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ファーウェイ陥落の衝撃

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 今回の騒動でファーウェイ社の製品は世界中で徹底的に排斥されることになるでしょう。まわりまわって反動産業界だけでなく、広い範囲にダメージを与えることになりそうです。

  ファーウェイ社が、実質的には人民解放軍の傘下にある企業であり、サイバー空間を通じた情報収集や破壊工作の可能性が指摘されています。というか、今回のカナダでの副社長の逮捕により、アメリカによるファーウェイ社潰しという方針が明確になり、その後づけの理由として、中国のスパイ活動に言及されているというのが現状といえます。
 その結果、西側諸国の多くがファーウェイ社製品の締め出しを打ち出しました。中でも、影響が大きいと考えらえるのが、ファーウェイの「無線機」排除の動きといえます。携帯基地局は、アンテナや電源などさまざまな部材から構成されていますが、中核装置は無線機が占めています。
 携帯会社向けに華為技術が「無線機」の供給をスタートさせたのは、イー・アクセスが最初でした。その後、イー・アクセスソフトバンクに買収されるとソフトバンクとの取引となり、現在は主に1.7GHz、700MHz、3.5GHz帯で華為技術の「無線機」が導入されています。
 一方、ソフトバンク向け「無線機」の供給ベンダーでは、エリクソンノキアが中心で、華為技術はいわば新参者の立場でした。華為技術ソフトバンクのなかで一定の存在感を発揮したのが、2017年度のことです。新規で割り当てられた3.5GHzや追加発注が多かった700MHz帯で確実に受注を重ねていった結果、同年のソフトバンクの新規基地局の6割弱を華為技術が獲得するまで成長したのです。

ファーウェイ排除の国内携帯基地局市場における影響 - ケータイ Watch

  しかし、今回の事件で、ファーウェイ社の無線機は撤去されることになるでしょう。無線基地局だけではありません。通信基地局での世界シェアは28%で世界首位ですが、スマホでは15%で世界第二位、ルーターではやはり15%で世界第三位、パソコンサーバーでは6%で世界第四位のシェアを占めています。そのためにファーウェイの半導体の調達だけで、1.5兆円に達し、日本からも5千億円規模の部品を購入しています。現実問題として、ファーウェイから安川電機への発注が凍結されているという報道もあります。それ以外にも、ブロードコムジャパンディスプレイ(JDI)、SKハイニックスなどの企業が取引先として報道されています。したがって、ファーウェイ社の製品が各国の不買に直面すれば、ファーウェイに部品を下ろしている企業にも相当のショックが及ぶことになります。

ファーウェイ包囲狭まる 10兆円経済圏、供給網に影 :日本経済新聞

 とはいえ、一番ショックが大きいのは、ファーウェイ本体でしょう。ファーウェイは、5Gの普及による世界覇権を狙っていました。

 ファーウェイの取締役副会長兼輪番会長の胡厚崑(ケン・フー)は11月20日、「ファーウェイ グローバルモバイルブロードバンドフォーラム 2018」のなかで、次のように述べています。
「5Gはあらゆる角度から見て、すでに準備が整っています。5Gの準備が完了し、手頃な価格での提供が可能になったことに加え、最も重要な市場ニーズも現実のものとなっています。もちろん、5G展開にはまだいくつかの障壁が存在することも事実です」
 胡は周波数の割り当てと基地局展開に関する課題にも言及しています。具体的には、移動体通信事業者は周波数リソースが不足しているのです。展開のスピードアップを図るため、胡は政府が連続した広帯域幅の5G周波数バンドをハーモナイズして解放するプロセスを加速し、トータルコストを4Gよりも削減することを胡は提言しました。胡は、来場している移動体通信事業者に向けて次のように指摘しました。 「一方で、Cバンドに加え、2.3 GHz帯や2.6 GHz帯を含めたすべての周波数帯が5Gで利用可能であり、最終的には利活用されるようになるでしょう」
 胡は続けて次のように述べています。
 「基地局に関していえば、ネットワーク展開には多額のコストがかかります。私たちは政府に基地局展開で利用可能な公共のリソースを増やすように求めています。屋上や街灯などの公共インフラの共同利用により、通信事業者がコストと時間を削減できるうえ、公共サービスにも新たな収益源をもたらします」

 輪番副社長である胡が認めるように、政府に公共のリソースを増加させることで、基地局展開を充実させることを想定していました。しかし、各国政府がファーウェイ社製品を排除するという決定を下したので、このファーウェイの目論見は完全に崩れたことになります。少なくとも中国のローカル企業としてしか今後は存続することができないでしょう。

 全体として、ファーウェイ社からの受注が細る半導体業界にとっては、短期的にはマイナス要因でしょう。しかし、5G化の動きは止められないので、その点では、中長期的には半導体関連は有望といえます。特に基地局製造の世界最大のメーカーが大きく市場を失うわけですから、どの企業がその穴を埋めるのかが興味深いところです。

 ただ、ファーウェイに深入りしたソフトバンクや米スプリントはどうするのでしょうか。これらの企業はそれなりに大きなダメージを受けそうです。ああ、そういえば、ソフトバンクは株式公開するんでしたね。本当にご愁傷さまです。