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オーストラリア経済の黄昏(たそがれ)

 オーストラリアといえば、過去26年間、経済成長が続き、踏んだ資源にも恵まれ、ほかの国の人がうらやむ生活を誇ってきました。しかし、もう少しよく見れば、その経済も曲がり角に来ているのです。
 その原因は政治です。10年にもわたる政治の機能不全が成長の見通しを暗くしているのです。代々の政権が次々と必要とされている改革を断行できなかったのです。この点をブルームバーグの記事を使って検証することにしましょう。(下の写真はブリスベンです。いかにも人工都市という感じて綺麗ですね。)

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1.オーストラリアの政治の何が問題なのか。
 回転ドアで指導者がぐるぐる変わっていくことが最も非難されている点です。過去10年間で首相は10回変わりました。政治的力に欠ける指導者は、一方で党内政治に目をやり、一方で世論調査の結果にも気をもんでいました。各党の主張があまりに異なっているために、実質的な議論や改革を行うことが徐々に困難になったのです。

2.インフラ建設の失敗、遅れ
 その代表例が、失敗に終わった380億米ドル相当のブロードバンドネットワーク計画でした。デジタル革命の大波に直面し、国家最大のインフラ計画として始まったこのプランは、費用の増大、そして完成の遅れにより、政治的なフットボールになってしまいました。

3.庶民には手が出せなくなったマイホーム
 その一方で、住宅市場を投機的な金融資産にしてしまった課税政策のために、オーストラリアの若者はマイホームを持つことをあきらめるようになってしまいました。15年にわたる不動産バブルが続いた結果、裕福なバイヤーしか残らなかったのです。
 石炭からクリーンエネルギーへの転換にまつわる政治的ドタバタ騒ぎのお陰で、不幸なパラドックスが生まれてしまいました。膨大な石炭と天然ガスを持ち、太陽光発電風力発電にとって好条件の国土を持ちながら、電力法案の改革は頓挫し、今年の夏には停電騒動も発生しています。

4.成長しないオーストラリア経済
 オーストラリア経済は、この10年の間、先進国よりも高い経済成長率を誇ってきました。しかし、オーストラリアの株式市場の規模は縮小を続け、いまや韓国やインドよりも小さくなってしまいました。オーストラリアの大企業10社の株価は、10年前と変わりませんが、アメリカの大企業で、10年前と株価が変わらないのは、マイクロソフトだけです。他のアメリカの大企業はどんどん成長しているのです。(以下略)」

www.bloomberg.com

 元の英語版のブルームバーグの記事をご覧になればわかりますが、ここまで、とは思いませんでした。インターネットのスピードは、ケニアやロシアにも劣ります。平均収入は、1970年を100とすれば、現在が180程度なのに対し、1970年の住宅価格を100とすれば、現在は320程度になります。リーマンショックの時ですら、不動産価格が上昇したのは驚きです。ですから、持ち家の比率も着実に低下しているのです。そして、最大のびっくりは、電気代が非常に高いのです。高い高いとされるドイツやイタリアよりも高いのです。
 確かに国全体としては潤ってきたのかも知れませんが、一般の人々の生活は苦しくなるばかりです。オーストラリアと言えば、好調な経済というイメージがあったのですが、この記事は意外でした。