問題山積のNATO
12月と言えば大掃除の季節ですね。NATOもおなじかもしれません。
マクロン大統領ではありませんが、やはりNATOのあり方は七〇年経った現在新たに再検討されるべきでしょう。
「 北大西洋条約機構(NATO)はトランプ米大統領がその重要性に疑問を投げかけ、フランスのマクロン大統領が「脳死状態」と発言するなど、混迷深まる組織運営の立て直しを迫られている。来月4日にロンドンで開く創設70周年を祝う首脳会議では「賢人グループ」を創設し、改革を模索する見通しだ。
トランプ大統領は昨年7月のNATO首脳会議で脱退を匂わせた。しかし、その後は支持に態度を変え、改革の約束を称賛するようになった。
マクロン大統領も「NATOが政治レベルで協調性を欠き、タブーとなっている課題に取り組んでいない」(フランスの外交筋)ことに不満を爆発させている。
マクロン氏が「脳死」発言をするきっかけになったのは、米軍がシリアから一方的に撤退、NATO加盟国のトルコがシリア北部のクルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」への軍事作戦を始める事態になったことだった。
YPGは過激派組織「イスラム国」の打倒で米政府に協力したが、トルコはYPGをテロ組織とみなしている。NATO内には、YPGへのトルコの軍事作戦がイスラム国に対する戦闘態勢を弱体化させるのではないかとの懸念がある。NATO内部の連携は大きく揺らいでいる。
複数の外交筋によると、今後のNATOに関する懸案を是正するため、首脳会議はストルテンベルグ事務総長下に、有識者で構成される「賢人グループ」を創設するというフランスとドイツの提案を採択する見通しだ。
賢人グループは経験豊富な政治家と、より大胆な提案が可能な人材から成る小規模な組織となり、次のNATO首脳会議が開かれる2021年末に改革のたたき台について報告書を提出することになりそうだ。
この計画を巡る協議に関わっているフランスの外交筋は「(マクロン氏の発言が引き起こした)電気ショックを政治的な論議の構築につなげようとしている」と述べた。欧州はNATOにおける米国の比重が高すぎると認識しており、「欧米間の連携のバランスを見直す」ことが主な狙いだという。
首脳会議はトランプ氏への対応として、欧州の費用負担を増やし、2021年から本部やスタッフに対する米国の経費負担を引き下げで合意する見通し。また、ロシアの攻撃に対する抑止として米国が求めているNATOの軍隊や艦船、航空機などの増強にも応じる構えだ。
高級ゴルフクラブで開かれる今回の首脳会議は、政治的対立を避けるために異例の短期開催となる。ただホスト国の英国は首脳会議で欧州連合(EU)離脱をアピールしたいと考えている。
NATOは共産主義のソ連の脅威に対抗するため1949年に創設されたが、2014年のロシアによるクリミア併合で新たな使命を帯びた。ドイツのメルケル首相は27日の議会で「今は欧州だけでは防衛が不可能だ」と述べており、欧州加盟国の多くにとってNATOの重要性は変わっていない。
一方、NATOは米政府からは軍事力を高める中国にどう対応するかの判断も求められている。」
アングル:機能不全に苦しむNATO、負担増で米国つなぎ止め - ロイター
ロシアのクリミア侵攻がなければ、ここまではなしがもつれることもなかったでしょう。脳死ではなく延命の中断という形で解消する可能性もあったかも知れません。しかし、ロシアこそは第二次大戦以来の国際秩序を平気で踏みつぶす存在であることが明らかになると、その役割が冷戦期並みに重要なものになってしまいました。今後はドイツを始めとする加盟国が軍事予算を増大させることはもちろんですが、中国=ロシアの連合国にどう対抗するかを検討する基盤となることでしょう。NATO諸国の中国への適切な関与がな刈れば、ヨーロッパの平和はあり得ないといえるでしょう。
加盟国間の問題としてはトルコの処遇があります。トルコをいつまでNATOにいれておくのか、今後の火種になる事でしょう。