中国版“マイノリティー・レポート”の完成
前回のエントリーで中国のAIを用いた技術開発についてお伝えしましたが,今回はそれの続編です。
ロイターからです。
「北京郊外の幹線道路に設けられた検問所では、地元警察官が新しいセキュリティツールを試している。それは、運転者の顔の特徴と車のナンバープレートを読み取り、即座に犯罪容疑者のデータベースと照合する「スマートグラス」だ。
人工知能(AI)を利用したこのメガネはLLビジョンが製造。車中の人物の顔とナンバープレートをスキャンし、中央で集約されたブラックリストと一致すれば、赤い警告表示が点灯して、メガネを着用した警察官に知らせる。
こうした動きは、中国が高度な監視国家を築きつつあり、異議申立てに対する弾圧を強めるのではないかという懸念が広がっている。
「(中国)指導部は以前、インターネットと通信テクノロジーの発展にかなりの恐怖感を抱いていた」と、香港大学のメディア研究プロジェクト「中国メディアプロジェクト」の共同ディレクターを務めるデビッド・バンダースキー氏は語る。
「だが今や彼らは、それらを社会や政治を統制するため、絶対に不可欠のツールだとみなすようになった」
LLビジョンのWu Fei最高経営責任者(CEO)は、中国当局は容疑者や脱法者を捕まえるという「崇高な目的」のためにこの装置を使っているため、プライバシーの問題を懸念するべきではないと語った。
ロイターはここ数日、北京で疑わしい人物や車両を特定するために警察がこのメガネを試験的に使用している様子を確認した。(略)
テクノロジー専門の国営日刊紙である科技日報は、未来的な監視用電子機器について、中国のマンガに出てくる言葉を使い、「今年、2つの会議におけるセキュリティには、オンライン化した新たな『黒科技(ブラック・テクノロジ―)』がいくつか導入された」と表現した。
科技日報によれば、今年の全人代と政治協商会議で用いられるカメラは、疑わしい顔認識データの取得や、分析、比較を約2秒で完了できるものに更新されたという。これを支えるのは、ブラックリストに載せられた個人に関する全国データベース「スカイネット」と呼ばれるシステムだ。
「SF映画『マイノリティ・リポート』の世界は、いまや基本的には日常生活の一部になりつつある」と科技日報は述べている。『マイノリティ・リポート』は、犯罪が起こってもいないうちに解決され、処罰されるような未来社会を描いた、トム・クルーズ主演の米国映画だ。(以下略)」
焦点:中国、「ブラックテクノロジー」で高度な監視国家構築へ | ロイター
生体認証がここまで徹底しているならば、人体にチップを埋める必要すらなさそうです。危険な人物は事前に登録され、行動の自由はほぼなくなることになります。
中国共産党にとって、自分達の身を守ることだけが最大の目的となっています。一般の国民がどうなろうとどうでもよいという発想がこうした技術ににじみ出ているといえるでしょう。おそらくはごく少数の人間しか幸せにしないシステムに,それ以外の中国人はいつまでつきあうのでしょうか。こうしたシステムは一見強そうに見えますが、人間の自発性を損なうという意味では社会の活力を大きく損なうことでしょう。
このような中国が国際社会で現在以上に勢力を拡大するとすれば、それは人類総体にとっての災厄であるとしかいえません。