各企業のワクチン開発競争
それぞれの薬品会社が今回のウィルス対策のワクチンの開発競争にしのぎを削っています。その状況を今一度確認しておきましょう。
AFPの報道によれば、開発状況は以下の通りです。
「開発企業:米製薬ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)
開発対象:治療薬
実用化時期:今年後半
ギリアドの抗ウイルス薬「レムデシビル」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすウイルスに関連した薬剤としては市場への投入が最も近いと考えられている。実際には、レムデシビル自体は以前からある薬剤で、エボラウイルス(エボラには効果がないことが証明された)など新型コロナとは別のウイルスを念頭に開発されたものだが、まだどの疾患に対しても承認が得られていない。
それでも医師らによると、レムデシビルは中国の新型コロナウイルス感染患者の一部に対する治療において、早期の有望性を示しているという。ギリアドは現在、アジア地域で最終段階の臨床試験(第3相として知られる)が進められている。また、米国でもこれまでに少なくとも1人の患者の治療に使用された。
世界保健機関(WHO)事務局長上級顧問のブルース・エイルワード(Bruce Aylward)氏は、中国で最近開かれた記者会見で「実質的な有効性を持つ可能性があると考えられる薬剤は現時点でひとつしかない。それはレムデシビルだ」と述べている。
■モデルナ
開発企業:米製薬モデルナ(Moderna)
開発対象:ワクチン
実用化時期:12~18か月後
中国の研究者らによって新型コロナウイルスのゲノム(全遺伝情報)が公開されてからほどなくして、新型コロナウイルスがヒト細胞に結合して感染する際に用いる部位「スパイクタンパク質」の再現モデルを米テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)のチームが作成した。チームは、極低温電子顕微鏡法を用いてこれの画像化にも成功している。
そして、有害な影響を及ぼすことなく人体の免疫反応を引き起こす可能性があるこの再現モデルそのものが、ワクチン候補の基盤となった。これはワクチン開発のための古典的手法で、その始まりは1796年の天然痘ワクチンとされている。
2010年に設立された比較的新しい企業であるモデルナはまた、米国立衛生研究所(NIH)とも協力してワクチン開発に取り組んでいる。このワクチンはメッセンジャーRNAを利用するもので、遺伝情報を用いてヒト筋肉組織内でスパイクタンパク質を生成させることから、体外で生成のタンパク質を接種する必要がない。
テキサス大オースティン校のチームを率いたジェイソン・マクレラン(Jason McLellan)氏は、「迅速なプロセス」がこの手法の長所であると述べ、体外でタンパク質を生成する従来型のアプローチは調整が難しく、長い時間がかかると説明した。
このRNAワクチンはマウス実験による有効性が確認された後、3月16日に初のヒト臨床試験が開始された。
■リジェネロン・ファーマシューティカルズ
開発企業:米リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Regeneron Pharmaceuticals)
開発対象:治療薬とワクチン
実用化時期:詳細なスケジュールは未公開
リジェネロンは2019年、「モノクローナル抗体」を用いて静注薬剤を開発した。この薬剤はエボラ出血熱患者の生存率を著しく上昇させることが示されている。
同社研究担当副責任者であるクリストス・キラトソウス(Christos Kyratsous)氏は、AFPの取材でこの薬剤を開発するための手順を次のように説明した。
まず人間に似た免疫系を持つよう遺伝子操作したマウスを作製し、そのマウスを生きたウイルスや弱毒化したウイルスに暴露させてヒト抗体をつくる。次にマウスが産生した抗体を単離し、最も効力が高いものを選別、それを実験室内で培養・精製する。それが人に静脈内投与される。
■サノフィ
開発企業:仏サノフィ(Sanofi)
開発対象:ワクチン
実用化時期:未定
サノフィは、米政府と提携して「組み換えDNAプラットフォーム」と呼ばれる技術を活用したワクチン候補の開発を進めている。
サノフィのワクチン開発では、新型コロナウイルスのDNAを無害なウイルスのDNAと組み合わせて、免疫反応を引き起こすキメラを作製する。
この技術はすでに、サノフィのインフルエンザワクチンの基盤となっている。
■イノビオ・ファーマシューティカルズ
開発企業:米イノビオ・ファーマシューティカルズ(Inovio Pharmaceuticals)
開発対象:ワクチン
実用化時期:年末までに緊急供給か
米製薬イノビオは1980年代に設立されて以来、DNAワクチンの開発に取り組んでいる。DNAワクチンは、上で説明したRNAワクチンと同様の方法で機能するが、連鎖のより早い段階で作用する。
■その他
マラリアに効果のあるキニーネの構造を基に開発された合成薬「クロロキン」といった薬品についても、新型コロナウイルスに有効である可能性があり、科学者らはさらなる調査の必要性を訴えている。」
【解説】新型コロナの治療薬やワクチン、現在の開発状況は? 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
スケジュールが公開されている企業はまだ多くなく、これで大丈夫という企業はまだないようです。日本にもいくつか聞くかもしれないとされている薬剤がありますのでもう少し事態の推移を見守りたいと思います。早くワクチンができればいいですね。