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トランプ大統領の国家安全保障戦略のサマリー

 今後もトランプ大統領の国家安全保障戦略は議論の焦点になるはずです。というわけで、そのサマリーを訳出しておきました。

 「 2017年の国家安全保障戦略は、海外でのアメリカの名声を回復させ、自国でのアメリカ人の自身を更新するための大統領の11ヵ月にわたる行動に基づいて作成された。
 戦略に自信を持つことで、アメリカは重要な国益を守ることが出来る。この戦略は4つの重要な国益、4本の柱を特定している。それらはすなわち

I 米国本土、アメリカ国民、アメリカの生活様式を守る
II 米国の繁栄を促進する
III 強さを通じて平和を維持する
IV アメリカの影響力を拡大する

 この戦略は,世界での我々の立場に影響を与える主要な障害と傾向を明確にしている。それらの中には、中国やロシアのような修正主義勢力も含まれる。これらの勢力は,世界を、我々の国益と価値に対して正反対のものにするために、テクノロジー、プロパガンダ、それに抑圧といった手段を用いている。
 地域の独裁者は、テロを拡大し、周辺諸国を脅かし、大量破壊兵器を追求している。
 イスラム原理主義のテロリストは、誤ったイデオロギーの名の下に罪もない人々に対する暴力を指嗾するために憎悪を助長しており、国際犯罪組織は、薬物や暴力をわれわれの社会に持ち込んでいる。
 この戦略は、大統領の原則を持つ現実主義の概念を明確化し、押し進めたものである。
 この戦略は原則に基づいている。なぜなら、世界中に平和と富を広めるというアメリカの原則を推進することに依拠しているためだ。
I 米国本土を防衛する
 トランプ大統領の根本的な責任はアメリカ国民、その本土、そしてアメリカ人の生活様式を防衛することである。
 我々は国境の管理を厳格化し、本土と主権を回復するために移民制度を改革する。
 米国本土に対する最大の国際的脅威は以下の通りである。
 イスラム原理主義テロリスト。彼らは、野蛮な残酷さを用いて、殺人、抑圧、奴隷化を行い、脆弱な人口に対してバーチャルなネットワークを構築し、直接攻撃するように仕向けている。
 国際犯罪組織。彼らは、ドラッグと暴力でわれわれの社会を切り裂き、民主的制度を腐敗させることで、我々の同盟国やパートナーを弱体化させている。
 アメリカは、これらの脅威の根元に焦点を合わせている。我々はこれらの脅威が国境線にたどり着き、我が国民を害する前に対決するだろう。
 我々は、重要なインフラ、デジタルネットワークを防御する努力を倍増させる。なぜなら、新技術と新たな敵は、新たな脆弱性を産み出すからだ。
 我々はミサイル攻撃に対して重層的なミサイル防衛システムを展開している。

II 米国の繁栄を促進する
 強い経済は、アメリカ国民を守り、我々の生活様式を支え、アメリカのパワーを維持する。
 我々は,アメリカ人の労働者、企業の利益のためにアメリカ経済を活性化させる。それは我々の国力を回復させるために必要であるためだ。
 アメリカはもはや貿易の濫用を容赦しない。そして、自由で、公平で、相互的な経済関係を追求する。
 21世紀の地政学的競争に勝利するために、アメリカは研究開発、技術革新の点で先頭を切らねばならない。我々は我々の安全保障に関する技術革新の基盤を我々の知的財産を盗み、自由な社会の技術革新を不公正に利用するものたちから守るだろう。
 アメリカは、国際市場をオープンな状態で維持するためにエネルギー産業の優越性を用いる。そして、多様化とエネルギーのアクセスの恩恵は経済的国家安全保障を促進するだろう。

III 力による平和の維持
 強化され、更新され,若返ったアメリカは平和を追求し、敵意を抑止する。
 我々はアメリカの軍事的力を再建し、並ぶものがない状態を維持する。
 アメリカは、外交,情報、軍事、経済面での戦略的競合という新たな時代において自国の国益を守るために、国家機能の全てを使用する。
 アメリカは、宇宙やサイバーといった面も含めた様々な分野での能力を強化し、これまで無視されてきた能力を活性化させる。
 アメリカの同盟国とパートナーは我々の力を強化し、我々と共有する利益を守る。我々はこれらの諸国が共通の脅威に対処するためにより大きな責任を取ることを期待する。
 我々は、世界の主要な地域、つまり、インド太平洋地域、ヨーロッパ、それに中東において勢力均衡がアメリカに有利な方向に傾くようにする。

IV アメリカの影響力を拡大する
 歴史を通じて善のための勢力として、アメリカは自らの影響力を使用して、我々の利益を増進し,人間性に利益をもたらす。
 我々は、アメリカ国民を守り、我々の繁栄を促進するために、海外での影響力を強化し続ける必要がある。
 アメリカの外交・開発努力は、全ての領域において、二国間であろうと,多国間であろうと、情報の領域であろうと、我々の国益を守るために、よりよい成果を上げるべく競合し、アメリカにとって新たな経済的機会を見いだし、我々の競合者に挑むであろう。
 アメリカは、自由な市場経済、民間セクターの経済成長、政治的安定性と平和を促進するという同じ志を持つ国家との協力関係を求める。
 我々は我々の価値を擁護する。我々の価値の中には、強力で安定し繁栄する主権国家を育む法の支配、人権が含まれる。
 我々のアメリカ・ファースト政策は、世界におけるアメリカの影響力を、平和、繁栄、それに成功する社会の開発にとっての条件を整えることが出来る肯定的な力であると賞賛している。」

 一読してわかるのは、現在は各勢力が競合する時代に入ったと言うことでしょう。その競合相手として名指しされているのが、中国やロシアです。イスラム原理主義もその中に入れて良いかも知れません。

 それに対して、トランプ大統領のアメリカは、国際協調によってではなく、自国の利益を追求し、まともなパートナーといえる国(おそらくは,英国、イスラエル、日本など、ぎりぎりでインドも)とだけ手を組んで事態に対処すると宣言しています。

 この戦略を書き上げたのはホワイトハウスの安全保障関係のスタッフであるはずで、トランプ大統領の意向と言うよりは、大きな意味でのアメリカの国家意志と見るべきでしょう。

 全体的なトーンは、中国、ロシアを主要的としてあげながらも、地域大国であるイランや北朝鮮が意識されていることがわかります。

 すぐに戦争に突入するわけではないにせよ、具体的な紛争の可能性を強く示唆するものとなっています。しかも、紛争が発生する地域も,アジア・インド洋、中東、ヨーロッパと特定されているのも気になるところです。