サウジアラビアの人脈相関図
今回のサウジアラビアでの政変の規模が大きくなってきたことは次の系統図を見てもわかります。Middle East Eyeから引用します。
この図からも明らかな通り、バンダル王子は先々代の王と先代の王に仕えていた際宇治の外交・インテリジェンス畑の人です。政権から退いたのは「アラブの春」が失敗したためです。
本来であれば、カタールと組んでシリアをスンニ化する予定でした。しかし、今は名前を変えましたがヌスラ戦線とかアルカイダといった西側諸国が耳にすれば拒絶反応を起こしそうな駒しか持ち合わせていませんでした。しかも、統一がとれていないというおまけ付きです。イスラム国(旧イラク軍情報機関関係者が創設した)も、途中から暴走を始めましたし、何も生まないまま終わりを迎えました。
これが、サウジの王室の代替わりと共に総入れ替えになったのです。今回のサルマン皇太子の改革で、サウジの外交方針も大きく変化しました。それはイスラエルに対する敵視政策の撤回と対イラン同盟関係の樹立です。これまでは、常にアメリカの陰に隠れていましたが、スンニ派の大国サウジがついに正面切ってイスラエルと共にイランに対峙することになったのです。
したがって、中東で戦争が勃発するとすれば、アメリカ・イスラエル・エジプト・サウジアラビアなど湾岸諸国VSイラン・レバノン(ヒズボラ)・ロシアという対抗軸になります。ただ、ロシアは中東で本格的にアメリカと対峙する意欲はなさそうなので、米ロの対決が深刻化することはなさそうです。
そして、この対立の図式でジョーカーとなるのがトルコでしょう。トルコはドイツとの関係が破談し、しかもアメリカとの関係も、ビザ発行停止問題などで急速に悪化しています。関係が良好なのは今のところ、ロシアだけです。トルコがイランに対峙するのかどうかで、大きく対立の構図は変化するでしょう。
全体的に見れば、イラク戦、アラブの春と負け続けのアメリカが着実に中東での影響力を失っているというところでしょうか。これに対して、今度はイスラエルを巻き込む形で反撃に出たとみることもできます。