロシアは、スターリングラードの攻防戦に象徴されるような国を失う一歩手前までナチスドイツに追い込まれたことがありました。米軍にしても、硫黄島や沖縄の戦いがどれほど凄惨なものであったか身をもって知っています。旧日本軍の勇猛さへの敬意が失われた頃から、ジャパンバッシングジャパンパッシングが始まるのですが、それは今回は触れません。重要なことは、軍の首脳陣が戦争の大変さを身をもって知っている世代、もしくはその直後の世代であったために、米ソの直接対決、もっとハッキリ言えば、両国による核戦争は回避されたのです。

 しかし、中国には、この種の体を切られるような必死の戦争という記憶がそもそも抜け落ちています。あるとしても、ソ連とのちょっとした国境紛争、もしくはせいぜい中越紛争での大敗北ぐらいでしょう。中国人民解放軍の最大の弱点は、実際に戦争を遂行したことがないという点にあるのです。

 ですから、国家と国家が正面から衝突する大規模戦争での踏ん張りどころが想像できないのです。現代であれば、核ミサイルがあるのだから、いざとなったらアメリカにぶち込めば良いと考えています。その性急さが、中国がアメリカに対して開戦を仕掛ける原因となります。

 現状ではまだ困難ですが、軍事バランスが逆転したと中国側が判断するか、何らかの理由でアメリカが弱体化したと見えたときに、米中軍事衝突は発生すると考えられます。

2.どちらが勝利を収めるのか

 結論から言えば、中国は1年持たないだろうというのが率直な印象です。その理由は実に簡単で、制海権を確保できないからです。潜水艦の性能が違いすぎるとでもいえばよいのでしょうか。日本の海上自衛隊の潜水艦の方が、深く潜ることができ、その深い深度から、魚雷を発射することができるのです。さらには、水中のネットワークにより、中国艦船の位置はほぼ把握されています。そうしたネットワークの存在は、中国側もすでに知っていますが、同等のシステムを構築するにはおそらく10年以上必要になるでしょう。完全な海上封鎖の下では、どれだけ優れた陸軍力、空軍力を誇ろうとも、まったく手出しができません。

 さらに言えば、同盟関係も大きく寄与します。日米はともかく、インドもこの戦争に参加することはほぼ明らかです。背後からはインド陸軍、正面からは日米の海軍が対峙するという布陣で、これでは負けそうにないのです。

 ロシアが中国と結びつく可能性もありますが、現在のロシアは経済運営に失敗し、プーチンも支持を失っている現状です。アメリカに勝てる見込みがあれば、中国側に立って参戦するでしょうが、せいぜい武装中立が良いところでしょう。負ければ国を失う戦争に参加するとは思えません。いや、それ以前に、経済的に許されないでしょう。

 核の脅威に関しても、アメリカはIMFを破棄しました。これは、対ロ強硬姿勢をとるというよりは、中国の核に対する牽制であるとみなすことができます。だから、そのことを説明するために、トランプ大統領は、プーチン大統領ホワイトハウスに招待したのだと考えられます。

 正直言えば、中国が核ミサイルを例えばグアムに向けて発射する確率は高いと思います。それでも、アメリカの熱意が低下しているNATOから見れば、グアムへの攻撃は見過ごすことができません。おそらく、アメリカよりも早く中国に向けて核を発射することになりそうです。そのあとに、アメリカやインドも相次いで発射することになるでしょう。

 もちろん、流れ弾が、日本に落下して広島・長崎の悲劇が、今度は東京で再び生じることもあり得るでしょう。しかし、米軍がミサイル防衛以外にその対策を立てていないとは到底考えられないのです。その明白な証拠が、オバマ大統領の時の一方的な核軍縮です。これは、核兵器に頼らなくても戦争を遂行できる技術的なめどがついたためと考えることができます。

 中国が、世界を敵に回して勝利を収めるシナリオは、今後5年で見れば全くありません。それが大前提です。