拉致被害者は帰国できるのか
日経新聞に興味深い記事が掲載されていましたので,まずそれを紹介します。
「北朝鮮筋によると、昨秋の朝鮮労働党の内部会議では、米中を中心に韓国、ロシア、日本、さらにはイランやシリアなどの友好国にそれぞれどのようにアプローチしていくかが話し合われた。対日政策に関する金正恩の指示は次のような内容だった。まず日本側との秘密接触で安倍政権の意中を探る。そのうえで、北朝鮮への制裁緩和を条件に拉致問題に関する日本の調査団の受け入れを提示する。さらに安倍の腹心を極秘に訪朝させ、金正恩と面談する――。日朝首脳会談で最終決着を図るシナリオだ。接触を図る安倍の腹心については、国家安全保障局長の谷内正太郎(元外務次官)の名がささやかれている。この手法は、米国務長官のポンペオが米中央情報局(CIA)長官時代に極秘に平壌入りし、金正恩との面会を経て米大統領、トランプとの米朝首脳会談を実現させた「米朝」の事例と重なる。
北朝鮮指導部には2つの教訓がある。1つ目は日朝関係における「米国」の存在だ。「朝日(日朝)関係は米国にことごとくつぶされてきた歴史だ」と北朝鮮当局者は語る。古くは金日成(キム・イルソン)主席時代の1990年9月、金丸信元副総理ら自民、社会両党の訪朝団と朝鮮労働党が交わした3党共同宣言だ。日朝の早期の国交正常化で合意したものの、結局、実らなかった背後に、米政府が当時、日本政界を牛耳っていた自民党の実力者に働きかけて金丸の政界内での影響力を落としたからだと北朝鮮では信じられている。02年の日朝首脳会談の際も、米国は複数のルートで北朝鮮による核開発継続の独自情報を日本に伝えて、早期の日朝国交正常化の動きに待ったをかけた。
安倍政権下でも対話が進んだ時期があった。14年5月、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との態度を改め、日本との間で拉致被害者らの再調査と北朝鮮向け制裁の一部解除で合意した。いわゆるストックホルム合意だ。当時、平壌の北朝鮮外務省は大いに沸き、日朝間の閣僚級会談の計画もあった。しかし、拉致再調査の結果発表が大幅にずれ込んだうえに、16年に入ると北朝鮮は核実験や弾道ミサイルの発射を再開した。日本が再び制裁強化に動くと、北朝鮮内には日本への失望感とともに「日本に独自外交は期待できない。米国の言いなりだ」(北朝鮮当局者)との確信が強まった。その点で、新たな米朝関係の構築をうたった12日の米朝首脳会談は、日朝交渉の前に立ちはだかってきた「米国」という厚い壁が取り除かれたことも意味する。」
次は日本、北朝鮮の秘密シナリオ (朝鮮半島ファイル)(写真=ロイター) :日本経済新聞
北朝鮮の本音としては、西側の資金の導入により、自国に眠る膨大な天然資源を開発することが今後の最大の課題となっています。普通の国家としてデビューするためには、過去の悪行を改め、核開発も放棄、そして拉致被害者を無条件で返還することが欠かせません。
例えば、横田めぐみさんの情報に関しても、既に平壌でMI6によって取られた写真では、朝鮮労働党施設前でベンツから降りる写真を中心に連写されたものが日本政府にもたらされています。めぐみさんが降り立った直後の写真に始まり、制服姿の職員に迎えられる様子、他の幹部らと合流し、連れだって施設内に入っていく様が連続して克明に捕らえられているというのです。
この写真からわかるのは、めぐみさんがかなりの要職にあるということです。ベンツによる送迎、ぱりっとしたスーツ、フェラガモの靴などからも、特別待遇は明らかです。(時任謙作『「対日工作」の内幕』宝島社、2016年)
この情報から既に13年たっていますが、存命であれば、返してもらわなければなりません。この日経の記事は、北朝鮮に肩入れしたものとなっていますが、今後の展開は依然として不明であるとしか言えません。
ただ、谷内正太郎氏が、日本の特使として派遣されることには懸念を覚えます。詳しくはまた機会があればまとめてみたいと思います。